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脱被災者 共に歩む 東日本大震災3年

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 東日本大震災から間もなく3年、“脱被災者”をめざす動きが強まっていると感じる。地域の力で、どうやって自治を進め、経済を元気にし、未来の担い手を育てていくか。東北の人々が向き合っている課題は、日本の地域社会にも共通する。復興、地域づくりに関わるリーダーに聞いた。

地方発ビジネス広げる

東北に「右腕」派遣 山内幸治さん

 地場産業の再生、福祉、エネルギーの地産地消など、東北で動きだしたさまざまなプロジェクトを支える「右腕」の人材を送り続ける。率いるのは、次世代の起業家の育成を専門とするNPO法人「ETIC.」(エティック、東京都)の理事、山内幸治さん(37)だ。

東北の復興を支える人材を送り出すNPO法人ETIC.の山内幸治さん=東京都渋谷区で

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◇ ◇

−長期の「右腕」派遣を始めたきっかけは。

 高齢化、人口流出が進んでいる地域で人材のニーズが高まると思った。実際に被災地を回ると、避難所の運営はリーダー役の手腕にかかり、優秀な人には被災地の内外から要望が殺到。パンクしそうなリーダーを支える「右腕」が必要と実感した。短期のボランティアも人手としてなら役立つが、自ら創造的に動くには時間がかかるため、派遣期間は3カ月〜1年とした。

 これまでに180人以上を派遣。社会人の6割は期間が終わっても東北に残っている。震災直後はすぐに動ける学生の参加が目立ったが、2、3年たつと事業の仕組みをつくる能力が求められるため、30歳前後の社会人が増えてきた。

 「できる人」が入ると、依存構造が生まれやすい。右腕側と受け入れ側の目的、思いが合致することが大切。岩手県陸前高田市で始まった木質エネルギーの事業では、林業や自然エネルギーの分野で起業を目指す高知県出身の若者が働いている。復興に力を貸しながら、経験を積むことで自分の人生に投資している。

−東北が勉強の場に。

 互いに貢献する気持ちを持ち、利用し合うぐらいの関係の方が健全。現在は毎月10万〜15万円の活動支援金を送っているけど、このやり方を続けることが良いとは思わない。受け入れ側が人件費を払っていくことが次の大事なステップ。

 最近、2005年のハリケーン被害で経済危機に陥った米国・ニューオーリンズ市内を視察して感じた。バケツに穴があいていても、蛇口から水がどんどん流れている間は気にならない。東北は復興の資金、人材が集中し、水が流れている状態。いつか止まる。穴は、震災前からあった課題。地域で人材を育て、仕事を増やす仕組みをつくらないと。

 地方の暮らしは第二の人生やロハスとか癒やしを求めるかたちで注目されているけど、地方がビジネスの手腕を磨き、可能性を広げる舞台になることが大切。その流れを東北から全国に広めていきたい。

 ETIC. 1993年設立。起業家精神を持つリーダーの育成を目指し、長期のインターンシップや起業支援を続ける。近年は首都圏の若手社会人らが地域に移住し、新たな仕事をつくる後押しも。人材のマッチングや地域づくりに長年取り組む経験を生かし、東日本大震災の被災地に地元リーダーを支える「右腕」を派遣。東北に残り、自ら起業する人も多い。問い合わせは(電)03(5784)2115。

七尾の町を紹介する「御祓川」の森山奈美社長=石川県七尾市生駒町で

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能登で地域づくり 森山奈美さん

他者との交流 挑戦生む

 「じり貧になりかけていた地域が、持続可能になるためのチャンス」と震災を受け止めるのは、石川県七尾市のまちづくり会社「御祓(みそぎ)川」社長の森山奈美さん(41)。能登の魅力発信に取り組む。 

◇ ◇

−2007年の能登半島地震の前後で地域づくりはどう変わりましたか?

 震災以前は七尾市の街中を流れる御祓川の浄化や周辺のにぎわい創出が中心でした。川が汚れた原因は排水の影響より、生活で川を使わず、市民の関心が薄れたため。川と市民の関わりを取り戻そうと動いた。川沿いの道路整備で舗装材を何種類か仮施工し、住民に歩いてもらい、投票で決めたことも。川もまちづくりも自分事として考える人が増えたら良くなる。

 震災後、能登の商品を買って支えたいという動きがすぐ出てきたので、石川県の事業で情報発信のウェブサイトをつくった。今は民営化し、オンラインショップも運営。地元の飲食店や旅館などと体験型の観光プログラムも始めた。どれも身近にある資源を生かし、住民のチャレンジを後押しする「インフラ」です。

 ETIC.と連携し、地域おこしに関心を持つ首都圏の若手社会人らに2泊3日の研修も行っています。昨秋は震災後の能登を伝え、復興とは何かを議論。震災前の状況に戻すことは復興じゃない。人が出入りし、新たな動きやチャレンジがたくさん生まれる状況、「活性」の継続が大事です。

 「能登留学」として学生のインターンシップ(就業体験)も仲介。長い間、新入社員が入っていない中小企業も多く、そこに、技術も経験もないけどやる気はある若者が来て、「何のためにこれをやっているんですか」とか経営者に聞く。事業や経営理念を見つめ直す機会にもなる。

−地域づくりのリーダーに必要な資質は?

 暮らしを楽しむ力かな。今のまちづくりは道路や建物などのハード整備より、ソフト。まち自体を楽しめる力がないと、アイデアは生み出せない。住民一人一人が自分らしくいられたり、輝いていたりするまちがすてきだなと思う。私には歌が大切な要素。ボーカルグループでゴスペルやポップスを歌っています。文化活動の経験から仕事を頼まれたことも。

 よそ者と地元の人が出会ったり、ぶつかったりするから新しい何かが生まれる。歌と同じ。違う音を出すからハーモニーになる。

 御祓川 事業は「まち育て」「みせ育て」「ひと育て」を柱に掲げ、地域資源を生かした観光プログラムや商品の開発、情報発信に取り組む。小さな都市でも世界に通用する質の商品や考え方、もてなしを持つ地域づくりが目標。長期実践型のインターンシップでは自社や能登の企業に100人以上を受け入れ、能登で起業する若者も出ている。問い合わせは(電)0767(54)8866。

 

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