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別れを選ぶとき

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 出会いの数だけ、別れは訪れる。最期まで添い遂げる人生もあれば、愛した人が苦しみの対象になることも。配偶者や恋人からの暴力(DV)やストーカー被害も増えている。始めるよりも、終わらせる方が難しいもの。次の一歩に向けた「別れ」を、離婚経験者や専門家の声から考えた。(担当・押川恵理子)

DV 「暴力」とまず自覚を

 別れをめぐり、泥沼化した場合はどうすればいいのか。暴力がエスカレートしても、「相手を怒らせる自分も悪い」と思い込んで抜け出せない人は多い。

 「山中に連れて行かれてベルトで首を絞められたり、シャワー中に小水をかけられたり。屈辱的な被害ほど、認めると自尊心が傷つくから、人に言いづらい」。北陸地方で200件以上の離婚事案を担当してきた女性弁護士は話す。声を上げることが解決への一歩だが、それは容易でない。

 DV被害者は9割以上が女性。20〜40代の相談が多いが、70代夫婦の離婚もあった。被害が10年以上に及ぶケースも少なくない。心理的な背景には「子どものために自分さえ我慢すれば」といった良妻賢母の考え方や、DVのサイクル(周期)に陥ることが挙げられる。

 怒りのまま暴力を振るう「爆発期」、謝って優しくする「ハネムーン期」、いら立ってくる「緊張期」を繰り返すうち、「優しい彼が本当。怒らせてしまう自分が悪い」といった心理状況に。

 「複雑性PTSD(心的外傷後ストレス障害)」とみる。「戦争や地震などの体験でなくとも、家庭で暴力が繰り返されるうち、自尊感情がすり減って自分が悪いと思い込まされる」。数多くの脱出を法的に助けてきた経験から分析する。

 身体的な拘束や日常的な暴力はないが、言葉で自尊心を傷つける「モラルハラスメント」(精神的な嫌がらせ)も最近は目立つ。「自分と相手との関係を客観視し、暴力と自覚することが何よりも大事。おかしいと思ったら信頼できる人に話して」と呼び掛ける。

増える被害、13年は4万9500件

 2013年に全国の警察が認知したDVの件数は前年比12.7%増の4万9533件で、10年連続で過去最多を更新。最多の4300件が摘発された。

 改正DV防止法では同居する恋人間の暴力も適用の対象に。被害は自治体の配偶者暴力相談支援センターや弁護士に相談を。状況に応じ、加害者から身を守る保護命令ほか、内縁解消も含めた離婚調停、慰謝料請求の手続きを進める。

 経済的な事情があれば、各地の法テラス(日本司法支援センター)で弁護士の無料相談や費用の立て替えが受けられる。生活保護受給者は費用の返済不要。

 ストーカー被害は初めて2万件を超え、前年比5.9%増の2万1089件。つきまといや交際の要求、嫌がらせなどを規制する法律の施行後、最多となった。被害者の90.3%は女性で、相手は配偶者や恋人が6割を占めた。

離婚 距離ない関係大切

2度経験の男性

 「離れて暮らすうち、相手の考えていることが分からなくなった」

 愛知県の会社員男性(42)は20代半ばの別れを振り返る。大学3年で付き合った女性とは就職のため遠距離恋愛に。彼女も仕事をしていたため、離れたまま結婚した。

 月1回は会うよう心掛けたが、日程が合わなくてすれ違い。たまに会うと、変に気を使って言いたいことが互いに言えない。「距離」を感じ、1年を待てずに別れた。大学の時はいつも一緒にいた相手。離婚後は落ち込んで眠れず、食欲もない日が続き、心療内科に通った。

 2、3年後、飲み会で会った3歳年下の女性と交際し、半年後に結婚を決めた。女性は一人暮らしの経験がなく、彼女の実家で「マスオさん」生活が始まった。

 当時は夜勤のある職場で、仕事を持つ妻と生活の時間帯が合わなかった。約3年後、アパートを借り、初めて2人での生活をスタート。仕事も日勤に変わったが、妻は時間があると実家へ。結婚前から親離れしていないと感じていたが、「まるで単身赴任」。家族となった意義が見いだせず、話し合った末、6年間の結婚生活に終止符を打った。

 2度の離婚から、一緒にいる時間の大切さを痛感。30代半ばで再々婚した相手は「一緒にいて楽しい人」。趣味のスポーツ観戦や音楽鑑賞に出掛けては、感想をさかなに酒を楽しむ。穏やかな日々のありがたさを感じている。

和光大の高坂康雅准教授=東京都町田市で

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依存 「相手がすべて」危険

高坂康雅・和光大准教授

 共有する時間の質が、パートナーとの絆を左右する。一方で「2人だけの世界に閉じこもるのも危険」と、和光大の高坂康雅准教授(青年心理学)は主張する。

 自己を確立できていない状態だと、「相手がすべて」と依存し、トラブルになりやりやすい。人間を動かす「エネルギー」の観点から恋愛を研究している。青年期の恋愛はエネルギーの奪い合いという。自己を確立していく過程で困難に直面した際に乗り越える力を恋人から手っ取り早く得ようとしているからだ。

 落ち込んでいる時に支えてもらい、壁を乗り越えられたら、その経験で得たものを相手に返す。そんなふうにエネルギーを与え合っていけば、良い恋愛関係が築ける。吸い取られるばかりだと疲弊し、一方は別れたいのに他方が執着して、こじれる原因に。

 恋人が唯一のエネルギー源になってしまうと、逃したくないから束縛したり、暴力的な行動に出たりするとみる。趣味や勉強、仕事に打ち込んだり、友だちとの時間を大切にしたりと、エネルギー源をいくつか持つと、執着心やトラブルは起きにくい。失恋の調査でも、悩みを聞いてくれる友人が多いほど立ち直りが早かったという。

 「恋人が友だちと遊んでくると言ったら、快く背中を押して。相手の対外的な活動を制限すると、後で別れる時に苦労する」と助言する。

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