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popress【Attention!】注目のトレンドから地元の話題まで
 

新世代のおもてなし 茶の湯 クールに

【マンションの茶室】茶をたてる松村さん。伝統の様式を守りつつ、現代的なセンスが光る=横浜市で

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 茶室へと続く露地でカラフルな菓子を思わせる陶製のオブジェや木陰にひそむ人形の顔にドキリ。にじり口から茶室に入れば、床の間に鎮座するシロクマと目が合う。茶道はお堅い伝統の世界と思っていたが、現代美術を取り入れ、ユニークな茶会を開く新世代の茶人たちがいる。興味がブクブク茶釜の湯のごとくわき立ち、訪ねてきた。(担当・押川恵理子)

 緑に現代美術が映える庭で、こんもり茂る苔(こけ)を眺め、顔を上げれば眼前にビル街。横浜市のマンション5階に茶室はある。

 「同世代がかっこいいと思える空間にしたかった」と話すのは、ここで茶道教室を主宰する松村亮太郎=茶名・宗亮=さん(37)。

 茶室「文彩庵」の小間は漆黒にまとめ、曇りガラスや金属の光沢感などを生かして、陰陽を表現。畳の下に発光ダイオード(LED)の光源があり、一筋の光が床に浮かぶ仕掛けも。現代的な感覚が光る一方、寸法は典型的な四畳半にこだわり、2010年のグッドデザイン賞に選ばれた。同世代の作家と茶道具の共同制作にも取り組む。

【ビル街の庭園】マンションのテラスに造られた茶室へと続く庭園。

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松村さん

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 横浜市で育ち、インターナショナルスクールに通った少年時代は「英語を勉強して、海外の映画を見て、ヒップホップを聴いていた」。

 転機は大学3年。1年間休学し、ヨーロッパを巡った。「日本人としてどう思う」と聞かれるたび戸惑った。自分に「日本」が根付いていなかった。帰国したら伝統文化を学ぼうと決めた。

 会社に勤め、経営学修士(MBA)を取得したころ、父親に茶道の先生を紹介された。茶道具や懐石料理、建築など、知れば知るほど楽しくなり、29歳で裏千家学園茶道専門学校(京都市)に入学。

【作品にドキッ】篠崎裕美子さん作の野だての縁台を飾る陶製のオブジェ

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内田有さん作の床の間に飾られたソーダアイス風のシロクマ。足の部分が溶け出し地球温暖化への懸念を訴える

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 3年間学び、卒業した2009年夏に茶道教室「SHUHALLY」を開いた。名前は千利休が残した心得「守破離(しゅはり)」にちなむ。基本を守り、創意工夫を加え、独自性を確立するという意味。「自分なりの感性でもてなし、コミュニケーションを深める」。茶道の平和な精神を広めることが目標だ。

 「茶団法人 アバンギャルド茶会」と銘打って活動するのは、東京都内のIT企業に勤める近藤俊太郎さん(33)。天文台で星を眺め、研究者の解説を聞く宇宙茶会や、若手作家によるアート茶会など独自の企画を打ち出してきた。

 帰国子女で、大手電機メーカー勤務時代に海外向けの仕事を担当するうち、「日本人の心」を意識。剣道や弓道も考えたが、日本茶が好きだったので茶道を選んだ。

【宇宙服で茶会】アストロノミー茶会で宇宙服の衣装でもてなす近藤さん

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 09年、裏千家の一員として日中の文化交流のため訪中。滞在先のホテルでお茶をたてると、華道や芸能、現代美術に携わる同年代の参加者も興味津々。一方で茶道は「格式が高い」「お金がかかりそう」など敬遠していたと聞かされた。

 帰国後、自宅の茶室で「お茶ごっこ」を開始。前衛美術の関係者も集まり、「道具を手作りしてアバンギャルド茶会を開こう」と盛り上がったのが始まり。都内を中心に100回ほど開いてきた。

 茶道の精神は仕事面にも役立つと感じている。相手を思い、もてなすことで、考える力や創造性が磨かれ、段取りや時間の使い方も上手になる。

 前衛とは、既にあるものを自分なりに解釈し、現代に合わせて表現することと考える。「茶道は総合芸術。いろんな価値観を持つ人とつながり、新しいものを醸成できたら」と願っている。

高木基栄さん作

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斎藤まゆさん作

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道具 自由に、個性的に

 茶人大名と呼ばれた前田利家により、加賀藩の工芸は発展した。そうした歴史や作者が重視される茶道具の世界で、自由に創作する若手も出てきている。

 茶道具は大きさや季節ごとの図柄など決まり事が多いが、金沢市安江町のギャラリーKOGEIまつきちでは陶芸、ガラス、漆の若手にあえて茶道具の概念を持たずに抹茶碗(わん)を創作してもらい、展示。「茶碗は用の美が求められるが、飾ればアート。新しいものが生まれ、若者が茶道に親しむきっかけになれば」と店主の松平修一さん(49)。

 同市瓢箪町で茶道具や古美術品の店を夫妻で営む大村敏子さん(66)は「茶道具の組み合わせは亭主の思いや個性が伝わり、それが、お茶の魅力。若者は現代的な感覚で楽しんで」と話している。

 次回は27日付Love&Sex。イケメンの肉体美を描く会に参加した女性記者の体験記です。

 

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