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失恋ホスト参ります 傷心癒やす「桃山商事」

女性(手前右)の相談に応じる「桃山商事」のメンバーと角記者(右端)=東京・新宿で

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 相手を思う気持ちが強いほど、失恋した時に心に負う傷も深くなってしまうもの。恋に破れ、傷ついた女性たちから頼りにされているサービスがある。相談にじっくりと耳を傾け、癒やしてくれる「失恋ホスト」。手掛けるのは「桃山商事」と名乗るアラサー男子たち。切ない女心をどう癒やすのか。同じく30代の記者が“一日ホスト”を体験してきた。(担当・角雄記)

男のずるさ ばっさり

記者が“体験入社”

 週末の夜、多くの人でにぎわう東京都心。JR新宿駅に近いカフェで、桃山商事のメンバーと落ち合った。通称で活動する清田代表と森田専務、佐藤広報の3人は色気が漂うホストというより、優しいお兄さんといった感じ。

 今回の相談者、女子大生Aさん(23)は黒髪を肩まで伸ばし、おしとやかな雰囲気だ。失恋ホストを利用するのは恋人との別れを考え始めた昨年11月に続き、2回目という。

 まずは食事や飲み物を囲み、大学卒業と就職を控えたAさんに合わせ、最近の「就活」を話題に盛り上がる。たいてい、恋愛とは関係のない話題から切り出し、30分から1時間ほどかけて場を和ませていく。

 「こないだは別れそうと言ってたけど、どうなったの?」。頃合いを見て佐藤広報が話を振ると、Aさんは、付き合っていた3歳年上の社会人と別れたことを明かした。年上の彼は知識も豊富で頼もしかった一方、着る服に細かい注文をつけるなど煩わしく、けんかも多かった。早く結婚したいと望んでいた彼に対し、Aさんは年齢的にもまだ考えられない。そうした方向性の違いもあって昨年12月、2年半の交際に終止符を打った。

 失恋ホストを利用したのは、言動の裏に隠れた彼の本心を知りたかったから。別れてから借りた物を返す用件などで3回ほどメールをやりとりした後、「メールは苦手。もう送ってこないで」と、彼から伝えられた。付き合っていた時は、こまめに返信をくれていたが「本当は迷惑がられていたのかな」と気になりだした。さて、彼の真意は?

 記者は「振り返ってみて重く感じただけ。付き合っていた時は気にしてなかったと思うな」と答えるのが精いっぱい。一方、森田専務は「言われた女性が気にすることを意識して男が掛ける言葉。引きずらないで」と優しく諭す。

 別れ際、男性が恋人に「君は重かった」と言い放ったり、逆に自分の至らなかった面を挙げて「ごめん」と何度も謝ったりするケースは多いという。清田代表は「どっちも男のずるいやり方。言われた女性に罪悪感を感じさせて悩ませるための言葉だから、気にしないように」とばっさり。

 Aさんも別れ際、これまでと違う元彼の言動に戸惑った。「最後だから」とやたらと手をつなぎたがったり、人目をはばからずにキスしてきたり。佐藤広報は「最後に相手に何かを残したい男の欲求かも」と指摘した。

 他にもあれこれと男心を分析しているうちに、気づけば2時間半が経過。「客観的な意見を聞けてよかった」。Aさんはすっきりした笑顔を見せた。

「二軍」の謙虚さ 忘れず

 大学生から48歳まで延べ400人の失恋話に耳を傾けてきた失恋ホスト。活動のきっかけは、2001年ごろにさかのぼる。中学、高校と男子校だった清田代表は、大学で女性がクラスの7割以上を占める学部に進学。女子から寄せられる恋愛相談のアドバイスに困って、森田専務、佐藤広報ら男友達を呼んで一緒に聞くようになった。

 口コミで女性たちに広まり、「男子に囲まれて話すのは気持ちいい」と評判に。「桃山商事」と名付け、ホームページで利用者を募ると、雑誌などにも取り上げられた。

 相談は無料で、会場のカフェなどでの飲食代は割り勘。恋のエピソードが相談料代わり。恋愛ネタを扱う文筆業やラジオ番組の制作に役立てられ、ホスト側にもメリットがあるのだ。

 いろんな話を聞けば、失恋の法則が分かってくると思いきや、むしろ逆という。「似たようなエピソードでも、相談者によって受け止め方、失恋に至るプロセスは全く違う。会話の中で自分の思いを整理し、すっきりしてもらうことに主眼を置いています」と清田代表。

 活動していて「男子力の底上げ」の必要性を痛感するという。「ひどい彼氏がいるもんだと思う一方、自分たちも同じかもと感じることもある。『二軍男子』という意識と腰の低さを守りながら、男女の良質なコミュニケーションの方法を考えていきたい」

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 ◇桃山商事◇ アラサー男子による「恋バナ(恋愛の話)収集ユニット」。中学や高校、予備校で同級生だった清田代表、森田専務、佐藤広報の3人を中心に、パイロット、俳優、会社員といったさまざまな職業のサブメンバーがいる。「向上心と謙虚さを大切にする」という思いを込め、自分たちを「二軍男子」と呼ぶ。失恋ホストで集めた話題はインターネット上の「二軍ラジオ」で紹介し、2月には初の書籍「二軍男子が恋バナはじめました。」(原書房)を出版した。

 

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