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「機械人」地球ヲ乗ッ取ル? 能登でも目撃情報

恋路駅で腕組みして物憂げな表情でたたずむ彼(彼女?)は何を思っていたのだろうか=石川県能登町で

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 1年前の4月1日、人間型のロボット「機械人」に地球が侵略されようとしていたことが、ポプレス編集部の総力取材で遅ればせながら判明した。石川県能登町の名所・恋路駅に現れ、腕組みしてたたずむ機械人の写真も入手。編集部には、ことしの4月1日も再び地球に異変が起きるとの情報も寄せられている。(担当・谷口大河)

エープリルフール お祭り騒ぎに全力

戦況の変化 次々と配信

 前述の記事は半分うそで、半分本当。2013年4月1日、機械人は現実ではなく、インターネットの世界に現れた。金沢市に本社を構えるゲーム会社、グランゼーラが手掛けたエープリルフール企画。1日限りのお祭り騒ぎを繰り広げた。

 当日はグランゼーラのウェブサイトが架空のニュースサイトに。「世界各地が襲われている」「人類の新兵器が完成した」など、戦況の変化やエピソードを次々と配信した。

 なぎ倒されるビル群、逃げ惑う人々。なすすべもなかった人類は、やがて反撃に転じ、ついに敵の本拠地へ迫る。SF映画めいた物語は、コンピューターグラフィックス(CG)を駆使した迫力の映像で描かれた。準備に半年以上費やした。「エープリルフール企画は会社の設立目的の一つ。私たちの存在価値をアピールできる場なんです」と語るのは、チーフプロデューサーの九条一馬さん(47)。十数年にわたって大法螺(おおぼら)をふき続けている。

 過去に働いていたゲーム会社でも、1日限定で会社のサイトを書き換え、唐突に和菓子の通信販売を始めたり、石川県の山奥に未知の水生生物を追い求めたり。そもそも展開していないのに「動物園事業から撤退」と銘打った年は、コーヒー牛乳が搾れる牛「コーヒー牛(モカブルマン種)」など架空の動物をイラストで紹介。詳しい生態を書き込み、別れを惜しんだ。発信されるうその数々は、インターネットユーザーやゲームファンの間で春の風物詩となった。

 エープリルフールとゲームには通じるところがあるという。「ゲームも、うそですよね。そのうそを思いきりやれるし、皆が期待してくれるのが4月1日だと思うんです。クリエーターにはチャンスですよ」。2011年4月、スタッフとともにグランゼーラを設立した時も、視線は1年後を見据えていた。

 12年4月1日。第1弾として気合十分で準備した企画は、しかし工夫を凝らしすぎて未完成。断腸の思いで公開を断念した。悔しさをばねに臨んだのが、昨年のロボットによる侵略、「キカイマシーン帝国襲来」だ。サイトの記事を随時更新、ニュースの続報としてうそをつき続けた。

 その最中で「機械人を撮影できるアプリが開発された」と称して、スマートフォン向けアプリを配信。「目撃談を寄せて」と呼び掛け、視聴者を巻き込んだ。

 クライマックスは午後10時。ロボットの本拠地である宇宙戦艦を人類が撃墜すると、この日のために作曲を依頼した壮大な音楽とともに、エンドロールが流れた。

バカな連中 最高の賛辞

 祭りの後、視聴者から感想が寄せられた。「おつかれさまでした」「バカな連中だな」「来年も楽しみにしています」。九条さんは「一番うれしい褒め言葉。ファンとのつながりを感じられるから」とほほ笑む。

 一方で、「こんなことをやるなら早く本業に取り組んで」と厳しいファンもいるとか。

 グランゼーラは、家庭用ゲーム機で遊べるソフトや仮想空間の企画制作を手掛けている。日本はもちろん、米国、英国、マレーシア、フランスなど世界34カ国で販売。新作が待ち遠しい人は、エープリルフール企画よりもゲーム開発の優先を願っているのかもしれない。あるいは経営を心配しているのかも。

 九条さんは「CGをより実写に近づけたり、アプリを開発する技術は今後の事業展開に生かせるものばかり」と断言。導入した機材もゲーム開発に使い、会社の血肉になる。

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 「娯楽をつくることが私たちの仕事。人に楽しんでもらう1日限りの作品、中途半端なことはできません」と胸を張る。さて気になることしの企画は?

 「昨年はあまりにもフィクションだった。今回は真剣さが伝わる、アカデミックな企画を用意しています」と澄まし顔。真実か、真っ赤なうそか。4月1日、サイトでお確かめください。

地域の魅力 面白く発信

金沢のゲーム会社

「機械人」に囲まれながら、エープリルフール企画について話し合う社員ら=石川県野々市市内で

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 耳慣れないが雄々しい社名「グランゼーラ」は、九条さんが以前働いていた会社で制作に関わったゲームに登場する「革命軍」が由来。「娯楽に革命を起こし、世の中から退屈を根絶する」というスローガンを掲げて船出した。

 願いを込めた名前が思わぬ混乱を呼んだことも。取引先の銀行員が社名をインターネットで検索したところ、目に飛び込んできたのが「グランゼーラ革命軍」。一体、何をしている会社かと不思議がられたという。

 ゲーム制作の傍ら、ウェブサイトで4こま漫画や日誌などを連載する。その一つ「金沢ライフマップ」では、本社がある金沢市はじめ、石川県をさまざまな切り口で紹介する。

 雪から樹木を守る「雪つり」の回では、歴史や方法に交えて、居眠りで落ちる首を支える「会議雪つり」を提案。加賀料理「治部煮」では社員による料理対決を繰り広げ、独創的なパイナップル治部煮まで登場した。

 「石川県が面白く見えるように」工夫を凝らす、真剣な悪ふざけ。一銭にもならないが、これも大事なグランゼーラの「業務」だ。

 

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