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ネット普及「1億総クリエーター時代」 モラル崩壊 ご用心

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 インターネットの普及で大量の情報をシャワーのように浴びている現代。便利な半面、ニュースの無断転載や、記事に見せ掛けた広告などモラルを問われるケースが目立ってきた。間違った情報を無自覚に広めている場合もある。情報の渦におぼれず、泳ぐにはどうすればいいのか。ポプレスのキャラクター、ばくが専門家に聞いた。

ネット上の行為は「二次元の世界で終わらない。リアルの法律が適用される」と注意を促す柴田未来弁護士=金沢市小将町で

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弁護士 柴田未来さん

著作権侵害しないためには

表現への敬意を

 ネットでよく問題になるのが著作権の扱い。金沢市の弁護士、柴田未来(みき)さんに注意点を教えてもらった。

他人のツイートを丸写しするパクツイは違法?

 自分の思想や感情を表現したものが「著作物」。パクりたいと思わせる創造性があるツイートならば、書いた人に著作権が発生していると考えられます。勝手に複製して自分の表現として発信してはいけない。

著作権侵害への対応は?

 権利者が侵害に対応しきれず、実質的には放置されている場合が多い。限られた文字数で人の心を引きつけることは簡単じゃない。頑張って魅力的な言葉をひねり出した人に敬意を払い、悲しませることはしない。デジタル情報はコピーが簡単な分、抵抗感が少ないのでしょうが、その行為の影響をよく考えてほしい。

 他人の名誉を毀損(きそん)する書き込みや、私的な写真などプライバシーに関わる情報をネット上に出すことは不法行為になる場合も。裁判所に差し止め請求をしたり、サイト管理者に削除を要請しますが、一度公開されると、全データを消すことは難しい。自分の情報を不注意に投稿して後悔しないように。ツイッターなどに「今、○○にいます」と書き込むことは世界中に居場所を発信しているわけで、米国・ハリウッドでは留守宅を狙った窃盗団が問題になった。怖いんですよ。

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情報は慎重に扱わねば。さまざまな媒体のニュースを選んで紹介する「キュレーションサービス」が流行しているけど、無断で海外メディアの記事を翻訳していたケースもあった。

 勝手に翻訳して公表しては駄目です。出典元の許可が必要。言語が得意な人が集まって一緒にやろうとか、同人誌感覚の場合でも、ネットでは世界に発信されてしまう。

 「1億総クリエーター」とも言われますが、表現活動の訓練を十分に受けていない人たちも同じ土俵で発信し、こうした問題が起きているのでは。

 コピー&ペースト(コピペ) 他人の文章やデータを丸写しし、流用する。「STAP細胞」の論文不正でも問題となった。

 パクリ・ツイート(パクツイ) ツイッターに誰かが投稿した面白いネタや感動的な話を丸写し、自分のツイートとして投稿する。哲学者や芸術家ら著名人の名言、小説や映画などの名ぜりふを投稿する行為も、著作権(生前と死後50年間は保護)がある場合は著作権侵害に。著作権法に基づく「引用」はOK。

情報も「食」と同じ。全体の情報量が増える中、低コスト・低品質のものも増えていると話す藤代裕之・法政大准教授=東京都千代田区富士見で

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法政大准教授 藤代裕之さん

不正行為 横行の背景は

情報の品質 吟味して

 どうしてコピペなどが横行するのか。ジャーナリストで法政大准教授の藤代裕之さんに背景を聞いた。

承認欲求ですか。

 食べ物やファッションと同じ。誰でも生産者になれるから、質の低いものも出てくる。価値を問わず「安けりゃいいじゃん」という消費者もいるし、面白いからってデマを媒介する人も。モラルハザード(倫理観の欠如)が起きる。だからコピペやデマはなくならない。だけど、そんな情報社会で生きるのでいいのか。自分の飲み水に毒を入れるような行為を無自覚にやっているんですよ。大量のコンテンツが生まれる時代、マスメディアも本当に情報の質が高かったか、プロと言えるのかどうかが問われている。

