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馬と合う!? 音楽セラピー 金沢の専門学校「触れ合い通じて脳機能改善」

北山吉明さん(左)の歌と馬の動きに合わせ、リズムをとる学生たち=金沢市此花町で

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 理学療法士と作業療法士を養成する専門学校「金沢リハビリテーションアカデミー」(金沢市清川町)が、馬と音楽を組み合わせたリハビリの確立を目指している。全国でも新しい試みで、視聴覚に働き掛けて高齢者らの認知機能を改善させる。狙いはもう一つ。引退後の競走馬に、第二の居場所を提供したいという。(押川恵理子)

 九月下旬、JR金沢駅近くの此花町緑地で、馬が歩み、スポーツ医学が専門の医師で声楽家の北山吉明さん(71)が歌っていた。馬の歩みによって、ワルツやタンゴなど曲を変える。歩く「常歩(なみあし)」は四拍子、やや速く走る「駆歩(かけあし)」は三拍子。約四十人の学生が患者の「体験」として、馬の動きを見ながら、歌に合わせて手拍子をとった。

 北山さんは「馬との触れ合いや音楽を楽しみ、体を動かすことで、高齢者の脳機能を保つことを目指しています」と説明した。馬の動きで「視覚」、音楽で「聴覚」、手拍子で「運動に関わる脳の部位」を、活性化させるという。

 加藤謙一校長(57)は「二つ以上の動作を行うため、認知症予防につながるのでは」と話す。二〇一六年から取り組み始め、二年かけ、乗馬インストラクターの教員が学校の馬(雄、五歳)をリハビリ用に調教してきた。今後、このリハビリによる高次脳機能障害を改善させる効果を検証する。脳を損傷し、記憶力低下や性格の変化を起こす高次脳機能障害の患者は、厚生労働省の一六年の推計で、全国で三十二万人いる。

引退後の居場所にも

 このリハビリが定着すれば、引退した競走馬の活用にもつながる。日本中央競馬会(JRA)によると、毎年、七千頭前後の競走馬が生産されるが、長く活躍できる馬は一握りだ。引退後は観光施設やホースセラピーの施設などで暮らすが、人と馬の共生を目指す一般財団法人「ホースコミュニティ」(滋賀県)の矢野孝市郎事務局長は「競走馬として生まれてきたのに、天寿を全うできず、食肉処理が多いと聞く」と語る。

 サラブレッドの多くは気性が激しく、セラピーなどに適さないという指摘もあるが、同校常務理事の山本博昭さん(62)は「馬と触れ合える場を各地につくれるように、一石を投じたい」と話している。

新リハビリ 確立へ期待

−専門家−

 ホースセラピーに詳しい東京農業大の川嶋舟(しゅう)准教授(動物介在療法学)は「馬と音楽を組み合わせるリハビリは、自分の動作と視覚情報を合わせる訓練になるので、脳のいろんな機能を活性化させる可能性がある」と語る。「見ること」「聞くこと」のどちらが得意な状態にあるかを判断でき、生活する上での支援方法を見つけることにも役立ちそうだという。

 馬を活用したホースセラピーの歴史は定かではないが、日本では一九八〇年ごろ始まったようだ。川嶋氏によると、身体機能の回復、脳の活性化、自律神経に作用して落ち着かせるなどの効果が論文で報告されている。

 川嶋氏は「人が馬に乗るためには、信頼が必要。また、馬は『群れ社会』の動物なので、関係性のつくり方が人間に近いことも効果を生む理由の一つ」と話す。現在、年に数回だけ実施する団体を含めて二百〜三百団体がホースセラピーを行っているが、医師らが加わり、馬と音楽と組み合わせて行うリハビリは全国でも初の試みとみられる。

 

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