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popress【Attention!】注目のトレンドから地元の話題まで
 

野生の命 いただきます。 山梨でニホンジカの試食会

自分たちで料理したシカの骨付き肉にかぶりつく=いずれも山梨県北杜市で

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 「肉食系」と聞いて思い浮かぶのは、恋愛に積極的な男女。だが、そうではなく、実際に野生動物の料理や狩猟に興味を持つ“リアル肉食系”の若者がいる。1月下旬、猟師がとったニホンジカを参加者が自ら解体して味わう企画があると聞き、北陸からはるばる山梨県を訪れた。(担当・押川恵理子)

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震災後「食」考えた

 小雪がちらつき、寒風が吹き付ける駐車場の一角。立派な角を持った、体長120センチほどのオスのニホンジカが台上に横たわっていた。

 ここは、八ケ岳や駒ケ岳に囲まれた自然豊かな山梨県北杜市。シカの解体体験に東京都内の大学生や社会人ら19人が集まった。参加者の大半は20代前半だ。

 今回の企画は、起業支援や震災復興に取り組む都内のNPO法人「エティック」スタッフ田村真菜さん(24)が主催した。東日本大震災後、「食」を見つめ直したのがきっかけ。「災害時に何をどう食べていくか。食用の野草を見分け、魚をさばくことはできる。防災や生きるスキルを高めるため、肉の解体も学びたいと思った」と動機を話す。

手分けしてシカの皮をはぐ参加者

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まず毛皮をはぐ

 シカは地元の猟師が銃で仕留め、血抜きし内臓も取り出した状態。その毛皮をはぐところから始まった。足先に包丁をそっと入れ、切れ目の内側から外側へとはいでいく。次は部位ごとに肉を切り分ける。多くの参加者は初めての体験。最初は恐る恐る触っていた人も徐々に慣れ、肉をできるだけ無駄にせずに切る方法を聞きながら手を動かしていた。

 「包丁の刃を骨に当てながら切って。肉も魚も同じ」。教えるのは北杜市で料理店「さの屋」を営む佐野琢哉さん(32)。先生役は7回目で、2年前から依頼が増えた。参加者には「スーパーに並ぶ前の肉がどんな状態なのか、知りたかった」という人もいたという。

下味をつけた骨付き肉などを焼いていく

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「最初は抵抗感」

 この日参加した都内の私立大4年、馬場加奈子さん(24)は田村さんや狩猟免許を最近取った友人の影響で興味を持った。「最初はシカに触ることにも抵抗感があったけど、やりだすと無心になった。すごい体力を使う。全身全霊、自分の精神と肉体を使って命と向き合っていると感じた」と振り返った。

 寒空の下、作業は3時間ほどかかった。慣れた料理人なら1頭20分でさばくという。すいとん、さっとあぶったモモやロース、下味をつけた骨付き肉と、最後は全員でシカの肉を料理し味わった。脂肪が少ない赤身の肉はかむと滋味が口の中に広がり、おいしさに自然と笑顔が出る。「命をいただいている」。しみじみと参加者がつぶやいた。

ウサギを料理するシェフの舘さん=金沢市本町で

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野菜のように肉にも「旬」

狩猟免許持つ女性シェフ 金沢で来月独立

 金沢市にも、野生動物の肉料理(ジビエ)を得意とし、自ら狩猟もする女性シェフがいる。「ぶどうの木」(同市)に勤める舘里美さん(31)は二〇一〇年に網とわな、一一年に銃の狩猟免許を取得。銃の免許を持つ女性は珍しく、石川県内では三人だけだ。

 都内のフランス料理店やジビエの専門店などで修業を積んだ。狩猟で腹部を撃たれると内臓のにおいが肉に付くため、味が落ちる。仕留めた後は速やかに血を抜き、内臓を取り出して冷やすことが大切。猟師にいろいろと注文していたが、より良質の状態で肉を提供したいと狩猟を始めた。

 「生きているものを仕留める。衝撃的だった」。最初の猟はイノシシ。捕獲後に首を刺したが、一回ではうまくいかなかった。暴れ回った姿を今でも思い出す。

 季節の野菜のように肉にも「旬」がある。ブタは春になると動き回り、赤身の肉が発達。運動量が落ちる冬場は脂肪が付く。シカは逆に夏に脂肪が付き肉に甘みが出るが、冬場は脂肪が落ち、赤身が引き締まるという。

 舘さんは三月初旬に独立し、同市安江町にジビエ中心のフランス料理店「L′OSTAL」(ロスタル)を開業する。「いただく命を一切無駄にしたくない」。狩猟で感じた思いを、料理を通じて伝えていきたいと思っている。

急増するシカ 農業被害深刻

 ニホンジカは近年、全国で急増し農作物を食べられるなどの影響が広がっている。環境省によると、2010年度の捕獲頭数は約36万頭と10年前の15万頭から倍増。農業被害は77億円に上り、森林被害の面積も5700ヘクタールに及ぶ。

 一方、捕獲の担い手は高齢化で減少傾向が進む。猟友会の全国組織「大日本猟友会」は会員の6割を60歳以上が占める。若手を育成するため、12年夏に狩猟学校を試験的に開校。受講者は狩猟の歴史や免許について学び、狩猟見学、解体体験にも取り組んだ。

 狩猟免許を持つ人が捕獲したシカは自家用に料理して食べることが認められているものの、大半は廃棄処分されている。資源として活用しようと北海道や長野県では新鮮なうちに肉を加工する施設を整備し、毛皮の利用なども始まっている。

 ※次回は20日付Love&Sex。性経験に悩むアラサー女性を取り上げます。

 

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