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遠ざかる浜 逆らえぬ力 内灘海岸 離岸流体験ルポ

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 海水浴中の事故の主な原因として危険性が指摘されている離岸流。昨年は全国で12人が死亡・行方不明となり、石川県は最も多い3人が犠牲になった。海岸から沖に向かう流れだというが、具体的にはどのようなものなのか。第九管区海上保安本部(新潟市)の実態調査に合わせ、沢井秀之記者(24)が離岸流を体験した。(担当・沢井秀之)

目に見えない怖さ

30秒で60メートル近くも

脱出は岸と平行に

 さざ波の音が心地よい内灘海岸(石川県内灘町)。広い砂浜に穏やかな波が寄せる場所だが、実は昨年、離岸流が原因とみられる事故で2人が命を落としている。重体事故も相次いだため、海保は海水浴シーズン前の5月28日に発生状況を探る調査を実施。記者は危険性を実感する「体験調査」に参加した。

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 離岸流は、打ち寄せて行き場を失った波が、まとまって岸から沖に向かう流れ。岸や海底の地形によって1カ所に集中するため、速く強い流れとなる。怖いのは、見た目ではどこで離岸流が起きているのか分かりづらいこと。調査では発生場所を特定するため、環境に影響しない緑色の着色料を沿岸にまいた。

 1時間ほどすると、緑色の帯が沖の方に15メートルほど延びた。どうやら離岸流が発生しているようだ。灰色のウエットスーツに身を包んで浮力のあるチューブを腹に巻き、恐る恐る海に入った。

 案内役を務めてくれるのは、同本部新潟航空基地所属の機動救難士の渡辺翼さん(29)だ。沖を眺めれば、ゴムボートや巡視艇が待機し、安全対策が張りめぐらされている。何重にも対策をしないと危ないのか。「もし、海水浴に来て流されたら…」。そう思うとぞっとする。

海上に広がる緑色の着色材(第九管区海上保安本部提供)=内灘海岸で

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 渡辺さんに導かれながら流れを探っていると、わずかに体が沖の方に押し流される感覚を覚えた。もしかして、これが離岸流なのか? 思ったより弱い。「こんな感じなんですか」などと拍子抜けしていると、渡辺さんにくぎを刺された。「もっと勢いが強くなると、『怖い』という感じになりますよ」

 強いときは、秒速2メートルほどの速さが出るという離岸流。わずか30秒で60メートル近く流されてしまう計算になる。夢中で泳いでいるうちに気付けば沖まで流されていた、なんていう事態になりかねない。この日は本格的な離岸流は発生しなかったが、恐ろしさの一端を垣間見ることはできた。

 離岸流に遭ったらどうするか。金沢海上保安部の山下敏幸警備救難課長(51)は「慌てて岸に戻ろうと流れに逆らって泳ぐと、いたずらに体力を消耗するだけ。それで命を落とすケースも多い」と指摘。「まずは離岸流の存在を知りパニックに陥らないようにすることが大事」と強調する。

 ポイントは、帯状の流れから脱出することだという。「体力に自信がある場合は、岸と平行に泳いで流れから逃れる」。離岸流は沖に行くと弱まることから、「泳ぎに自信がない人は、一旦沖まで身を任せた後、岸に打ち寄せる流れに乗って戻ってくるといい」と呼び掛けた。

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構造物の近く注意

沖に行くほど弱く

 離岸流が発生しやすい場所は、正確には把握されていない。調査に立ち会った第九管区海上保安本部海洋情報部海洋調査課の高橋渡主任海洋調査官によると、「風向きや波の大きさによって、発生場所はまちまち」だという。

 ただ、地形的に発生しやすいとされる場所はある。防波堤や防潮堤、打ち寄せる波の力を弱めるために沖合に造られた「離岸堤」など人工構造物が近くにある海岸だ。

 離岸流の幅は十〜三十メートルほどで、長さは数十メートルから数百メートルに及ぶ。岸に近ければ近いほど流れは速く、沖になると弱まって拡散するのが特徴だ。

 秒速二メートルにも達するという流れは、水泳の男子百メートル自由形の世界記録と同じくらいの速さ。高橋さんは「事前に発生しやすい場所を確認した上で、近寄らないでほしい」と呼び掛けた。

 

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