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popress【Alternative】サブカルチャーなど、新聞らしからぬ?話題
 

城をたしなむ

金沢城石川門の枡形内。「一の門」(奥)と「二の門」(左)、続櫓で囲まれた堅固な構造だ

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 城めぐりが静かなブーム。「城」というと、姫路城や名古屋城のように豪壮華麗な白亜の天守を想像するかもしれないが、城の魅力は天守だけにあらず。こけむした石垣や、草木に埋もれた堀にだって歴史ロマンが宿っているのだ。石川、富山県に史実通りの天守を持った城は残っていないものの、見どころは豊富。金沢城(金沢市)と増山城(富山県砺波市)を例に、北陸中日新聞編集局きっての城マニア、渡辺武(33)がちょっとディープな城めぐりの世界を紹介する。(メーン担当・渡辺武、サブ担当・永井響太、奥野斐)

石垣の積み方も必見

 金沢城といえば、国指定重要文化財の石川門が知られている。観光客にも人気の記念撮影スポットだ。

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 兼六園に面した「一の門」をくぐると90度右に折れ、今度は厳重な「二の門」。2層2階建ての石川櫓(やぐら)と、長屋状の続櫓(つづきやぐら)で結ばれ、周囲を「コの字」形に囲まれていることに気付くだろう。

 こうした構造は「枡形(ますがた)」といい、殺到した敵兵に弓や鉄砲で集中攻撃するための仕掛け。四方八方から狙われていると想像してみれば、優美な石川門が戦闘的に見えてくる。

 石川門を過ぎると三の丸。史実に基づいて復元された河北門と五十間長屋が抜群の存在感を誇っている。海鼠塀(なまこべい)や瓦屋根が連続する様は時代劇のセットのようで、一般的な「お城らしさ」を味わえる一角だ。

 ここで満足してしまいそうだが、ディープな城めぐりはここからが本番。石垣の魅力を忘れてはいけない。

 自然石や粗割りしただけの石を積み上げた「野面(のづら)積み」=<1>、表面を平たく削り、石同士の隙間も少なくした「打ち込みハギ」=<2>。さらに隙間なくブロック状に加工した「切り込みハギ」=<3>。安土桃山時代から江戸時代初期にわたって築城された金沢城には、こうした石垣の“進化の過程”が豊富に残されている。中には縦長の石を大胆に使った「色紙短冊積み」=<4>=など珍しい積み方もあり、まるで石垣の博物館だ。

 建物の美しさに酔うもよし、石垣の質感をめでるもよし。金沢城は、ビギナーからマニアまで楽しめる城といえる。

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建物なくても想像で

 漆喰(しっくい)の壁に瓦屋根が乗り、石垣で固められた金沢城のような城を近世城郭という。ビギナーでもとっつきやすいが、これに飽き足らなければ中世城郭をお薦めしたい。

 中世城郭とは、石垣技術が未発達だった時代に、自然の地形を利用して築かれた「土の城」。増山城はその典型で、2009年に国史跡に指定されたが、一見すると普通の山だ。草木が生い茂り、一般的な城のイメージとはほど遠い。

増山城

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 しかし、奥へ進むと道がクランク状に折れ曲がっていたり、斜面を削って平らにした場所があったり、人の手を加えられた形跡があちこちに見つかる。尾根を分断した「堀切」や、土を堤防のように盛った「土塁」、斜面に対して縦方向に掘った「竪(たて)堀」なども確認できる。

 建物は残っていないが、城めぐりで何より大切なのは想像力。何気ない凸凹に守り手の意思が感じられたら、マニアの領域だ。

鳥越城

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 この種の城は全国各地に無数にある。大半は山の中だが、鳥越城(石川県白山市)のように見やすく整備されたケースも増えているので、ピクニック感覚での“城攻め”もいい。ただし、季節や場所によっては防虫やクマよけの備えもお忘れなく。

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お城大好き 落語家 春風亭昇太さんに聞く

天守だけが城じゃない!

 城マニアとしても知られる落語家の春風亭昇太さんに、城めぐりの魅力などを聞いた。

−城めぐりで意識していることは

 行きは攻め手の気持ちで、帰りは守り手の気持ちを心掛けると構造上の魅力が分かってきます。中世の山城は慣れないと分かりにくいので、初心者は整備が進んだ城がお薦めですよ。

−各地の城をめぐっていますが、石川、富山では

堅田城

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 石川では、金沢市にある堅田(かただ)城という山城。以前、仕事で来た際に空き時間に行きました。一説では一向一揆の城らしく、簡素な城なのかなと思って行ったんですが、いやいや、これがなかなか素晴らしい。堀切とか畝(うね)状竪堀もよく残っていましたね。整備もされ、立派な山城です。

安田城

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 富山では安田城(富山市)。あそこもきれいに整備してあります。小さな城ですが、陣城のようで、逆にそれが迫力ありますね。

七尾城

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 行きたいのはやっぱり七尾城。(上杉家と能登畠山家による)大激戦があった城ですが、遺構も素晴らしく残っていますし。日本でも五本指に入る山城ではないかと。

−城めぐりの面白さとは

 「城といえば天守」という概念を捨ててほしい。天守がある城の方が実は異形。本当に昔から残っている天守は日本に十二しかなく、それ以外は現代になって造られたものですから。天守に登って下りておしまいという人が多いけど、もったいない。城は天守までの過程が大事。城の「仕組み」「たくらみ」を感じてほしいんです。

 しゅんぷうてい・しょうた 1959(昭和34)年静岡市(旧清水市)出身。82年に春風亭柳昇に入門し、92年に真打ち昇進。2000年、文化庁芸術祭大賞受賞。日本テレビ系「笑点」に大喜利レギュラーとして出演しているほか、城マニアでも知られる。著書に「城あるきのススメ」(小学館)。

 

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