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「キレイ」求め 思わぬ傷

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 「プチ整形」「アンチエイジング」と称し、手軽なイメージで普及してきた美容医療。ぱっちり二重の瞳、小顔になったと満足感を語る人もいる一方、ずさんな施術によるトラブルも増えている。理想の美を求め、健康な身体を加工する行為がもたらすものは−。(担当・押川恵理子)

身近になった美容医療

 美容医療は保険外の自由診療。国の規制や監督体制が不十分との指摘もある。

 昨年夏、関東地方の20代女性は目を二重にしたくてクリニックへ。その日は相談だけのつもりだったが、個室で2時間近く勧誘され、全く予定外だった「小顔」の施術も受けることに。

 顔の皮下組織に特殊な糸を通して皮膚を引き上げる。施術後、鏡に映った顔は「真ん丸のキツネ」。戻してくださいと泣きながら言った。顔面は腫れてマスクで隠しても分かるほど。顔と頭部の痛みは2カ月以上続き、炎症になった。1年ほどたった今も、寝起きや入浴、お酒を飲んだ時は傷口がツンと痛む。糸を通された部分はデコボコしたままだ。

 クリニックの女性スタッフは「二重の目は小顔にした方が際立つ。きれいになりたいなら、プロの意見を聞いて」と繰り返し、10分ほど診察した医師は「針を少し刺すだけで効果が5年間続く素晴らしい手術」と説明しただけという。即日受けるなら、計350万円の費用を特別に80万円まで下げるとも言われ、「判断能力や金銭感覚がマヒしてしまった」。

 長引く炎症や痛み。不信感が募り、インターネットで情報を調べたら、同様の被害を訴える声が多かった。小顔になると説明されたが、その施術は「しわ取り」の内容とも知った。一時は泣き寝入りしようと思ったが、「だまされないよういろんな人たちに伝えたい。すごい悔しい」。集団提訴に加わった。

「悪徳商法にも匹敵」集団提訴

 顔のしわ、たるみを取り除くフェースリフトによって痛みや脱毛などが起きたとして、20〜50代の女性13人は今年4月、品川美容外科(東京)などを運営する医療法人社団翔友会に損害賠償を求めて提訴した。

 弁護団によると、女性たちはヒアルロン酸注射など低価格の施術を希望してクリニックを訪れ、フェースリフトを勧められた。長時間に及ぶ勧誘で「効果は3〜5年ほど続き、リスクはほとんどない」と強調。200万〜300万円の費用を提示後、即日施術なら大幅に割り引くとして契約につなげた。施術による痛み、脱毛などの説明は事前になかったという。翔友会側は「消費者契約法に違反する行為はなく、合併症などについても事前説明し、患者にも納得してもらった」とコメントしている。

 弁護団の花垣存彦事務局長は「医療機関に対する信頼を利用し、消費者に誤認をさせている。悪徳商法にも匹敵する問題を含む」と主張する。

「自己満足のため」半数

社会で「私」が強まった結果 谷本・関西大教授

 美容医療や整形を希望するのは、劣等感の克服? 他者に好かれるため?

 2003〜05、11、13年に男女計4225人を調査した関西大の谷本奈穂教授(文化社会学)によると、半数が「自己満足のため」と答えた。

 「若者は美しくおしゃれな女性を価値が高いとみなしている。親からもらった体という意識が薄れ、自分の体なら好きにしていいという考えが広まってきた。社会で『公』が衰退して『私』が強まった結果」とみる。

 実際に整形手術を受けた20〜50代の20人に会ったが、一見して容姿に劣等感がありそうな人はいなかったという。もともと顔立ちが美しく、雑誌の読者モデルとして活躍する20代女性もいた。新たな容姿を得て「メークが楽しくなった」「気持ちよく過ごせる」。そんな感想がほとんど。中には「もっと他の部分も直したい」と、美を追い求め続ける人も。

 20〜60代の男女2060人を対象とした2013年の調査では、美容医療を受けたいと答えた人は20%。女性は30%に上り、「高卒以下」「専門学校・短大卒」「大卒以上」と学歴別にみると、希望者は中間層が最も多かった。おしゃれ、美容に関心が高く、アイデンティティーと外見の関連性が強いと推測する。

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即日手術は危険

日本美容医療協会事務局長に聞く

 トラブルを避けるにはどうすればいいか。公益社団法人「日本美容医療協会」事務局長の原口和久医師に聞いた。

     ◇            ◇     

 派手な勧誘や広告で患者を集め、すぐに手術を勧めたり、実際の治療費が広告と異なったりするクリニックは避けた方がいい。

 少なくとも日本形成外科学会認定専門医、日本美容外科学会認定専門医の資格を持つ医師を選ぶ。協会では両方の資格があり、設備面などの条件も満たした場合に「適正認定医」の資格を与えている。

 患者の希望をよく聞いた上で複数の治療法を提示し、そのメリット、デメリットを説明してくれる医師を選ぶことが大切。

 最近トラブルが多い施術は、顔のたるみを解消するため特殊な糸を使用して皮膚を引き上げようとするフェースリフト。笑ったときに顔面がつったり、糸が露出したりするほか、感染症や肉芽腫(しこり)の原因となることも。

 顔のしわを浅くするとして広まってきたヒアルロン酸の注入。最近は安全性が高く、効果が比較的長く続く種類も出てきた。ただ安全性が高いものほど吸収されるため繰り返す必要がある。効果が長く続くという触れ込みでもヒアルロン酸以外の物質が混ざっていると、顔面に凸凹やしこりができる原因となり、完全に除去することは手術でも難しい。

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