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亡き妻思い 塩で描く春 金沢の芸術家・山本基さん 

塩で作品を制作する山本基さん=金沢市石引で

写真

15日から公開 がん患者らのサロン

 塩を使って芸術作品をつくるアーティストの山本基(もとい)さん(52)=金沢市=が、がん患者や家族が交流するサロン「元ちゃんハウス」(同市石引)で新作「紫の季節」を制作している。モチーフは、二年前に乳がんで亡くなった妻の敦子さん=享年四十三=と眺めたモクレン。「思い出して悲しくなり、涙が出ることもあるが、思い出せることがうれしい」。十五日から公開する。(押川恵理子)

 鮮やかなピンクのシートを張った床は照明で赤紫色に見える。その床一面(約百平方メートル)に、油差しから真っ白な塩を注いで、描いていく。銀河のような天の川のような。人の細胞のようにも見えるその渦を形作る無数の泡、それぞれが「ささいな日常の思い出」を表しているという。銀河の中に浮かび上がるのは、モクレンの大輪だ。

 金沢美術工芸大(美術学科絵画専攻)に入学し、芸術学専攻の敦子さんと出会った。二人は同級生。学生時代、キャンパスに近い石引の周辺で一緒に暮らし、「どこを歩いても思い出がある」。樹齢百年以上のサラサモクレンもその一つ。金沢聖ヨハネ教会の前に立っている。赤紫色の大輪の花が、毎春の楽しみだった。

 二人で見た映画、車内で食べたパン…。ささいな出来事がふとよみがえるたび、書き留めたり録音したりしてきた。いま、在りし日の敦子さんを思い出しながら、静かに塩で描いている。

 清めや浄化の意味を持つ塩を用いた作品は、妹が脳腫瘍で一九九四年に亡くなったのを機に作り始めた。大切な人との思い出を忘れないために。そんな個人的な思いを込めた作品だが、国内外で展覧会を開き、来場した人の声を聞くうち感じるようになった。「それが、普遍性を持つんだ」と。

 元ちゃんハウスで描くのは、同じような場に山本さんも助けられたから。敦子さんは生前、「石川県がん安心生活サポートハウスはなうめ」(同市本多町)に通っていた。「よい時間を過ごすにはどうしたらいいか、妻の選択を手助けしてくれた」と感謝している。

 今回の作品について、「紫色のフジやスミレからイメージした形も描いています。春に感じるような勇気や希望を持ち帰っていただきたい。少しでも明るく、前向きな気持ちで過ごしてもらえたら」と話す。

 展示は金沢21世紀美術館企画の展覧会「変容する家」の一環。十一月四日までの午前十時〜午後五時。月曜休み(祝日の場合は翌日休み)。入場は無料。最終日に作品を関係者と壊し、使った塩はそれぞれが持ち帰って海に流す。

 

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