 一人一人の行為が、今の情報社会をつくっているからこそ、情報を共有・確認するときによく吟味して。デマに引っ掛かりやすい人は発信元の確認が不十分。例えばツイッターなら、発信した人の発言をいくつか読んでみる。大げさな見出しで釣っている「ネタ」かどうか分かるし、アクセス稼ぎなら信用度は低い。

ファストフードならぬファストコンテンツ…。

 かつて情報は自ら取りに行くものだった。新聞や雑誌を買ったり、テレビのニュース番組を見たり、グーグルなどで検索して調べるのもそう。最近は発信元がよく分からない情報が身の回りにあふれている。例えば、米を農家から直接買わず、小売店で買うと、どんな品種の米がどれだけ混ぜられているか分からない場合もある。「偽装食材」を食べて困るのは読者。

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企業も個人もメディアを持つと、どんな問題が起きますか? 「Yahoo!ニュース 個人」にヤフー社役員が投稿した記事も物議をかもしましたね=メモ参照。

 ヤフーの関わるサービスが中止に追い込まれた問題点を指摘するのは構わない。今回は利害関係を明記しなかったことが問題。ヤフー側が「会社の公式見解と異ならない」と説明したのも、まずい。立場を隠した世論操作、「ステルス・ロビー活動」といえる。

 最近はポータルサイトやキュレーションサービスを通じてニュースに接する機会が増えているけど、その記事がどのように選ばれているか、何らかの政治性やビジネスの影響がないか、確認するすべがないことが恐ろしい。検証可能にしておかないと、影響力が強まったときに大きな問題になる。

 ネットでは自分にとって心地よく、興味のある情報だけをどんどん摂取できる。接する情報が変われば、認識も、行動も全く異なってくる。これから社会が分断されてしまうのか、多様な言論を認めながら共通理解を見つけていけるのか。

 世論操作と物議 ヤフーの怪 有識者らが寄稿する「Yahoo!ニュース 個人」に、運営側のヤフー社役員が、ある宿泊サービスが行政側の対応で中止に追い込まれたとの批判記事「旅館業法の怪」を6月末に投稿した。賛同の声もあったが、ヤフーが関与する事業と判明し、利害関係を明記せずに自社媒体を使った世論操作などといった批判がネット上に広がった。

 ヤフーと不動産会社による宿泊サービスは長野県・軽井沢エリアで別荘を所有者が使わない期間に宿泊客に貸し出す計画。旅館業法に抵触するため、営業は認められなかった。

 ヤフーの広報担当者は「あくまで個人の見解を述べた記事だが、役員である以上、会社の公式見解と異ならない。誤解を与えて申し訳ない」と説明している。

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情報を得る側もしっかりしなきゃ。

 大学で授業をしていると「全部教えてほしい」「説明が足りない」という学生がいる。情報は与えられるものと思っている。知識の習得にはコストがかかる事実を見直したほうがいい。学生には読書を勧めている。質が高く、異なる時代や国に生きる人の著作に触れることが大切。良いインプットが良いアウトプットにつながる。

 ステルス・マーケティング(ステマ) 広告とは分からないような体裁を装い、実際は報酬をもらって商品やサービス、お店を消費者に勧める宣伝行為。隠れ広告ともいわれる。柴田弁護士によると、焼き鳥店が地鶏を使っていないのに「地鶏おいしかった!」などと書き込ませた場合は法律問題になる可能性がある。ライバル店をおとしめるため、食中毒になったとうその書き込みをすれば業務妨害罪に問われることも。ネット上の口コミは影響力が大きくなり、ルールや指針が求められる。その情報がどこまで正確か、どういった背景があるのか、消費者が判断する手掛かりを提供することが大事。

 担当・押川恵理子

 

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