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popress【Attention!】注目のトレンドから地元の話題まで
 

あの名建築に小松産 国会使用の「日華石」

採石場(小松市観音下町)黄色がかった褐色が目を引く

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 石川県小松市の国道8号東山インターチェンジ(IC)から南東へ車で15分ほど進むと、垂直に切り立った岩肌が左手に見えてくる。黄色がかった褐色がぬくもりを感じさせる「日華石(にっかせき)」の採石場だ。小松市の一部でのみ産出される石ながら、その柔らかな色合いや加工のしやすさから、北陸を代表する石材として全国の有名建築に使われてきた。現存する建物も多く、よく知られた東京都内の名所にもあると聞き、探しに出掛けた。(担当・角雄記)

内外装に大活躍

 赤いじゅうたんが延びる国会議事堂(東京都千代田区)の2階廊下。「こちらが日華石です」と、参議院広報課の三上武史さんが壁を指す。触れると、少しざらざらして色味も落ち着いている。光沢感のある大理石とは違う趣がある。

 1936(昭和11)年に完成した議事堂。建築のため全国各地から良質の石が集められた。内装だけでも40種近い国産の石材が使われ、「石の博物館」とも呼ばれる。日華石はその中でも主要な内装材の一つで、106トンが使われた記録が残っている。

国会議事堂2階廊下(東京都千代田区永田町)ニュースに映る壁にも日華石が

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 「国会対策委員会」など政党や会派の表札が並ぶ廊下。ニュース番組で記者に囲まれた政治家の様子がよく放送されるが、何げなく見ていた映像の背景が石川県の石だったとは!

 前田家16代当主の利為(としなり)侯爵が昭和初期に建てた国重要文化財「旧前田侯爵邸洋館」(東京都目黒区)でも、日華石が見られる。平べったいアーチなど英国の建築様式を取り入れ、当時は「東洋一の邸宅」と称されたほど重厚な造り。そのアーチに使われているのが日華石で、植物のツタのような装飾も施されている。

 外観は、素焼きの褐色のタイルと日華石の色合いが調和してレトロな雰囲気。こちらは国会議事堂と磨き方が違うのか、表面に凹凸や小さな穴も目立つ。南側の外装の1階部分は一面に日華石が使われベランダには羽の生えた獅子の石像まである。

 「由来は分かりませんがこちらでの呼び名は『大華石(たいかせき)』。前田家が地元を大切にしていた証しでは」とガイドボランティアの会の佐山彪さん(76)。洋館の内外装にはさまざまなレリーフ(浮き彫り)が施されており、軟らかくて加工しやすいことも選ばれた理由ではないかという。

旧前田侯爵邸洋館(東京都目黒区駒場)玄関アーチや獅子像などに日華石が“活躍”

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温かい色味人気

 日華石とは白山の火山灰が堆積して形成された凝灰岩。黄色がかった褐色と軟らかさが特徴だ。産地の地区名をとって「観音下石(かながそいし)」とも呼ばれる。

 「小松市史」の編さんに携わる加南地方史研究会の竹下一郎さん(66)によると、大正初期から採石が始まり、観音下地区の半数以上の世帯が石切工などとして携わった。品質に目を付けた東京の石材会社「昭和石材商会」が小松に工場を設け、精力的に売り込んで全国に広まったとされる。

 同社が取引先に配ったとみられる1937(昭和12)年の文書では、「加工がしやすい」「建築に優雅さや温かみを与える」などのうたい文句が並ぶ。主な使用先に大手の金融機関や建設会社、ホテルの名前が挙げられ、各地で重宝されてきたことが分かる。

 最盛期には6軒の業者が生産していたが、現在は観音下石材(小松市観音下町)の1軒のみ。代表の橋本康容さん(72)は「日華石のぬくもりのある色味は日本中の石を見渡しても珍しい」と胸を張る。通気性がよく湿気を帯びにくい性質もあり、世界遺産の平城宮跡の復元事業など文化財関係の建築でも好まれている。

 生産量はピークの10分の1ほどにとどまるが、現在もビルの内装などに引き合いが絶えない。「他にはない『おもしろみ』がある。特徴を建築に生かしてもらえるよう、使い方をうまく提案していきたい」と意欲を見せる。

使用先こんなところにも

旧グランドプリンスホテル赤坂旧館(旧李王家東京邸、東京都千代田区)

旧大林組本店(大阪市中央区)

天保山公園「明治天皇観鑑之所」記念碑(大阪市港区)

武庫川女子大学甲子園会館(旧甲子園ホテル、兵庫県西宮市)

平城宮跡(奈良市)

斎宮跡(三重県明和町)

 

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