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長〜く休んで いい仕事 バカンスのススメ

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 夏真っ盛り。5週間もの休暇を法律で定める国がある一方、日本は2週間程度の長期休暇を取った労働者は2%にとどまる。そんな中、1年に2カ月のバカンスを目標に掲げるIT企業がある。現在は夏と冬に2週間程度の休暇を導入し、年1回の社員旅行を続ける。「休みの日数=経営者の成績」と若き社長は言い切る。休み方が働き方を変えるのでは。バカンス制度を考えた。

2カ月休暇へ効率化

IT企業エウレカ「人が命」

 「しっかり休まないと、良いアウトプットはできない。休める会社が優秀だと思う」。ウェブサービスを手掛ける株式会社エウレカ(東京都渋谷区)の社長、赤坂優さん(30)は話す。

 JR恵比寿駅に近いオフィス。柔らかなオレンジ色の照明の下に木目のデスクが並び、平均年齢26歳のスタッフ53人が働く。足元をコーギー犬が行き交う。フェイスブックを利用して恋愛や結婚相手を探すサービス「pairs」、写真など2人の日々を共有できるカップル向けのアプリ「Couples」を開発し、提供。pairsの利用者は日本と台湾で計100万人を突破し、韓国進出も視野に入れる。

1年に2カ月のバカンスを取る会社を目指すエウレカ社長の赤坂優さん

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 2009年7月に数人で営業を始め、赤坂さんは休み返上で働いた。このままでは体が保てなくなる。発想も鈍り、状況をマクロの視点から判断できなくなると感じた。当初は受託開発が中心で、取引先のスケジュールに合わせるため休みづらかったが、12年から自社サービスが主軸となり、休暇を増やした。

 通常の勤務は平日午前10時〜午後7時。大半の社員は独身で平日は遅くまで働く人も多い。土日祝日とは別に昨年の有給休暇は夏に7日間、冬に10日間ほど取り、今年は夏季10日間、冬季14日間を予定する。1週間程度の社員旅行も決算期の毎年10月に催し、台湾やグアムなどを訪れてきた。目標に掲げる2カ月のバカンスにはまだ届かないが、社員旅行も含め計1カ月近い休暇を実現。

 「休暇は経営者の力量と比例するのでは。営業依存型では厳しい。『量』に頼らず、良質な商品を生み出すビジネスモデルの設計に尽きる」と赤坂さん。社員は年間の休暇予定を聞くと、喜ぶより先に仕事の計画を立て始めるという。こうした社員側のモチベーション、効率を意識して働く姿勢も重要だ。

赤坂さんら役員も一緒に机を並べて働くオフィス=いずれも東京都渋谷区で

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 管理部の有馬従(より)さん(37)は昨年、職場の繁忙期を避けて海外旅行に5回出掛けた。「長く休んだ分、仕事を頑張ろうと自然に思える」と笑顔を見せる。エンジニアの金子慎太郎さん(26)は休暇を使って今年6月2〜6日に米アップルがサンフランシスコで開いた開発者やデザイナー向けの会議に参加。「最先端の話を聞け、開発面で新たな視点を得られた」と手応えを話す。

 スピードが求められ、競争の激しい業界。休暇に不安も感じるが「休み明けにスタッフのモチベーションが上がるなら、すごく価値がある。人が命です」と赤坂さんは話す。

働くより楽しむ 当然

有給5週間のフランス

 「バカンス大国」といわれるフランスの事情はどうか。1936年に始まった制度は労働者が勝ち取った権利。年次有給休暇は5週間と定められている。

 バカンスの話題は、あいさつ代わり。「フランス人は人生を楽しむことが第一、仕事はその次」と、フランス文化評論家の永瀧達治さん(65)は話す。

 パリ第3大学で映画を専攻し、帰国後も仕事でパリと東京を往復。6年前から金沢市に生活の拠点を置く。自由業で慌ただしい日々を送ってきたが、ここ2年の夏はパリ出身の妻、フランソワーズ・モレシャンさんとフランスの田舎でゆっくり過ごしている。ボルドーの友人宅やノルマンディーの港町、レ島に滞在。日中から食前酒のパスティスでのどを潤し、たわいない話に興じる。「バカンスの語源は英語のVACANTに通じる。何もしない。空白の時間ですよ」

 友人宅を訪ねるなどお金をかけず過ごす人が多く、車で家族を連れて出掛けるオートキャンプ場も人気とか。最近は休暇を取れない労働者も増えており、そうした家庭の子どもたちを海水浴に連れ出すボランティア活動もあるという。

        ◇ ◇ ◇   

 加賀友禅にひかれ、金沢市に今年移住したモードデザイナーのyomoko.un(ヨモコ・アン)さん(35)=新潟県出身=は2009年に渡仏し、ルイ・ヴィトンやセリーヌといった高級ブランドの服作りに携わっていた。

 勤務先はフランス人の経営。普段から大半の社員は定時に退社し、職場の付き合いで飲みに行くこともない。繁忙期は残業もしたが、代休が必ず与えられ、同僚と調整した上で休暇を取った。フランスでも日本人経営の場合「定時に帰りづらい空気がただよう。残業や時間外の手当も曖昧な会社もある」と説明する。

 バカンスは8月の1カ月間、クリスマス前後の7〜10日間が一般的。子どもがいるスタッフは学校の休みに合わせ、一緒に過ごす時間を思いっきり楽しむ。休み明けは、日焼けした同僚たちが夏の自慢話を負けじと繰り広げる。それぞれ自分のスタイルを貫き「日本では考えられない問題も起こるが、周りの人や環境に流されず、自分らしく生きている」と好感を持つ。

 バカンスの文化と出合い「家族や恋人の存在の重みを考えさせられた。大切な人との充実した時間が仕事の意欲にもつながる」と感じている。

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平均8日、連続2週間は2%

休みづらい日本

 独立行政法人労働政策研究・研修機構の調査によると、連続2週間程度の長期休暇を取得した人は2.2%にとどまった。取得しなかった人の63.2%が休暇を希望していた。

 取得に必要な条件を複数回答で尋ねると、「職場の雰囲気改善」が61.5%と最も多く、「休暇中のサポート体制」53.1%、「経営トップの積極的な姿勢」45.6%が続いた。

 年次有給休暇の取得日数は平均8.1日。10日以上が40.6%を占める一方、3日以下も32.5%と二極化。日数は年収の高さに比例し、週当たりの労働時間が長いほど短くなる傾向があった。

 職種別では、研究者や技術者、医師らの専門職9.6日が最長。総務・企画・経理8.9日、製造生産関連8.3日と続いた。最短は営業販売等5.9日で、管理職は6.7日だった。

 調査は2010年秋に正社員3000人を対象に実施。2071人から有効回答を得た。

 日々の労働時間はどうか。労働政策研究・研修機構によると、1人当たりの平均年間総実労働時間は、1990年の2031時間から2011年の1728時間と減少傾向にある。調査方法が各国で異なるため単純比較はできないが、フランスの1476時間に及ばない。

 週の法定労働時間はフランス35時間。日本は40時間で、労働基準法第36条(三六協定)に基づき、労使協定によって法定時間を上回る時間外労働や休日労働が認められている。

  担当・押川恵理子

 

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