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モンゴル遊牧民に学ぶ 草原と仲間と生きる技

(上)遊牧民の男性はモンゴル相撲も強かった(中)「武者修行」は乗馬から。毎日5時間近く乗った(下)大切な羊肉は無駄なく料理して食べきる

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 見渡す限り、草原と青い空が広がるモンゴル。馬に乗って古来の生活を続ける遊牧民たちは、厳しい寒暖の差など気候の変化を捉えて暮らしている。羊や牛を飼い、ほぼ自給自足。便利な都市生活では得難い「自然」と向き合う生き方に触れたくて、記者(34)が大草原に出掛けた。(担当・押川恵理子)

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食料や電気ほぼ自給

助け合う精神根付く

 9月中旬の深夜、モンゴル・ウランバートルに到着。空港に降り立った。

 寒い。この時期、日中の気温は十数度あるが、朝晩は3度近くまで冷え込む。今回は、移動式住居「ゲル」に泊まり、遊牧生活を体験する「モンゴル武者修行ツアー」。参加者は20〜40代の18人で、乗馬や持続可能な暮らし方、国際協力に関心を持つなど参加動機もさまざま。女性が13人と多かった。

 滞在拠点はウランバートルから西に約40キロのツーリストキャンプ。未舗装の道路を行き交う車両の明かりが、工事現場の目立つ都市部を映し出す。氷点下40度まで下がる冬を前に作業を急いでいる。

 車窓から明かりが徐々に消え、こぼれ落ちんばかりの星空とキャンプのスタッフに迎えられた。ゲルは相部屋。木製ベッドは硬かったが、すぐ熟睡した。

 翌朝、ゲルの外に出ると、牛や羊がのんびり草をはんでいた。モンゴル人にとって最も大切な生き物は遊牧に欠かせない馬。修行は乗馬の練習から。先生役は、キャンプを営む遊牧民出身のバギーさん一家や遊牧民ら。

 初めての乗馬。手綱を引かれて馬が進むと、緊張で体がこわばって不安定に。両膝や腕に力が入る。昼食を挟んで約5時間の練習。全身が筋肉痛と嘆いていたら、「膝が痛くなって疲れるのはモンゴル人も同じ」と通訳のアチタさん(30)。忍耐の差か。

 ザー、ザー、「雨じゃ馬に乗れないな」と目覚めた翌朝。ゲルの天窓から見えた空は晴れていて、夢だと気付いた。

 手綱を引く遊牧民の若者が歌を口ずさむと、馬は気持ち良さげ。こちらも風景を眺める余裕が出てきた。午後から野外キャンプの予定だったが、夜の冷え込みが厳しそうと延期。遊牧民は月などを見て翌日の行動を決める。「気候に従う生き方」とバギーさんの長男、アギーさん(27)が解説。テレビやラジオの気象情報を確認し、最近は携帯電話を持つ人も多い。電気は太陽光による自家発電。

 遊牧民のゲルを訪ねると、馬乳を発酵させた馬乳酒でもてなされた。酒というより乳酸飲料。搾りたての馬乳も頂く。やさしい甘さでおいしいが、コップ1杯も飲むと腹を下すそう。天然の整腸剤だ。

 別のゲルでは羊の塩ゆでをごちそうに。脂肪もくどくなく、肉の滋味が引き出されている。家畜をしめるのは男性、料理は女性が担う。羊1頭の価格は約1万5000円で、5年前の約2倍に。肉や乳製品など貴重な食料を惜しみなく振る舞う。厳しい自然の中で隣人と助け合う価値観が根付いているようだ。

 翌日は念願の野外キャンプへ。ゲルを解体し、トラックで運ぶ。参加者は馬に乗って約15キロ移動する。乗馬のこつをつかんで風を切る参加者も増える中、トコトコ進む。道中、手綱を引かれ、“スパルタ教育”で駆け足も体験。馬の跳躍に無心で体を合わせた。ガイドが苦笑するほど、すっかり息が上がった。

 到着すると日暮れ間近。急いでゲルを設営し、暖房や料理用の薪を集める。夕食は羊肉入りのおかゆ。食後はたき火を囲んで酒盛り。両国の遊びや歌合戦を楽しんだ。遊牧民の男性陣は交代で夜通し見張り、外敵から馬を守っていたという。

 草原を後にして、最終日はウランバートル観光。国民の半数近くが住む都市は高層ビルが立ち並び、外国企業が進出する。四方で車の渋滞。交通や環境汚染の対策は喫緊の課題だ。おしゃれな若者が行き交う一方、寒波などで家畜を失った貧しい元遊牧民もいる。

 起きる、馬に乗る、疲れて眠る。草原では、食物のおいしさや冗談に笑い合う楽しさを存分に味わった。「リタイア後は田舎で家畜を飼う暮らしに憧れるモンゴル人も多い」とアギーさん。日本に帰る前に、草原のシンプルな暮らしが、もう恋しくなっていた。

滞在したツーリストキャンプのゲル。夕暮れも美しかった=いずれもモンゴルで

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 モンゴル 南北を中国、ロシアに挟まれた内陸国。約156万平方キロメートルの国土面積に約286万人が暮らす。13世紀にチンギスハンがモンゴル帝国を建国し、アジア、ヨーロッパにまたがる大帝国となるが、17世紀から清朝の統治下に。ソビエト連邦の支援で1924年から社会主義。90年代、東欧革命による民主化の影響が押し寄せた。民主主義に移行した当初、経済は低迷したが、各国の支援や銅など鉱物資源の輸出で成長。2008年の世界金融危機や銅の価格急落などの影響で落ち込んだものの回復し、鉱物資源大国としても注目される。

 ※次回は23日付Love&Sex。20、30代で発症する若年性乳がんを取り上げます。

 

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