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公園がイナゴの楽園に 津幡の一角 大量発生

【左】人が近づき、飛び交うイナゴの群れ【右】フェンスにしがみついて休むイナゴ=いずれも石川県津幡町のあがた公園で(篠原麻希撮影)

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 イナゴといえば、夏から秋にかけての田んぼの風物詩。それが、石川県津幡町加茂の「あがた公園」になぜか例年、大群が出現している。アスレチック遊具や噴水を備えた普通の公園に見えるが、茂みを歩くと、四方八方に跳ね回る。なぜこんなにすみ着いているのだろう。(伊藤隆平)

人と共存 人工環境 外敵少なく?

 子どもたちでにぎわう中心エリアの周囲に、高さ二十センチほどの茂みが点在している。ここがイナゴたちの「楽園」だ。よく見ると木の幹やトイレの外壁、公園と隣接する民家の壁やフェンスにもいる。

 町の中心部から北西に約二キロ。公園の周りには田んぼが広がる。農薬の影響もあって、国内各地でイナゴは減っているが、「ここらはたくさんいるよ」。公園の隣でコメ農家を営む橋本光男さん(65)がにっこり笑って教えてくれた。

 橋本さんらによると、一帯の地形は平らなため、風通しが良く、イネが害虫や病気の被害に遭いにくい。農薬を使っていない田んぼが多く、イネの葉を餌とするイナゴにとってすみやすいらしい。「風に乗って公園へ移動しているんじゃないかな」と橋本さんは推測する。確かに、田んぼに近い茂みほど数は多い。

 大量発生すると農家は困るが、周辺で深刻な被害は無いという。個体数が多すぎ、餌場が手狭になって公園に移りすんだわけではなさそうだ。ではなぜ、餌が豊富な田んぼではなく公園に居ついているのか−。

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 「公園は外敵が少ないのではないでしょうか」。石川県ふれあい昆虫館(同県白山市)の学芸員石川卓弥さん(45)は分析する。公園では、イナゴを捕食する鳥が人を警戒して近寄らず、自然の中ならいるカマキリやクモが少ないとみられる。「それと、たまたまイナゴが好むイネ科の植物が生えているのかもしれない」

 すみ心地を気に入ったイナゴが卵を産み、生まれてきた幼虫が天敵に狙われることなく安全に育つ。そして、また卵を産む。石川さんは、そういった繁殖のサイクルができている可能性も指摘する。

 ただ、橋本さんも石川さんも、実際に「移住」しているところを見たわけではない。石川さんは「公園の埋め立てに使われた土の中に卵が入っていたとも考えられる」と話す。

 町都市建設課によると、公園は田んぼを埋め立て、二〇一六年三月に完成した。土は町内の山中から運んだ。土に卵が含まれ、ふ化し、繁殖したとの説も、否定できなさそうだ。

 全国を見ると、公園にイナゴがすみ着いている例はほかにもある。

 昆虫生態学が専門の明星大非常勤講師、田口正男さん(64)によると、相模原市緑区の相模原北公園にも、ショウブ田に数百匹がいる。造成に使われた土に卵が交じっていて、ふ化した幼虫が、外敵の少ない環境で育ったとみられる。

 田口さんは「生物多様性の新しい形」と語る。小鳥がカラスなどを避け、民家の軒先に巣を作るようになった生態の変化に似ているという。「人とイナゴの共存です。人がいることで、イナゴの生きる環境が保たれている」

 三十日には草刈りが予定されている。それ以降は数が減りそうだ。

 イナゴ イナゴ属のバッタの総称。漢字で稲子とも書く。体長3センチほどで緑色。目から背中にかけて黒い線が走る。北海道から沖縄までの日本各地に生息し、つくだ煮、炒め物、てんぷらとして食べられることもある。

 

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