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知っていますか?トゥレット症候群 「変な子」決めつけないで

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 「自閉症」や「アスペルガー症候群」、「学習障害」。発達障害と呼ばれる一連の障害は少しずつ知られるようになってきた。では、「トゥレット症候群」は? 本人の意思と無関係に体が動き、声が出てしまう障害で、多くは子どものころに発症。知られていないために「変な子」とされて孤立しがちだ。不登校や引きこもりを経験した石川県内の男性に話を聞いた。(担当・日下部弘太)

からかわれ不登校に

 症状が出たのは小学4年のとき。宮本拓郎さん(28)=仮名=は、「ハッ」という声とともに両肩をいからせる動きが止まらなくなった。しゃっくりに似ているが違う。病院で「チック症」と診断された。

 まばたき、首振り、跳びはねるなど突然、自分の意図しない動作を繰り返す「運動チック」と、同じく意図せずに奇声を上げる、下品な言葉を発するといった「音声チック」が長期にわたり続く「トゥレット症候群」。発達障害のひとつで、100人に1人ほどが発症。うち10人に1人は支援や治療が必要だという。

 さまざまな発作の中で、宮本さんが「一番苦しかった」と振り返るのは、「してはいけない、言ってはいけない」と思うほど、逆にそれをしたり、言ったりしてしまう症状。トゥレットの人の半数にあるとされる強迫症状の一つだった。家族や友達に「ばか」「死ね」と暴言をはき、やっと手に入れた大事なCDを壊した。自転車で猛スピードを出して転んだこともあった。

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 学校でからかわれ、好きな子にも笑われて不登校に。小5から地域のフリースクールに通った。発作が重くなった小6から中2にかけては入院治療も受けた。

 年齢を重ねると症状が複雑化。電車に飛び込みたい衝動を覚えたり、自分をひどく殴ったり。シャワーを1日6回浴び、鍵を掛けたか何度も確認せずにいられなかった。

 中2でフリースクールに復帰。中学校には戻らなかった。「行っても、『おかしいやつ』になってしまっていて、弁明の機会がない」。定時制高校に進んだが発作が悪化し、1年の夏休み後に中退。薬による眠気で集中できなかった上、授業が分からないのも負担に感じた。

 人に会うのが嫌になり、20歳までほぼ引きこもり状態だった。「スーパーやコンビニに行くのも怖かった」。昼夜逆転の生活。友人や後輩が就職、結婚していくのを見て、焦りと疎外感が募った。

就労移行支援施設で訓練をする宮本拓郎さん=金沢市広岡で

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症状改善就労目指す

 そんな中、17歳から通っていた県こころの健康センターの引きこもりグループに、本格的に参加しだした。「人と話す楽しさを知った」。友人が車で連れ出してくれ、釣りやバーベキューへも。髪を切り、風呂に入り、靴を買った。

 行動範囲をさらに広げたくなり、23歳のころ、国の「社会適応訓練」の制度を利用して自宅近くのインド料理店で働き始めた。最初は「チックが出て皿を落としたら」と足が動かなくなることもあったが、少しずつ慣れた。2年目、「次のステップに」と飲食業を手掛ける福祉施設に移り、2年働いた。今年5月からは一般就労を目指し、訓練中だ。

 多くの当事者と同じように、宮本さんも成人に近づくにつれ、発作は少なくなった。症状が改善したのに加え、今では「無意識に発作の衝動を我慢できるようになった」。一般の人と変わらない生活が送れている。だからこそ、子ども時代に悔しさが残る。

「障害授業で教えて」

 小学校の担任が「放課後だけでも来たら」と言ってくれたことには感謝しているが、「授業の一環として、障害を教えてほしかった。帰りの会でちょっと触れるとかではなく」。

 フリースクールは居心地が良く、症状も落ち着いた。ただ、授業がないため学力が付かず、高校でのつまずきにつながった。

 社会適応訓練や就労支援も、「もう少し早く知っていれば。聞かないと誰も教えてくれない。調べれば分かるのかもしれないが、調べ方が分からない」。

 無理解の壁は、大人になっても残っている。かつての同級生にフェイスブックで連絡すると、「やめとくわ」と付き合いを断られることも。相手には、子ども時代のイメージのままなのだろう。弁明の機会が、今もないのがつらい。

周囲は普通に接して

支援のNPO会長

 トゥレット症候群の当事者や支援者でつくるNPO法人「日本トゥレット協会」の有沢直人会長(54)は、「症状が重いのは圧倒的に学齢期が多い。特に学校関係者の理解を広めたい」と話す。

 有沢さんによると、特に音声チックを知っている人が少なく、「変な子」と見られがち。学校でいじめを受けて不登校などになると、その後の社会生活にも影響するだけでなく、心理的ダメージが障害の改善を妨げることも。「先生がどれだけ理解してくれ、自己肯定感を高めてくれるかが重要だ」と指摘する。

 トゥレットと思われる人への周りの対応では、「普通にすればいい。変な目で見ないで」と呼び掛ける。腫れ物に触るような対応は、逆に本人の自尊心を傷つける場合がある。「本人が何を求めているのか聞いて、必要な支援をして」

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