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情熱と計算 怪物に挑む 富山・高岡在住 怪魚ハンター 小塚拓矢さん(28)

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 でっかいことをやってやる。高校時代に好きな子を振り向かせたくて、海外で巨大な魚を釣ると勢いで宣言した小塚拓矢さん(28)=富山県高岡市=は、今や「怪魚ハンター」と呼ばれる。アマゾンなど世界32カ国を旅し、怪物に挑んできた。徹底的に準備し、狙いを定める。情熱的な若き冒険家はリアリストでもある。

−そもそも怪魚とは?

 「怪」とつくでしょ。いるかいないか分からず、いても釣れるか分からない。基準は体長1メートルで重さ10キロ、淡水や河口、海と混ざる汽水域までにいる魚と僕は定義している。世界に60種ぐらいいて、50種とるのが僕の目標。あと3種で制覇する。

 小学1年ぐらいから近所の用水路で釣りをしていた。学校や習い事が終わったらそこへ。釣り以上に面白いことはなかった。

−世界32カ国を旅した。

 原点は高校2年の旅。通学用の自転車で神戸に3日間かけて行き、3日間かけて帰ってきた。すごい楽しくて、もっとでっかいことをやりたくなった。バックパッカーで釣りをしている人を知り、これだと。「大学時代に5回、海外に釣りの旅に出る」と、好きな子に大言壮語を吐いたら、引っ込みつかなくなった。

 印象的な旅はアフリカ。植民地支配が長く、ヨーロッパに搾取されてきたから、援助を受けて当然という意識が染みついてると感じ、精神的に疲れた。

 パプアニューギニアは、ほっとした。ワニを食べ、ほぼ現金収入なしで暮らしている。800の言語を持つといわれるぐらいコミュニティーが分かれていて、地域内のつながりが強く、他者を気遣う。おもてなしの心がある。

 居心地がよくて、2005年から6回通い、環境の変遷も見てきた。地形が変わって釣れなくなったり、外資が入って商業的に漁を始めて魚が一気にいなくなったりした場所も。

設備投資が少なくて済む漁業は有効な外貨獲得の手段。資本主義の波はどこにでも訪れる。人と自然が同調して生きていくのは非常に難しいと実感。

 途上国は発展を望んでいる。パプアで僕が一番仲の良い人も、欲しいものを尋ねたら「develop(デベロップ)」と一言。自然の恵みだけで、貨幣を持たずに生きることは素晴らしいと、僕は言うのだけど。地球は定員オーバー。資本主義以外の大発明が生まれない限り、自然は搾取されて無くなる。僕の実感です。悲しいけど。

 ブラジルのジャングル奥地で、豚や鳥を飼い、のんびり暮らしている人たちがいる。現金収入が必要な時だけ日雇いの仕事をする。そこのおじいちゃんは「この生活が一番、何も変えるな」と言い切った。それには、救われた思いがした。

−ピンチも経験。

 09年、コンゴ(旧ザイール)に行った。治安が多少安定した時期で、この機会を逃せないと。手持ちは30万円あったが、何が起こるか分からない国で危険を回避するには資金が足りない。大学院の博士課程に進むかどうかの時期で、バイトする時間もない。考えた末、自分のブログで寄付を募ったら、批判の嵐。ボコボコにたたかれた。それまで面白い釣りのネタを提供し、毎日1000人ぐらい読んでくれていたのに。人って冷たいなって。何も言わず10万円貸してくれた後輩もいたけど。借りた分は出版した本の印税で全額返した。

ゲリラの襲撃とか、海外は危険なことが散発的に起きるけど、本当に大変なのは、旅に出るための時間と資金の確保。

 だから国立大に進学し、電気、ガス、水道、駐車場の料金込みで1万円の所に住んだ。仮にばかやって、親に勘当されても、自分で生活費と学費を払って卒業できると、高3の時に計算した。

−自立心が強いですね。

 両親に楽させたい気持ちが強かった。おやじは若いころのけがで手に障害があり、母親は15歳で父を亡くして苦労してきた。

僕は生まれたときから、わが家はめちゃくちゃ貧乏だと思っていた。でも両親は教育にかけるお金を惜しまず、好きな習い事は全部やらせてくれた。

 ただ服は全部、いとこのお下がりで、小学生の時、ませた同級生にいじめられたけど、将来、絶対見返してやると。

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−次の冒険は?

 こいのぼりみたいな、美しく巨大なムッスラーをインドで釣る。アフリカのタンガニーカ湖にいる深海魚のような緑色の目をした淡水魚も。もう1種類いるけど、それは秘密です。

 1回の冒険なら誰でもできる。継続に価値がある。情熱と理想だけじゃ進まなくて、計算力も必要。登山だと世界最高峰のエベレストがあるけど、怪魚の世界は、いわばエベレストを探すところから始まる。目標を発見する楽しみ。それって、21世紀の冒険だと思う。

  聞き手・押川恵理子

 こづか・たくや 1985年富山県高岡市生まれ。高岡高校を卒業、東北大理学部生物学科でハゼを研究、同大大学院修士課程を修了。アマゾンやアフリカなどで怪魚と格闘した体験をまとめた「怪物狩り」(地球丸)を2010年夏に出版。12年、釣り道具の開発や販売、執筆業などを担う会社「モンスターキス」を設立。「生きた化石」と呼ばれるシーラカンスを釣ることを会社の定款に掲げる。高岡市在住。

 師匠 冒険はお金がかかると思っていた高校生のころ、釣りざおを持って海外を巡るバックパッカーの存在を知った。実践していた1人が、「師匠」の武石憲貴さん。ホームページの掲示板に書き込んで連絡し、東北大の受験後、当時秋田県に住んでいた武石さんに会いに行った。体験談を聞き、怪魚ハンターとして冒険に踏み出すきっかけをもらった。

 

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