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夜の世界を出るとき 性風俗業 当事者たちの悩み

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 性風俗業で働く女性は30万人に上るともいわれる。夜の世界に飛び込んだ事情は人それぞれだが、働きだすと共通の悩みが出てくる。「いずれ稼げなくなる」。「仕事を知られることが辞めてからも怖い」。そんな当事者の相談に乗り、再出発を後押しする団体がある。夜の“出口”を考えた。

「バレる不安」尽きず

 埼玉県越谷市に事務所を置く一般社団法人「Grow As People」(GAP)は、女性が自分の意思で性風俗の仕事を選んだ場合、辞めさせようとも肯定もせず、自立を支援している。

 「夜の世界の課題って何だと思います?」。代表理事の角間惇一郎さん(31)は問い掛ける。「フーゾクという言葉にアレルギーがあり、何が問題なのか把握せず、関わるだけで『やばそう』と決めつけている。一般社会の関心がないことです」

 警察庁の2013年統計によると、性風俗店の届け出数はソープランドなど店舗型が2031件、女性が客の元に派遣されるデリバリーヘルスなどの無店舗型が1万8814件。日本はデリヘルが圧倒的に多い。

 建築を学び、まちづくりに取り組んでいた角間さんは4年前、主催した講演会を訪れた性風俗店のオーナーから、女性たちが立場を明かせないため公的機関に相談できず、さまざまな悩みを抱え込んでいることを伝えられた。直後、大阪市で風俗店に勤める母親が幼児2人を自宅に放置し、餓死させる事件が発生。オーナーから聞いた話と、メディアや世論とのズレを感じた。支援のニーズを探ろうと、3000人以上の女性や100人弱の男性スタッフに話を聞いた。居場所のない若者やシングルマザー、DVの被害者、貧困…。夜の世界に来た背景はさまざまだが、何らかのしんどさを抱え、働きだすと共通の悩みを持つことが分かった。

 その一つが、稼げなくなることへの恐れ。性風俗店と女性は雇用関係がなく、自分の都合で勤務時間を決められる半面、収入は歩合制のため安定した給料はない。客がつかず終わる日もある。

 集客方法はインターネット上の広告が主流。女性の顔を見せる方が客はつきやすいが、写真から身元が割れることは怖い。ただ客を取るには露出度を高めざるを得ない。ネットに掲載された画像は消されにくく、次の仕事を探す際も障壁になりかねない。GAPは画像消去の仕組みづくりに乗り出す方針だ。

次の道自立を支援

 角間さんは夜の世界に「40歳の壁」を指摘する。客がつきづらくなる年齢という。“引退”は昼の世界より早期に訪れるが、「夜の仕事を1回やると、次に行きづらい。履歴書に働いていたことは書けず、空白になる」と説明する。

 引退後の生活設計につながればと、GAPでは女性たちに空間デザインやイベント企画の仕事に携わってもらっている。性風俗業は比較的短時間で生活費を稼げ、自由に使える時間が多いものの、「資格取得を目指す学校やNPOに通うことは『だるい』と感じ、ホストクラブやパチンコ店通い、スマホのゲームなどに空いた時間を浪費してしまう人が多い。ゲームをやるか、うちに来て働くか、そこが勝負と感じている」と角間さん。

 そうした課題は当事者だけで解決するには限界があるため、一般市民に実情を知ってもらおうと、性風俗で働いた経験のある女性から話を直接聞ける「女子会」も6月初旬に初めて開いた。今後も続ける方針だ。

長く稼げるのは一握り

「月収300万円」の女性も

 性風俗業は競争が激しくなり、以前より稼げなくなっているといわれる中、「40歳の壁」を越えても現役を続ける女性もいる。

 石川県内のソープランドで働く、かおりさん(41)=仮名=は「仕事に誇りを持っている。体力の続く限り究めていきたい」と言い切る。

 くり色に染めた長い髪、大きな瞳に長いまつげ。落ち着いた話しぶりだが、年齢より若く見える。

 月に25日間働き、歩合制で300万円ほど稼ぐという。ソープの月収は平均50万円といわれる中、破格だ。かおりさんは午前9時から午後5時まで働く。1人暮らしの自宅に帰るとお風呂にゆっくり入り、夕食を自炊。午後10時には就寝する。ホストクラブもギャンブルも興味ない。「夢を与える仕事」と考え、美容のため規則正しい生活を送る。

 夜の世界に飛び込んだのは20代後半。会社勤めをしていたが、「お金の大切さを知り、女として稼ぐには最適のビジネスと思った」。金銭のトラブルなどやむにやまれぬ事情は全くなく、あくまで自分の意思で選び、抵抗はなかったという。ただ仕事のことは今も家族や友人に打ち明けていない。「尊敬し、信頼できる人にしか話さない。女性は信用していません」

 60分、80分と接客するうち、相手の人柄や癖などが出てくる分、サービスする側も人間性が問われると感じている。「体がしんどい時もあるけど、笑顔は絶やさない。手抜きは伝わるから」。客は20〜70代で、8割がリピーターという。

 性風俗の仕事を始めてから恋人はいない。「寂しくないの」と客からもよく聞かれるが、「1人の方が気楽。お金があれば、病気になっても助かる可能性も高いし、介護施設にも入れる」と話す。時に1カ月ほど休暇を取り、温泉巡りや高級ホテルに連泊することが息抜きという。引退の時期は、まだ考えていない。

 出勤しても客が1人もつかない人もいる。稼げないことを営業側のせいにして性風俗店を転々としたり、過激なサービスに出たりする人もいるが、「それで客が増えるかというと、そうじゃない」と北陸の風俗事情に詳しい男性は説明する。「お客さんがついてナンボの世界。プロ意識が高く、稼ぎ続けられるのは一握り」

 性風俗業 デリバリーヘルスは男性が自宅やホテルに女性を呼び出し、性的サービスを受ける。浴室で性的行為を提供するソープランドは都道府県が定める条例によって、営業が禁止されている地域もある。客をあっせんしたり、未成年者を働かせたりするなど売春防止法に違反する行為を提供すると、摘発される。

 担当・押川恵理子

 

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