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popress【Attention!】注目のトレンドから地元の話題まで
 

アート育てる わたしの財布

作品「InMemory」。古総湯を歩き、投影される光に気付く人も

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赤い光を放つスライド機=いずれも石川県加賀市山代温泉で

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 アーティストの創作活動や社会を変える運動に市民が少しずつお金を出し合って支える動きが、国内で広がっている。ユニークなアイデアが形になるまでのワクワク感を出資者も共有でき、提案者は資金を柔軟に使える。この手法を使った現代アートのプロジェクトが、湯煙と情緒の漂う石川県加賀市山代温泉で開かれている。(担当・押川恵理子)

山代温泉住民が支える作品

湯からイメージ 色と光

 日が暮れた湯の街。明治時代の建物を復元した古総湯(こそうゆ)を青、緑、赤、オレンジの光が彩っていく。

 総湯のステンドグラスや日本独特の文化である銭湯から着想した色と光の作品「In Memory」はポーランド出身の現代美術家ミハウ・マルティホビエツさん(25)が制作した。プロジェクトを支えるのは山代温泉の住民ら。3月23日の開幕イベントのPRや運営を手伝い、一口2000円、3000円の協賛金は計26万円集まった。

東出菜代さん

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多くの人 お金出し合う

 アートと地域を結ぶ仕組みを考えたのは山代温泉出身の起業家、東出菜代さん(34)=Office de H(オフィス・ド・アッシュ)代表。企業が多額出資して芸術文化を支えるメセナの市民版「マイクロメセナ」として2012年4月に打ち出した。アイデアを実現するため不特定多数の個人から少額出資を募る「クラウドファンディング」の一種。今回は手数料をとっていないが、通常は支援金の8割をアーティストの活動費、2割を運営の手数料に充てている。

 東出さんは慶応大、仏・ソルボンヌ大で美術史などを学び、パリでキュレーターとして活動。現在は都内を拠点にアートイベントを手掛ける。パリに01〜09年滞在して帰国。「日本は人の目を気にし、体裁にこだわる人が多く、閉塞(へいそく)感があった」と振り返る。

会場となっている古総湯

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夢は「みんなで美術館」

 アートで日本の社会に役立ちたいと考えていた当時、米国のクラウドファンディング「Kickstarter」(キックスターター)を知り、アートに特化したマイクロメセナを思い付いた。「人間の精神の自由さを最も感じさせるのが、アート」と東出さん。夢は大勢の市民とアートコレクションを築く「みんなでつくる美術館」だ。

        ◇  ◇   

 In Memoryは5月5日まで毎日午後7〜10時に鑑賞できる。

クスクスと焼き野菜の昼食を味わうSundayBrunchの参加者=京都市上京区で

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ランチ楽しみ企画選び

京都で試み 人気順に資金得る

 有機農法の野菜などを使った昼食を楽しみながらプレゼンを聞き、支援したい企画に投票する面白い試みも、京都市で始まった。

 この「Sunday Brunch」(サンデーブランチ)は参加費用3000円のうち、昼食代を除いた2000円分が投票数に応じて企画の提案者に分配される。1月20日の初回は20〜60代の約30人が参加した。食事を介したファンディングは米国・シカゴが発祥の地で、日本では初めてとみられる。

 会場は「21世紀型公民館」を掲げる上京区のSocial Kitchen(ソーシャル・キッチン)。市民が学び、実践する場としてカフェやフリースペースを活用している。運営は、デザインや翻訳、食などに関する仕事を手掛けるグループ「hanare」(ハナレ)。

 企画した須川咲子さん(34)は「お金を出す側ともらう側に権力関係が生まれない仕組み」と話す。補助金の煩雑な申請や獲得競争に疲弊しているアーティストらが多い現状にも問題意識を持っていたため、申請書はA4用紙1枚だけ。課題は運営の持続性で6月まで更に2回試行し、市民へのPRや運営の手法を探っていく。

 初回は6件の発表があり、鶏のさばき方を学ぶ企画が最も支持を集めた。食の大切さを伝えたいと提案した大阪府豊能町の桂悠介さん(30)は「しばりがなく使える資金はありがたい。活動に興味を持つ人が増えることもうれしい」と感謝する。

「還元」示せるかが課題

 クラウドファンディング 実現したい企画をインターネットなどを通じて発表し、賛同した不特定多数の個人から資金を調達する仕組み。米国のサイト「Kickstarter」で制作費を募り、アーティストを目指す不法移民の少女を追った映画「Inocente」は2013年のアカデミー賞の短編ドキュメンタリー賞を獲得した。

 日本では東日本大震災の被災地支援などチャリティー色が強い「READYFOR?」、クリエーターが予約販売で制作費を得る「CAMPFIRE」、映画の提案が多い「motion gallery」などが有名。

 市民参加型のアートプロジェクトを多く手掛ける金沢市のNPO法人「金沢アートグミ」の真鍋淳朗理事長(金沢美術工芸大教授)は「若いアーティストが育つ」と歓迎する一方、「利益還元や社会貢献を目に見えるかたちで示せるかが問われる」と指摘する。

 ※次回は13日付Love&Sex。「モテる声」の習得に記者が挑みます。

 

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