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街巡り 楽しさシェア SNS×マラソン=シャルソン入門

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 街中を走り回り、楽しかった体験をフェイスブックで発信する。ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)とマラソンを組み合わせた「シャルソン」が全国で広まっている。参加者たちが地域の魅力を掘り起こし、共感の輪を広げる試みだ。(担当・福岡範行)

コースは自分次第

 9月末、鮮やかなピンクのTシャツ姿の50人が秋晴れの金沢市街地に繰り出した。Tシャツは、「かなざわシャルソン」のユニホーム。街ですれ違った参加者同士が、ひと目で仲間だと確認しあえる目印だ。

 シャルソンにコースはない。目的地になるように、ベルギービールが割安で飲める「給ベルギービールポイント」や、ランチが割引きされる「給ランチポイント」などが12カ所用意されたが、立ち寄るかは参加者の自由。体力に応じて、歩いても休んでも構わない。

 競うのは距離でもタイムでもなく、「楽しい体験」。街巡り後のパーティーで報告しあうのが目的だ。

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 石川県野々市市の金沢工業大2年北山莉名さん(20)は、シャルソン初参加。一緒に“出走”した先輩たちには、県内で初開催だった9月初旬の野々市シャルソンにも参加した経験者も。魅力を語る先輩たちに負けじと、北山さんも「出会った人としゃべりたい。地元の北海道の友達を案内できる場所を見つけたい」と意気込んだ。

金沢の魅力を満喫

 メロンパンアイスを頬張り、尾山神社の恋みくじで小吉を引き、迷い込んだ裏道でおしゃれなパン店を見つけた。ベルギービール店の前では、他の参加者と遭遇。親指を立てて乾杯のふりをする「エア乾杯」をして、交流した。犀川沿いのジャズバーにも初めて入り、大人っぽい雰囲気を味わった。

 出発から6時間後、発着点の石浦神社(金沢市本多町)に勇壮な太鼓の音が響き、街巡りを満喫した参加者たちを出迎えた。神社の宮司長谷吉憲さん(39)が主催者にも内緒で「おもてなしに」と手配した地元の加賀豊年太鼓保存会の演奏だ。

 満面の笑みでゴールした北山さんは「裏道に1本入ったら、ふらっと立ち寄りたい店があった」と満足げ。一緒に歩いた大学の先輩高橋歩さん(20)は「おそろいのTシャツがみんなを強くしてくれる。初対面でも仲良くできるし、知らない店にも入れる」と実感。「まったく知らない県外の街でもやってみたい」とやる気を見せていた。

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写真撮影 すぐ投稿

 参加者は行く先々でスマートフォンで写真を撮り、即座にフェイスブックに投稿した。北山さんが、メロンパンアイスを持つ先輩を撮った写真も、5分後にはインターネット上に登場。ワインを楽しんでいる写真を見て、別の参加者が同じ店に駆けつけるなど、リアルタイムで思い出を共有するSNSならではの動きも生まれた。

 投稿総数は170件。食事の写真のほか、白いマンジュシャゲや地元のキャラクター「ひゃくまんさん」との記念写真などの多彩なネタも。参加者以外の人たちも楽しそうな投稿を見かけ、「次は参加したい」と声を寄せた。

 主催者はマラソン好きの市民グループ「朝ランかなざわ」のメンバーら。地域おこしイベントを開いた経験もなく、手探りの運営だったが、参加者たちには軒並み好評だった。

 スタッフの1人の会社員富沢美枝子さん(32)=金沢市=は「SNSのトラブルに不安になる人も多いが、いろんな人とつながるには便利な手段。アパートの隣同士で顔も分からない世の中だから、つながりを大事にしたいなと思った」と振り返った。

誕生2年 全国に拡大

 シャルソンは2012年2月、東京都世田谷区で生まれた。パクチーに特化したレストランを営む佐谷恭(きょう)さん(39)が全国や海外からも来る客に店の周りの街も見てほしいと発案した。

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 初回は60人が参加し、「他の街でもやりたい」との声も上がって墨田区や横浜市での開催が決定。佐谷さんは、その年4月に「ご当地シャルソン協会」を立ち上げ、全国各地での開催を支援した。取り組みは、北海道から宮崎県まで広がり、開催数は50回を超えた。

 佐谷さんは「シャルソンには街の魅力を発掘する面白さがある」と語る。今年8月には、東日本大震災の被災地の都市間を5日がかりで走るウルトラシャルソンを初開催。海外での普及も目指している。

 シャルソンの経験者には、他の地域のシャルソンにも出てほしいと期待する。「人と人とのつながりを濃くしたい。シャルソン同士がつながって、姉妹都市のような交流が生まれればうれしい」と夢を語った。

SNSと地域活性化識者の見方

出会いがアイデアの芽

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 SNSを使った地域活性化を成功させるこつは何か−。国際大グローバル・コミュニケーション・センター(東京都港区)の主任研究員庄司昌彦さん(情報社会学)は「SNSでつくったつながりを生かし、小さくてもいいので次々と新しい取り組みを起こすべきだ」と指摘する。

 庄司さんによると、地域限定のSNSは10年ほど前から4〜5年間で全国に500個以上登場。3年半前の東日本大震災前後からはツイッターやフェイスブックが普及し、積極的に活用する自治体も増えた。

 しかし、自治体の情報発信は一方的なものがほとんどで、双方向の交流がしやすいというSNSの特徴は生かせていない。市民がイベントを生み出しやすくもなる効果もあるが、長続きするものは多くない。

 「アイデアは新しい出会いから生まれる。普段は接点のない地域の人や、遠方の人とのコミュニケーションを続けることが大切です」と庄司さんは強調する。そばにいない人とも交流を続けやすいのは、SNSの強み。「インターネットは対面で会う機会の間を埋めるもの。いろんな挑戦をする人が出てくるように、つながりをつくり、育ててほしい」と語った。

 

 

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