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仏教ブーム 北陸にも 今、寺が熱い!

(左)「坊コレ」と称して女性陣の間を一人ずつ歩いていく僧侶。少し恥ずかしそう(右)自己紹介し会話に花を咲かせる僧侶と女性=いずれも高岡市中川の光慶寺で

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 歴史ある本堂で現代音楽に心酔したり、仏像とアート作品の“共演”を楽しんだり。近年、お寺や仏教に熱い視線が注がれている。独身僧侶との婚活イベントも盛況だ。寺との関わりは葬儀や法事ぐらいに限られ、「宗教離れ」も懸念される中、なぜ若者らを引きつけるようになったのか。その教えを求め、山門をくぐった。(担当・押川恵理子)

僧職男子 出会いの場 坊コン

僧侶と女性の出会いを応援するイベントを中心的に企画した長楽寺の篠島善敏住職

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 「南無阿弥陀仏…」。僧侶たちの読経に聞き入る女性たち。静かに、熱く。

 6月末に富山県高岡市の光慶寺であった独身僧侶と女性の縁結びを応援するイベント「坊コン」。浄土真宗本願寺派高岡教区関野組(そ)が大越仏壇(高岡市)の協力で企画し、県内在住の20〜40代の僧侶23人、女性29人が集まった。

 主催者の1人、長楽寺(同市)の篠島善敏住職(33)は約2年前から一般向けのお見合いパーティーを開いてきた。「僧侶は家に上がって家族の事情も知るため昔から縁結びを担ってきたんです」

 灯台下暗し。自身は既婚だが、周りの僧侶は独身が目立つ。普段接する相手は年配者が多い。後継者不足に危機感を持った。

 イベントは勤行で厳かに始まった。軽やかな音楽が鳴ると、僧侶は1人ずつ赤じゅうたんの上を歩く。パリコレならぬ「坊コレ」。少し照れた表情に親近感を覚える。1分半ごとに席を移り、参加者全員が会話を交わした後、男性陣は中座した。

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 仏教や寺の役割が説明された後、僧侶の妻3人が登場し、「デートは?」「早起き?」といった参加女性の疑問を解消。僧侶たちがカジュアルな私服姿で再登場するとゲームやフリータイムを通じて2人の距離を縮めていった。

 良縁に恵まれた南砺市の30代会社員は「僧侶と会って話すことはめったになく、良い機会」と話し、富山市の会社員(24)も「お坊さんの漫画を読んで興味を持った。女性の友だちもできた」と笑顔を見せた。

 8組のカップルが誕生。合掌し、閉幕した。イベントは続ける予定で、篠島住職は「仏教は己の存在を問い、日常であまり意識されなくなった生と死を見つめる。お寺でじっくり考えませんか」と呼びかける。

若手作家ら企画展 Art

(右)「共に歩むことが僧侶の役割。催しは出会うきっかけ」と話す巽亮光住職=金沢市昌永町で(左)2012年の「オテラート」で展示された作品=金沢市瓢箪町で

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 ポップな映像が寺院内を彩り、庭の緑に小人がひそむ−。曹洞宗広誓寺(金沢市)の巽亮光住職(40)は近隣の2寺院や作家らと「寺子屋の会」を結成。2010年から現代アートの企画展「oterart(オテラート)」を続ける。

 市内の若手作家や学生は会場の寺を見学して絵画や彫刻、映像作品などを創作する。毎年800〜1000人の集客があり、来年から東山や寺町、小立野の寺院群にも拡大予定。今年は9月6〜15日に開く。出品のテーマ「只今(ただいま)」は今の自分の心に帰ること。出発点を問い直す意味を込めた。

 双子の長男として寺に生まれた巽住職。高校卒業後、何のために生きているのか分からず、それを見つけようと家を出た。3年半、国内外を働きながら旅した。異文化に触れ、日本の美術や食に興味が向いた。

 今ある場所で懸命に生きる大切さにも気づき、帰国後、修行の道へ。1畳の空間で寝起きし、時に早朝4時から午後10時まで座禅に取り組んだ。

 6年後、実家に戻った。当初は葬儀中心の寺に違和感があり、理想との差に悩んだ。現代における寺の役割や仏教の教えを確かめようと、仏教の古典を読み解く勉強会も毎月開いている。「檀家(だんか)さん、イベントを通じてお寺に足を運んでくれた人たちと一緒に考え、悩み、時に背中を押す。共に歩むことが僧侶の役割」と信じる。

ライブ通じ「ご縁」 Music

 富山県黒部市の浄土真宗本願寺派、善巧寺は2006年秋から音楽イベント「お寺座LIVE」を開いている。読経や法話も交え、曽我部恵一、rei harakami、二階堂和美、七尾旅人らが本堂の舞台に立った。

 先代は落語会を24年続け、児童向け「雪ん子劇団」を創設。寺の文化活動を身近に感じて育った雪山俊隆住職(40)は、自分の時代に仲間と何を発信できるかと考え、浮かんだのが音楽だった。

 ボブ・マーリーらルーツレゲエを好んで聴き、高校、大学時代を過ごした京都では、クラブイベントで国も年代も異なるさまざまな音楽から刺激を受けた。

 実家の寺に戻り、歴史ある空間を感じながら音楽を味わってもらおうと、お寺座を始めた。来場した音楽好きの若者たちは、仏教や寺院建築にも予想以上に関心を持ってくれた。今はスタッフとしてイベントを支える人もいる。「ご縁は予想外の副産物」と喜ぶ。

「刹那的でなく、布教になれば」

識者・内藤理恵子さん

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 バンドを組んだり、イベントやカフェを開いたりする僧侶は増えてきたが、「寺の個性や地域性と合った活動が大切。刹那的な娯楽になってはいけない」。宗教や現代文化を研究する愛知大国際問題研究所客員研究員の内藤理恵子さんは仏教ブームを冷静にみる。

 ブームの端緒は、禅僧の修行生活を描いて1989年に映画化された漫画「ファンシィダンス」、イラストレーターのみうらじゅん、作家のいとうせいこう両氏による仏像のガイド本「見仏記」など。サブカルチャー好きの若者を引きつけ、興福寺(奈良県)の阿修羅(あしゅら)像など“イケメン仏像”をめでるサイトも出てきた。「仏女」が増えたのは2008年ごろ。恋愛資本主義に疲れ果て、自分探しや癒やしを求めた女性たちが、仏教にたどり着いたとみる。

 動画共有サイトのニコニコ動画では09年に説法する僧侶「蝉丸P」が登場。賛否あるが、ネットの世界と仏教をつないだ。「おにゅうP」と名乗るアーティストは10年に般若心経ポップをネット上で発表。CDが発売され、幅広いジャンルの音楽にもアレンジされた。「罰当たりとの声もあるが、時代によって読経は変わる。布教につながれば良いのでは」と内藤さん。

 幅広い層が仏教に関心を深めたのは東日本大震災の影響が大きいと話す。苦を分かち合い、出発する際の心のよりどころとなった。

 仏教の教えを本格的に求める機運が高まり、「ただ奇抜なお坊さんは逆効果」とバッサリ。「親鸞の時代に僧侶たちは問答で日本に合う仏教を切磋琢磨(せっさたくま)してきた。異なる宗派の僧侶、宗教者がニコ生で徹底討論してはどうか」と提案する。

  

 

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