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LGBTと仲間と生きる(下) 自分色の老後 自らつくる

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金沢出身・松中さん ホームづくり模索

 結婚することも、家族と暮らす未来も描きづらい。ゲイやレズビアンら少数派が抱える老後の不安を解消しようと活動するのが、前編(4日付)で特集したシェアハウスに関わるNPO法人good aging yells(グッド・エイジング・エールズ)。楽しく年を重ねられる社会をめざす代表の松中権(ごん)さん(37)=金沢市出身=に思いを聞いた。(担当・押川恵理子)

閉じた日本 希望持てず

 ゲイの老人ホームを描いた映画を見て「独り者同士、将来は一緒に過ごそう」。仲間と飲みながら話していた数年前を振り返る。今はゲイと公表し、普段は大手広告代理店で働きながら、LGBT(性的少数者)にも優しい老人ホームづくりに向け活動する。

 自分のセクシュアリティに悩んでいた大学4年の時は、当事者同士のつながりも希薄だった。初めて訪れた新宿2丁目でゲイの先輩たちから「ニックネームで通して」「仕事の話はしない」と“ルール”を教えられた。匿名で話し、互いの連絡先も知らない。いつしか仲間は街中から姿を消す。刹那的な関係性。結婚も家族を持つことも自分にはない。当時は年を重ねることに希望が持てなかった。

 その直後に留学したオーストラリアはセクシュアリティを明かして社会生活を営める環境があった。帰国後、そんな暮らしを日本でも望んだ。就職活動中、「ゲイとして生きていきたい」と、広告業界で働く知り合いに相談すると、「古い会社なので」と言葉を濁された。志望動機を変えて入社。オープンにして働くことは難しかった。

NYで“開眼” 団体設立

 入社8年目、海外研修制度を利用して半年間ニューヨークへ。LGBTや社会的な活動に関わりたいと、現地のイベント会社に入って、NPOや非政府組織(NGO)の企画を担当した。非営利事業でも資金をかけてプロに仕事を頼み、質の高いサービスを社会に還元する。それに対して寄付があり、新たな事業につながる。

 そんな好循環の仕組みを日本でもつくりたいと、2010年にgood aging yellsを設立した。現在のメンバーはLGBTの当事者や支援者の二十数人で、広告、金融、行政、製造、サービス業とさまざまな業界で働く。「自分たちを弱者ととらえ、権利を訴える」といった従来の社会運動に違和感があった松中さんらは、それぞれの専門性を生かし、具体策で社会に働き掛ける活動を目指している。まじめに楽しみながら。

 老人ホームは施設の形態を取るか、各自が住み慣れた土地で暮らしながら自治体の地域包括支援センターと連携するか、仕組みは検討中だ。いずれにせよ、「LGBTだけで閉じちゃいけない。地域との交わりが大切」と松中さん。

葉山御用邸そばの通りに7〜8月に開くカラフルカフェ=神奈川県葉山町で(松中さん提供)

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交流から生まれる理解

 そんな思いから神奈川県葉山町の一色海岸そばで、夏限定の「カラフルカフェ」を11年から始めた。7〜8月の土日祝日に営業し、メンバーが交代で店に立つ。葉山御用邸の近くで観光客も多く、昨年は延べ1300人が来店。今夏も営業を予定する。

 山梨県北杜市の中村キース・ヘリング美術館と連携し、多様性やエイズ防止を訴えるキャンペーンとして同館周辺10キロのコースを走る「カラフルラン」も昨年からスタート。家族連れの参加もあった。今年も6月7日に開催する。

 LGBT当事者と支援者が自分らしく働ける情報発信やコミュニティーの拠点「カラフルステーション」も都内に近く開設予定だ。

 当事者と、そうじゃない人たちの交わる層が生まれ、そこから少しずつ理解や交流が広がっていく。松中さんは自身を「のりしろ」に例える。

 仕事、家族、老後の問題など、活動のテーマは人生の各場面にわたる。メンバーの周りには、いろんな「家族」が既にいる。レズビアン、ゲイで子どもを育てているカップル、シングルマザーと一緒に暮らすゲイも。一方で生涯未婚率は高まり、おひとりさまが増えている。

 一般的な家族像、幸せのかたちにとらわれない生き方への突破口が、この取り組みから見つかるかもしれない。

 カミングアウトして社会生活を送る性的少数者が増えてきたのは、1980年代以降とされる。自分らしい生き方を貫いて迎える老後。どんな課題があるのか。

「あくまで他人」困難多く

カップルの相続権、手術の同意…

 同性カップルは長年連れ添っていても共同財産の相続権が認められていない。住宅の所有、賃貸の名義が亡くなった人単独の場合、残された相手が住めなくなる恐れもあると、高岡法科大の谷口洋幸准教授(ジェンダー法学)は説明する。

 急病やけがで入院、手術が必要な緊急時、面接や医療行為の同意権を同性パートナーに認めるかは医療機関によって判断が分かれ、親族以外は拒否されるケースもある。あくまで他人扱いのため、職場で介護や看護の休暇取得も難しい。

 LGBTの法律相談を受けている東京都の永野靖弁護士は「相続の問題は遺言、医療上の同意権などはカップル間の契約書を公正証書で事前につくっておくことが有効」と話す。

 男女なら婚姻届1枚で済むことが、同性カップルは一つ一つ対応せざるを得ず、費用もかかる。課題を一括して解決するため、同性間のパートナーシップを法的に保障する「特別配偶者法」の制定を訴える動きもある。

 シングルの場合はどうか。配偶者や子どもによる介護が期待できないのは異性愛者も同じだが、少数者ゆえの悩みがある。

 入所した施設でヘルパーらの知識が不十分だと、異性愛を前提とした何げない会話で傷つけられ、他の入所者から偏見を向けられた際に適切な介入が期待できないことも考えられる。永野弁護士はセクシュアリティ、人格を尊重したサービスが提供されるよう、介護従事者に対する研修を求めている。

 

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