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popress【Attention!】注目のトレンドから地元の話題まで
 

遊んで 学べる 「住み開き」 自宅を開放 交流の場に

2畳のスペースに人が集まる「2畳大学」。小さなちゃぶ台を囲み、会話に花が咲く=大阪市中央区で

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 自宅など私的な空間を、人の集まるコミュニティーとして開放する。そんなライフスタイルを「住み開き」と呼び、実践する若者が都会を中心に増えている。ギャラリーのように展示会を開いたり、一緒に料理を楽しんだり。仕事上の関係や地縁、血縁といった従来のつながりを超えた新しい結び付きも生まれている。そんな「住み開き」の現場を訪ねた。(担当・角雄記)

 大阪城の南西、昔ながらの街並みが残る大阪市中央区の空堀(からほり)商店街。通りから脇に延びる細い路地を進むと、「2畳大学」と書かれた木製の細長い看板が目に入る。

 「大学」という名前がつくが、ここは民家。玄関を入ってすぐ脇の2畳の小部屋が「キャンパス」だ。家主で学長の梅山晃佑さん(32)が5年前からこの部屋を不定期に開放して運営している。

 カレーの食べ歩きや調理実習を行う「カレー学科」に「映画関係学部」、ホームページ講座…。出入りする人たちが「学生」となり、取り組みたい企画や講座を持ち込む。自宅だったら「やりたいことを気楽にいろいろ試せる」と考えた。月1回の「オープンキャンパス」は食卓を囲んで会話に花を咲かせている。

 11月下旬のオープンキャンパスには会社員から神社の宮司、田舎で古民家再生に取り組む人まで、経歴や年齢もさまざまな7人が訪れた。自己紹介では、珍しい楽器、字幕速記の資格、おいしいカレーなど、各自の関心に応じて話題が膨らんでいく。「自宅でも職場でもなくて、大人が本気で遊べる『第3の場所』が大事だって言うよね」。参加者からはそんな声も上がった。

「のびしろ」でこたつに足を入れて手芸に取り組む櫨畑さん(左)ら=大阪市中央区で

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 同じ空堀商店街かいわいに住む櫨畑(はじはた)敦子さん(27)も住み開きを実践する一人。「自宅兼共有空間 のびしろ」と名付け、昨年9月から友人らに不定期に自宅を開いている。週2、3回ほど食事会を開くほか、「1日整体屋」などの企画に場所を提供している。

 11月下旬の夜は、3月にホームヘルパーの仕事を始めた男性(25)が「料理のレパートリーを増やしたい」とカレーを振る舞った。櫨畑さんら女性3人はイベントで使うワッペンの手芸に励んだ。

 櫨畑さんは性的少数者(セクシュアル・マイノリティー)や親しい人を自殺で失った人、家庭の問題や人間関係などで生きづらさを感じる人たちの相談に乗っている。自分だけでは相談に応じきれない時もあり「お互いがつながれば支え合えるのでは」と思い、住み開きを始めた。

 手芸に参加した会社員の女性(25)は「年齢が違う人と話す機会もできる。上下関係はないし、のんびりと過ごすことができることが居心地がいい」。商店街で迷っていた時、櫨畑さんに声を掛けられて知り合いになった。ふらっと立ち寄ることのできる場を持つことを「単に会社に行って帰るだけの生活より充実できる」と話す。

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名付け親・アサダワタルさん

広がる縁 無理なく楽しんで

 「住み開き」の名付け親は、音楽や文筆などを幅広く手掛けるクリエーターのアサダワタルさん(34)=大津市。「以前から各地で行われていた。住み開きという言葉を生むことで、新たに開こうという人たちの動機づけになれば」と狙いを話す。

 きっかけは大阪市から委託された文化事業で、カフェの運営や文化団体の活動を支援し、多様な人たちに出会えたこと。それまではバンドの音楽活動を通じた知り合いが多かったが、自身もクリエーターが自主運営する大阪市内のマンションの一室に出入りし、いろんな縁が生まれたという。

 2012年には全国の住み開き31事例を紹介する書籍を出版。リクルートホールディングスは13年のトレンド予測(住宅領域)で「住み開き」を取り上げ「友人とのつながり・自己表現したいという欲求から『自宅をオープン化』する動きが顕在化する」とした。

 「利益が求められる店舗ではないし、公共性の担保が求められる公民館でもないので、そもそも失敗はない」とアサダさん。住み開きしても、自宅は自宅。「無理のない範囲で開くことが大切。困った時には『ここ私の家ですから』と言えばいい」と助言する。

 ※次回は14日付Love&Sex。多様な家族のあり方を考える特集の後編です。

 

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