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popress【Alternative】サブカルチャーなど、新聞らしからぬ?話題
 

不器用上等 男の針仕事 押忍! 手芸部

記者が体験入部

雑然としたワークショップ会場はとってもユニーク。参加者に手順を説明する部長の石沢さん(中)=いずれも金沢市の金沢21世紀美術館で

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 「手芸は器用な女性の趣味」というイメージを覆すべく、誰もが親しめる手芸を提案し続ける集団がいる。ファッションデザイナーの石沢彰一部長(48)率いる「押忍(おっす)!手芸部」。技術は要らない、楽しめばいい−。そんな部の魅力を探るため、ボタン付け一つできない不器用記者・佐藤航(28)が、金沢21世紀美術館で開かれたワークショップに潜入してみた。

「くっつけばいいんだよ」

 「今日は歩く手袋を作ります。難しく考えないでね」

 ワークショップの初日、石沢部長から与えられた課題はあまりにシンプルだった。手袋の左右いずれかに綿を詰めて頭を作り、残る一方は足に見立てて頭と縫い合わせる。足の方に手を入れて指を動かせば、5本足で歩く人形「て・ぶく郎」の完成だという。

 大まかなイメージは伝わったものの、手順や縫い方の指示は一切なし。目はボタンで表現するらしいが、そもそも付け方が分からない。たまらず部長に尋ねると、こんなアドバイスが返ってきた。「くっつけばいいんだよ。針で糸を通して布に付けばいいから」

押忍!手芸部教訓

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工作遊びの感覚

 ここは、金沢21世紀美術館で開かれている「押忍!手芸部」とクリエーター・豊嶋秀樹さんによる展覧会「自画大絶賛(仮)」の一角。部室に見立てた展示室で約20人(記者以外は全員女性)が集まり、16日から3日連続のワークショップに臨んでいた。

 「不器用上等」を掲げるだけあって、並の手芸教室とはまるで違う。初日の「て・ぶく郎」も、めちゃくちゃな手縫いで仕上げたにも関わらず、部長は「それでいいんだよ」と褒めてくれた。縫い針に触るのは中学校の家庭科以来だけど、やればできるかも−。そんな心持ちにさせてくれる気楽さがある。

 2日目に作った筒状の人形「タベル」も、手芸部らしさがあふれた一品だった。材料の靴下を取り出した部長は「これは足に履くものじゃない」と断言。あっけに取られる参加者をよそに、「手にはめれば手袋にもなる。人形も作れる」と続ける。先入観で使い道を狭めるのは損。発想次第で何にでもなる、ということなんだろう。

慣れない手つきで作品作りに挑む佐藤記者

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    ◇   ◇    

 ファッションデザイナーとして活躍する部長が都内で手芸部を立ち上げたのは2003年12月。不器用ぞろいの飲み友達を集め、缶ビール片手に手芸をさせたのが始まりだった。「手芸というと細かい作業やルールがあって、女性の趣味という印象があった。もう少し『男前』にやってもいいんじゃないか、ってね」

 男7人で始まった手芸部はその後、全国各地でワークショップを展開。「参加者は部員ということにしている」といい、今や部員は数千人に上るという。

初日に作った「て・ぶく郎」(右)と2日目に作った筒状の人形「タベル」。奥は綿で作ったラクダ

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 金沢のワークショップ最終日は、最初の部活で作ったという「巻きぐるみ」に挑んだ。綿を動物やキャラクターの形に整え、毛糸を巻き付けて仕上げるだけだが、「人によって大きさも形も違ってくる。手芸部っぽい作品」と部長は言う。

 無心に綿をちぎり、丸めながら形を作っていく。やがて込み上げてくる感覚は、幼いころ味わった工作遊びの楽しさだ。馬を作ろうと思ったが、予想外に首が長くなったのでラクダにする。そんな行き当たりばったりの変更すら愉快な、手芸のひとときだった。

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「技術大切じゃない」

石沢部長に聞く

 型にはまらない天衣無縫な活動を続ける「押忍!手芸部」。その神髄とは何か。石沢部長を直撃した。

 −ワークショップで細かい指示を出さないのはなぜ?

 針と糸で縫い合わせればいい、という考えだから。学校で習った「波縫い」や「返し縫い」とかの技術にばっかりこだわる人がいるけど、そういうことが大切なんじゃない。大切なのはどんな形にするか、ということ。

素材を選び、作業に没頭する参加者

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 −最近は商品の包装を再利用したものなど、エコな作品も多いですね。

 そういうものを、何も考えずに捨てるのは格好悪いでしょ。そもそも最初から「ごみ」と名付けられていたものはない。捨てる前に何か違うものに作り替えて、もう一度ステージに立たせてやる、っていう意識が格好いいとわしは思う。

 −ワークショップのテーマは毎回違うんですか。

 前もって決めちゃうと面白くない。ワークショップをやる季節だけでなく、その時期に何か面白いことが起きたりすれば、それにちなんだテーマを選ぼうと思っている。

押忍!手芸部と豊嶋秀樹「自画大絶賛(仮)」 

石沢部長が作った帽子

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 手芸部が美術館で開く初の作品展。部員たちが作った人形や洋服など、伸びやかで個性的な作品が並ぶ。空間構成はクリエーターの豊嶋秀樹さんが担当。会場内に「部室」を設け、等身大の部活動の様子も紹介している。

 会期 2012年3月20日まで。3月16〜18日にも3日連続のワークショップを開催。

 会場 金沢21世紀美術館 展示室7〜10

 料金 一般1000円/大学生800円/小中高生400円/65歳以上800円(いずれも同時開催のモニーク・フリードマン展と共通閲覧券)

 

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