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popress【Alternative】サブカルチャーなど、新聞らしからぬ?話題
 

元ホームレス小坂さん直伝 未来(あす)を生きる秘術

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 職を失ったりして、路上生活を余儀なくされるホームレス。不況で不安定な雇用情勢が続き、誰もが他人事だとは言い切れない。家は失わないまでも蓄えが少なく、日々の暮らしに困る人も多い。そんな時代、本当に困ったときに、彼らの“サバイバル術”が役立つことはないのか。冬の寒さの厳しい金沢で約四年間、路上暮らしを続けた元ホームレス男性を取材し、その知恵を学んだ。(担当・中平雄大)

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1 金沢の冬を乗り切るには

新聞が一番効果的

 記録的な大雪となっている今年は特にそうだが、冬の厳しさをどう乗り切るか。十分な睡眠を取れないだけではすまず、一歩間違えれば凍死する恐れもある。

 最も安上がりに暖を取るには? 試行錯誤の結果、導き出した答えは「新聞」だった。

 まず、試したのが食品などを包むラップ。「密閉すれば体温を逃さない」と考え、100円ショップで購入して体に巻いてみたが「身動きがとれなくて息苦しかった」。その後、服を多く着込んで寝てみたものの、さほど効果はなかった。

 そして、目に留まったのが路上に捨てられている新聞。「広げた上に寝転がり、体に掛けて使うだけ。1枚でも十分」。ほかと比べて断然、暖かかった。しかも朝刊1部なら段ボールより持ち運びが簡単。「おかげでこの4年間は体調を崩したことはない」という。

観光客ら通行人の会話、近江町かいわいの様子…。小坂さんのツイッターからは、路上に立ち続けることでしか感じられない街並み、社会の変化が見えてくる。アカウントは@kosakayasuyuki

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2 ネットをうまく活用

物産展の情報収集

 生きていく上で欠かせないのが食べ物の確保。都会に比べれば少ないが、無償で配る支援団体や個人もいる。しかしその存在を知らず、たどり着けないことがあるのも実情だ。

 そこで小坂さんが利用したのがインターネット。家を失ってもノートパソコンだけは手放さなかった。全国チェーンのコーヒー店の多くでは無線LANが無料で使える。小坂さんにとって「ネットは生活情報を得る“命綱”だった」という。

 無一文で食べ物に困った際、やむを得ず頼ったのが、デパートやスーパーが開催する物産展での試食や試供品の無料配布だ。あまり知られていないかもしれないが、これらの情報は開催場所のホームページにしっかり掲載されている。「『物産展』『試食』などのキーワードを入れて検索すれば、けっこう出てくる」

真新しい自転車も、実はビッグイシューを買うお客さんから無料でもらった。アパートから“職場”の繁華街まで、毎日「通勤」に使っている自慢の「愛車」だ

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 服や体を毎日公園の水道で洗い、身なりを清潔にしていれば気兼ねなく店にも入れる。小坂さんは「悪いとは思いながらも、ネットと試食に助けられた」と振り返った。店の販売促進のための試食は、図らずも路上生活者のセーフティネットにもなっていた。

3 正確な天気予報

雲の流れ 目で確認

 「弁当忘れても、傘忘れるな」といわれるほど、北陸は天気が崩れやすい。徒歩か自転車で移動し、野外で体を洗い、寝るホームレスにとっては、天気予報は生死にかかわる重要な情報だ。それだけに、より深く、先の天気を読めるよう努力を重ねた。

 一般的に天気予報でチェックする項目といえば、きょうか明日のお天気マーク、降水確率。だが、小坂さんはさらに突っ込む。湿度や風向き、天気図の雲の動き…。「これらの情報もネットなどで簡単に手に入る」。検索サイト「Yahoo!」の天気情報のチェックは欠かせない。

【左】路上でビッグイシューを販売していると、通行人やお客さんから食料や服、カイロなどをいただくことも。ミカンもお客さんからのおすそ分けだ【右】100円ショップで2年前に購入した手提げ袋。出かける際は必ず持ち歩く。毎日使い込んでいたおかげでボロボロだが、使える間はしっかり使い切る

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 それらをこまめに確認しながら、目に見える雲の流れも確認しているうちに、時間帯ごとの予想ができるようになってきた。「求職のために行くハローワークも、予想に合わせて時間をずらしたりする」という。

 情報をただ受け取るだけでなく、自らの判断基準を持つ。小坂さんが路上生活で身に付けた力は、すべての現代人に求められていることなのかもしれない。

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 小坂保行さん(43) 金沢市出身。2006年春ごろまで印刷会社勤めをしていたが、病気のため退職。定職に就けず路上生活に転じた。失業手当や生活保護は受給していない。無一文生活から脱しようと、昨年から路上生活者を支援する雑誌「ビッグイシュー」の販売員となり、毎日街頭に立ち続ける。人の良さと真面目な仕事ぶりで、今では生活物資も支援してくれる固定客も付いた。

 パソコンを使いこなし、ツイッターで路上生活の近況なども情報発信している。最近アパートへの入居が決まり、ホームレスを脱することはできたものの、現在も就職活動中。

 

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