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愛(ラブ)と笑い(ラフ)で地球に平和 「バカラシー運動」記者が突撃!

怒りを自分で発散するアタックミー・レシーブミーを体験する記者(左)

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富山拠点のアーティスト トムスマ・オルタナティブさん

 真ん丸の青い地球を頭にかぶり、「笑いで世界を平和に」と真面目に訴える。不思議な外見と実直さのギャップに引きつけられる。富山市に住むトムスマ・オルタナティブさん(39)は、大正デモクラシーならぬ「平成バカラシー運動」を提唱する女性アーティストだ。愛と笑いを素材に健康に生きるって、どういうこと!?記者(28)が体当たりで取材してきた。(担当・石井真暁)

イライラ 愉快に発散

 人の手の形をしたウレタン製の器具を左のひざに装着し、勢いよく左ももを上げると、バシッ! 自分の頭を一撃。かっこ悪さとばかばかしさに、思わず笑いがこみ上げてきた。

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 トムスマさんの考えた「アタックミー・レシーブミー」は、やり場のない怒りを自分に向けるためのグッズ。バレーボールのように頭を「アタック」して怒りを発散させた後、腕形のクッションを枕に寝転び、疲れを癒やす。名付けて「アート健康器具」。かっこよく貧乏揺すりができる道具や、反復横跳びをしながら人との信頼関係を築く道具もある。

 指に載るほどのサイズで、人が座っているようにも、鳥のようにも見えるのは「てのりごちさん。」。手の人さし指にそっと載せる。30秒ほどでバランスが崩れて落下。丸みを帯びた小さな体はかわいいが、なかなか思い通りにとどまってくれない。何度か試みるうち、少し長く載せられるように。「無心がポイント」という。

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 「『てのりごちさん。』はあなたです。あなたは『てのりごちさん。』です」とトムスマさんが繰り返す。ふと、指先から自分自身を眺めるような光景が頭に浮かんだ。俯瞰(ふかん)しているようで、心が落ち着く。仕事と子育てに忙しい毎日、ゆったりとした時間は心地よかった。

体感アート 心にゆとりを

 不思議なアート健康器具を開発したトムスマ・オルタナティブさんとは、どんな人物なのか。

 名前からして気になる。トムスマはアイヌ語で「光る石」を意味し、オルタナティブは「代わりの」「新しい」などと訳される英語。「宇宙の中で光るもう一つの地球(いし)」という思いが込められている。

 エレガントな貧乏揺すりを手助けする。中央部を持って揺するとブルブル。コットンと毛糸の手触りが柔らかくて心地よい。名前は「上質な」と「貧乏揺すり」の頭文字から。ファンク音楽の帝王ジェームス・ブラウン(JB)の曲に合わせるとノリノリの貧乏揺すりを楽しめるかも。

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 「自他を区別せず、一人一人が地球そのものという共通認識を持てたら、もっと世界は穏やかになる。誰かを排他したり、傷つけたりしなくなるのでは」

 札幌市出身のトムスマさんは幼い頃から絵を描くのが好きだった。絵描きを目指したが、父に反対されて半ば家出のように上京し、女子美術大に進学。「絵を鑑賞して完結するのでなく、体感するアート」を在学中から目指した。卒業後はデザイナーに。

 26歳で個展の開催中、応援してくれていた母ががんで亡くなった。何の成果も見せられず、みとりすらできなかった。喪失感で空虚なまま1、2年過ごした後、三浦綾子さんの小説「塩狩峠」と出合った。題材は自分の身をささげて人の命を救うクリスチャンの実話。生き方に衝撃を受け、洗礼を受けた。聖書を読むと、キリストはすごくユーモアのある人に感じた。その経験から「愛と笑い」という創作のテーマを得た。表現自体の楽しさや面白さを追求してきたが、「アートって生きること。呼吸」とも。

 富山市内で昨年11月に行われた「未来市民文化祭」でもパフォーマンスを披露。底に「Right Now」、内側に「今」と書かれたおけを持って舞い踊った後、観客とお茶を楽しむ独自の点前を見せた。

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 アート健康器具は「真剣に儀式をやっているようで、ふと別次元から自分を見ると、何してるんだろうって。ばからしいことをしている自分を笑うゆとりが生まれる」と説明。その動きを広めたいと、大正期の自由主義、民主主義的な風潮の「大正デモクラシー」にかけて「平成バカラシー運動」と銘打った。

 富山県との縁は2010年4月にフランスで開かれた国際展示会。知人を通じ、県内の企業数社から展示資金や物資の支援を受けた。恩返しのつもりで同年9月に移住。1年程度のつもりが、食の豊かさや自然の雄大さに心が満たされ、3年以上に。「教育にアートを取り込もう」と札幌市の小学校に通って児童と交流するなど、現在は富山市を拠点に全国で活動する。そんな自分自身を、富山の薬売りに重ねる。

 目指すのはラブ(愛)とラフ(笑い)のある世界。それは作品の素材でもある。 

 「てのりごちさん。」以外の作品は受注生産している。価格は応相談。今年夏には、東京都千代田区の3331Arts Chiyodaで公演を予定する。アーティストのほか、デザイナーとしても活躍。作品や今後の活動情報はウェブサイトで発信している。「トムスマ お知らせ」で検索を。

 

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