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LGBTと仲間と生きる(上) 一つ屋根に多様な「性」

リビングに集まって会話やゲームを楽しむ住人ら=いずれも東京都杉並区で

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シェアハウス 認め合う生活

 恋愛観も仕事もさまざまな人たちが共に暮らすシェアハウスが、東京都内にある。住人に共通するのは多様な「性」を認める価値観。運営に協力するNPO法人は、性的少数者のLGBTから始める仲間暮らしを提唱している。夫婦や家族の枠組みを超え、友人らと助け合って老後を迎える生き方の「一歩」が、ここで始まろうとしている。(担当・押川恵理子)

「悩み話しやすい」

 東京都杉並区の住宅街に立つ「カラフルハウス」。各部屋のインテリアはピンクや青など違う色調で統一されている。ゲイやレズビアン、体と心の性が一致しない人、異性愛者の男女13人が暮らす。

 オープンから1年たった先月中旬の夜、リビングでくつろぐ住人の輪に交じった。

 頭髪を短く刈り上げたトモさん(33)。体の性別は女性だが、幼いころから違和感があった。かといって男性でもない自分にずっと葛藤を抱えていた。

 茨城県に生まれ、県外の大学を卒業後に上京。働くなら東京と決めていた。「当事者に会いやすいし、性別不詳の格好をしていてもじろじろ見られないと思って」。1人で悩み続け、3年前にGID(性同一性障害)の交流サイトに思い切って参加。それをきっかけに当事者とつながりだし、カラフルハウスの情報も得た。

 LGBTは共通する悩みもあれば、特徴や価値観は大きく違う面もある。「全く知識がない人に比べると、話しやすい。入居して良かった」と話す。今、トモさんは男性として社会生活を送りたいとGIDの治療を受けようとしている。「トライできるのもこの環境があるから」と感謝する。

「Xジェンダーって?」

 リビングに置かれた連絡帳には住人の自己紹介が書かれている。X(エックス)ジェンダーという見慣れない一文も。自身の性別を男性、女性のどちらでもないと自認している人を指す。

 「バツジェンダーって何? 最初は根掘り葉掘り聞きました」と、明るく話すのはレイコさん(30)。留学先の英国でシェアハウスに暮らし、帰国後も友人と同居。職場近くの立地が気に入り、入居を希望してからLGBTの意味を調べ、驚いた。

 「自分の知らない世界を教えてもらい、すごく勉強になる」と生活を楽しんでいる。

 マリさん(26)は、いろんな恋愛観を聞いてみたくて入居した。異性愛者だが、恋愛の対象を1人に絞れないことがあった。理由を説明しても理解を得るには時間がかかるし、嫌悪感を持つ人もいると思い、親密な友だちにしか打ち明けられなかった。入居したころ、ポリガミーという言葉を知った。1対1の関係性にこだわらず複数との交際関係を認める考え方を意味する。「自分もこのままでいいかも」と初めて思えた。

「自然体で暮らせる」

やさしい色合いの部屋。雰囲気は各室で異なる

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 カラフルハウスでは入居前に面接を行い、事情を受け入れて共同生活できる人かどうか確認している。

 「何でも言えるし、分からないことも聞ける関係」と、ジュンさん(35)は居心地の良さを話す。以前からシェアハウスに興味はあったが、ゲイと告白することは面倒だった。LGBTに配慮した物件と知って見学。部屋に一目ぼれし、入居した。

 将来は1人暮らしか、パートナーと同居の2択しかないと思っていたが、ここに住んで選択肢が増えた。「小さなコミュニティーで生きるのもありかなと。パートナーがいても生き別れることもあるし」と話す。「最近、セクシュアリティはどうでもいいなと。ここでは自然体でいられるから」と、ほほ笑む。

 タクさん(26)も同意する。最近、自分がゲイと意識するのは取材の時ぐらい。「お互いの仕事や悩みを話し合い、自分の可能性や将来について考えられるようになった」と、仲間から刺激を受けている。

 美山佳子さん(24)は学生時代にゲイの友だちが人間関係に苦しむ姿を見て、啓発に関わりたいと思っていた。何げなく普段の会話に出てくる「男っぽい」「女っぽい」「男らしさ」「女らしさ」といった言葉を、入居後は使わなくなった。

 仕事などで落ち込んだ日、リビングに座っていると、そっと声を掛けてくれる住人のやさしさに感謝している。「結婚しなくても、信頼できる人たちと疑似家族として暮らすのもいいかも」と思い始めた。

 入居を募ってから2週間で全13室が埋まった。都内に2軒目のオープンも予定されている。同性婚など多様なパートナーシップが法律で認められていない日本社会で、少数派ゆえの生きづらさを感じている人は多く、関心の高さがうかがえる。

 カラフルハウスの運営に協力するNPO法人「good aging yells(グッド・エイジング・エールズ)」が目指すのは、誰もが楽しく年を重ねられる社会。活動の背景には老後への不安があった。LGBTの当事者が向き合っている課題は決して人ごとではない。

 カラフルハウス 「LGBTフレンドリー」を掲げる日本初のシェアハウス。2世帯住宅をリフォームした13室がある。家賃は間取りに応じて5万1000〜6万5000円、共益費1万4800円。住人の誕生会を兼ねたミーティングが毎月開かれ、花見など四季のイベントもある。個性的なシェアハウスを展開する会社シェア・デザイン(東京)が運営。LGBTの当事者に配慮し、円滑な入居の手続きや共同生活を支えている。

 LGBT Lはレズビアン(女性の同性愛者)、Gはゲイ(男性の同性愛者)、Bはバイセクシュアル(両性愛者)、Tはトランスジェンダー(体と心の性が一致しない性同一性障害などのため、出生時に決められた性と異なる性で生きようとする人)の略。電通総研の調べでは人口の約5.2%と推計されている。

 次回(11日付)の紙面で引き続き特集します。 

 

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