トップ > 北陸中日新聞から > popress > 特集 > 記事

ここから本文

popresspopress【特集】
 

生きるを面白く 都内シェアハウスの実験 富山県出身 高木新平さん(26)

写真

 「生き方」をデザインする。「個」と向き合って深く、面白く。それが富山県出身の高木新平さん(26)の目標だ。大手広告代理店を辞め、コピーライターなどをしながら都内のシェアハウスで自ら実験。働くって、消費って、コミュニティーって何? 根底にあるのは、多様性を包摂できる社会の方が創造的という考え方。「それぞれ違うスタイルだっていい」

 −「生き方」のデザインに関心を持ったのは?

 ファッションで自分を表現するのが好きだったから、大学で「繊維研究会」に入った。おしゃれ、トレンド的な服を作ったら、つまんなかった。

 ちょうど当時、米誌TIMEの表紙が「YOU」(あなた)。デザインという行為にみんなが参加したらいいと思い、おばちゃんや子どもたちの生活に入り込んで服を作ろうと思った。フランス人の女性教授が神楽坂に住んでて、よく顔を出した。いつも夕暮れに盆栽を手入れする。その時、着ている羽織を脱いで椅子に掛ける。そこから羽織をデザイン。厚手の黒い生地に紅葉を描き、薄手の素材をかぶせた。

 手入れの時、羽織をハンガーにかけると、夕日が差し込んで紅葉の絵が浮かぶ。個人に焦点を合わせた方が、面白いものが作れるなって。

 そのころ、ツイッターが流行してきた。情報発信に個人が参画することで、企業や社会との関わり方が変わる。服作りより、メディアが先に変化。それで、「生活者発想」をうたう博報堂を志望。ラッキーなことにウェブの部署に配属された。

原発について議論の場をつくる企画があった。クライアント側の論理を押し出し、対話する姿勢が形だけに思えて、気持ち悪いなって。

 東日本大震災があって、企画は中止になったけど。ライフスタイルをデザインする一つの接点として広告をやろうとしたが、マス(多数)の中で自分の思考がのみ込まれ、個人と向き合えない。震災の1カ月後、辞めようと決めた。

−シェアハウスは実験の場。

 生き方の実験とか、最初は余裕ないっすよ。同じ状況の仲間がいたから一緒に住もうと。仕事やめたし、最低限のリスクヘッジです。3カ月ほど暮らし、面白いなって。

 リビングをオープンにして、夜に作業や議論をする場を共有。昼夜逆転のコンセプトで「トーキョーよるヒルズ」と名付けた。話題になって、いろんな人と出会い、仕事ももらった。

「終身雇用で家族を持てば幸せ」みたいなことは、もうない。いくつかのコミュニティーと稼ぐ手段を持つ。

 その六本木のシェアハウスで消費のあり方や、公私の区別も考え直せた。で、そこは2012年夏にやめて、10カ月ぐらい、家なし、リュック1個だけで生活した。昨年夏から新たな「本郷よるヒルズ」に住み始めた。

 今、興味あるのは政治。ここは関心の近い住人が集まっている。コミュニティーづくりとか、若者がやっている面白いことを構造的に吸い上げる。ゼロから何かを始められる人は1割ぐらい。行政が支援し、いろんな人が面白がって乗っかれる仕組みが必要だなと。

写真

−その発想はどこから?

 一般化されていないことの面白さを社会に投げたい。ほんとに根っこの部分を正直に言うと、僕は障害あるんです。生まれつきで、思春期のころは悩みに悩んだ。人とは違うという意識が強い。逆に言うと、人と違うものを創っていくことでしか、自分を正当化できない。こんなのもありでしょって、常に提示していくことがアイデンティティー。

 シェアハウスは生活のコストを下げながら楽しく暮らす実験。「Liverty」(リバティー)という集団で全国に6カ所ほど開いている。駆け込み寺。1人月2万5000円ぐらいで住み、仕事も一緒につくる。

いじめられたり、会社に入れなかったり、ドロップアウトして、今の社会や経済的な枠組みに乗れなかった人たちが生きる仕組みをつくる。

 ボトムアップの対策。それだけだと体力を消耗するから、政治と市民をつなぐ。今は国や政治に興味ない人が多いでしょ。社会に参画させる意義を一人一人にどう持ってもらうか。進んでいるのが米国。勉強しに今年夏ごろ渡米します。3年ぐらい住もうかと。

 つてはない。やりながら考える。追い込まれ、必死になった方が創造性は上がるから。いつも、胸をざわつかせていたい。

  聞き手・押川恵理子

住人たち

 東大の本郷キャンパスの近く、通りに面した雑居ビルの6〜9階が、高木さんの暮らすシェアハウス「本郷よるヒルズ」だ。

 各フロアは吹き抜けで、広いリビングや屋上もあり、開放的な雰囲気。年齢、所属も異なる10〜50代の数人が同居する。共通点は政治やメディア、ITに関わりが深いこと。フリージャーナリスト、編集者、震災復興チームの代表、政治家を志す若者と、行動的な個性派ぞろいだ。

 ここから、どんな化学反応が起きるのか。

写真

コンプレックスは、創ることのモチベーション

 誰かに教えられた型ではなく、独自の理論でやった方がいい。絶望、コンプレックスは、創ることのモチベーション。追いやられたからこそ、生み出せるものがある。

 たかぎ・しんぺい 1987年、富山県新湊市(現・射水市)生まれ。高岡高校、早稲田大卒業。博報堂でソーシャルメディアの企画に携わり、2011年夏に独立。コミュニティーの新たなモデルをつくろうと、シェアハウス「トーキョーよるヒルズ」、ウェブサービスやアートを生み出す集団「Liverty」を仲間と始める。ソーシャルメディアで若者向けの政治キャンペーンも。企業の理念やブランドの確立、情報発信の戦略づくりも担う。

 

この記事を印刷する

PR情報

地域のニュース
愛知
岐阜
三重
静岡
長野
福井
滋賀
石川
富山

Search | 検索