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popress【Attention!】注目のトレンドから地元の話題まで
 

千枚田なう。 ポプレス米への道 農業遺産で自分も育つ 編集部員の稲作奮闘記 〜前編〜 

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 日本海に面した斜面で、無数の小さな田が幾何学模様を描く石川県輪島市の「白米(しろよね)千枚田」。機械に頼らず、人の手で守られてきた景観は、国連食糧農業機関(FAO)の世界農業遺産に登録された「能登の里山里海」の象徴になっている。popress編集部は今春から、この一角を借りて米作りを始めた。若手記者らが稲作の苦労を味わいつつ、千枚田の魅力をお伝えする。(メーン担当・倉形友理、佐藤航 サブ担当・松本浩司)

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慣れぬくわを手に

 階段状の田んぼが波打ち際のすぐ近くまで連なり、青い海と鮮やかなコントラストを描く。寄せては返す穏やかな波の音、のどかなトンビの鳴き声。よく晴れた春の空の下、ほおをなでる海風が何とも心地いい。

 4月8日、popress編集部は初めて千枚田を訪れた。足元の田は前年の収穫を経て、冬の間に土が硬くなっている。記念すべき最初の作業は「田起こし」。まずは土をほぐし、稲の根がしっかり張れる状態にしなければならない。

 これから秋までの半年間、この田んぼの世話をすることになる。果たしておいしいお米ができるだろうか。慣れないくわを持つ手にも思わず力が入った。

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絶景のマイ田んぼ

 きっかけは昨年6月、「能登の里山里海」がFAOの「世界重要農業資産システム」(GIAHS=通称・世界農業遺産)に登録されたことだった。世界的に注目される能登の魅力を肌で感じてみたい。そんなことを考えていた時、「千枚田オーナー制度」なるものを知った。

 国指定名勝の白米千枚田だが、近年は所有者の高齢化などで維持が難しくなっている。そこで、多くの人に関わってもらう狙いで2007年に始まったのがオーナー制度だ。春から秋の期間限定で田んぼのオーナーを募り、米作りを体験してもらう仕組み。早速、編集部として申し込んだ。

 休耕田も含めて1004枚ある千枚田のうち、編集部は海に最も近い場所の「マイ田んぼ」を割り当てられた。千枚田の中ではかなり広く、目測で100平方メートルくらいはありそう。日本海の向こうに七ツ島を望める絶好のロケーションだ。

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実りの秋を夢見て

 農作業の経験など全くない若手記者たちにとって、作業は悪戦苦闘の連続だった。あぜに泥を塗って補強する「あぜ塗り」の作業では、ぬかるみを歩くだけで体力を使い果たし、日ごろの運動不足を痛感。素足で挑んだ田植えでは、田んぼで泳ぐオタマジャクシの多さにびっくり。ぬるっとして、意外に心地よい土の感触を楽しみながら苗を植えることができた。

 農作業を指導してくれる「白米千枚田愛耕会」の堂前助之新会長(68)は「千枚田の米にはミネラルが含まれるから、おいしくなるよ」と教えてくれた。田植え後の稲は水を吸い、すくすく育ってくれるという。

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 夏場は草刈りに汗を流し、いよいよ9月に稲刈りを体験。稲を天日干しする「はざ掛け」や落ち穂拾いを済ませると、オーナーとしての役目は終わる。丹精して育てれば、それだけお米はおいしくなるはず。これからの作業も手は抜けない。

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 草刈りや収穫など夏以降の作業の様子は、秋ごろの「popress」でご紹介します。各作業の短信も随時掲載する予定です。

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土が硬すぎて…

 米作りの第一歩。土をほぐして酸素を送り込むことで、微生物が活性化して良い土になるという。おいしい米になるか否かは、この作業にかかっていると言っても過言ではない。

 本紙地方版のレイアウトを担当する河崎裕介(23)にとって、田起こしは想像以上の重労働だった。「土が硬くて、くわが入らないんです…」。稲作の厳しさに触れ、あらためてお米の大切さを痛感したようだった。

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左官仕事のよう

 冬の間に傷んだあぜに泥を塗り、水が漏らないよう修復するのが「あぜ塗り」。コツはくわ先の平らな部分を使って、左官仕事のように泥をのばすことだ。美しく仕上げるには相当な技が要る。

 紙面デザインを担う井上彰吾(32)が注目したのは、愛耕会の人たちの動き。くわ先で泥を取り、素早くのばしていく。「スムーズな所作に圧倒された」。絹豆腐を思わせる滑らかな仕上がりに目を奪われていた。

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もっと植えたい

 米作り前半戦のメーンイベントといえば田植え作業。景観をより美しくするためにも、苗を均等に植えなければならない。あらかじめ泥の表面に付けられた線に沿って、等間隔に苗を並べていく。

 最も精力的に動いたのは、近ごろ名古屋から北陸に転勤してきた記者・日下部弘太(29)。「せっかく来たんだから、もっと植えたい」と繰り返し、隣近所の田植えも手伝っていた。

 白米千枚田 日本海に面した国指定名勝の棚田。約4万平方メートルの広さがある。江戸時代初期にはすでに稲作が営まれていたとみられ、1638(寛永15)年には「谷山用水」も造成された。急斜面に機械が入れないこともあり、近年は耕作の担い手が減少。地元の耕作者は3人まで減っている。

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