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好況の陰 労災増 17年石川県内 大幅16・8%↑

飲食 1カ月ぶっ通し勤務/介護 1人で10人担当も

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 北陸新幹線効果で好況に沸く石川県。だがその陰で、全国屈指の求人倍率と表裏一体の人手不足の深刻な影響が出始めている。石川県では昨年、建設業や飲食業など労働力不足の現場で労災が相次ぎ、過去最少だった前年から大幅増に転じた。さらには辞めたいと申し出ても、辞めさせてもらえないケースが増えている。(蓮野亜耶)

人手不足深刻

 「人手不足のために一人で何役もこなす日々。一カ月ぶっ通しで働いた」

 昨夏、県内の飲食店で働いていた三十代の男性は勤務中に転倒し、骨折。上司の口癖は「人件費を削れ」。その言葉通り、店では一日の予想売上金のうち人件費の割合が低く抑えられており、アルバイトを減らすしかなかった。他の社員は他店舗と掛け持ち。そんな中、男性は手間のかかるディナーのテーブルセッティングや予約確認、食器洗いを一人でこなした。疲れから意識が遠のき、足を滑らせて床に体を打ちつけ、肋骨(ろっこつ)が折れた。

 金沢市内の介護施設で働いていた五十代の男性は昨年十一月、入所者の入浴の世話後、転倒して肩を痛めた。別の施設から転職したばかりで入浴介助は初めてだった。しかし、指導役の同僚は体調不良で早退。職員の補充はなく、一人で十人を担当した。「普通なら必ず指導役を付ける。だけど、それもできないほど現場はぎりぎりの人数で回していた」と声を絞り出す。

 石川労働局によると、昨年の労災死傷者数は千百五十三人。過去最少の前年より16・8%増えた。死亡者数は十二人で前年比三人増。労働局は大幅増の理由を人手不足の影響とみる。全国も同様の傾向だ。

 県内では、建設、飲食、介護関係の有効求人倍率が高く、人手不足が顕著だ。建設業での労災の発生は前年比14・4%増。建設現場に入る未経験者が増えた上に、十分な安全教育がなされないケースもある。

飲食で27%増

 見逃せないのが飲食業。飲食店でのけがは全国平均は減少したが、石川では前年比27・6%の大幅増となった。労働局によると、飲食業では定年後も現場勤務を求められることもあり、六十五歳以上の労働者が十年で約三倍に。高齢者のけがは重傷化しやすい。社会福祉施設を含む保健衛生業は5・2%増だった。

 「労働局が発表した労災件数は氷山の一角」。石川県白山市のNPO法人「労働相談センター石川」の栄重光事務局長は、そう指摘する。相談の中には従業員が少なく、けがで休むことで会社に迷惑がかかると思い込んでいる人も多いからだ。

退職巡る相談も増

「求人費出せ」「君の教育費返せ」

 人手不足のため退職希望の労働者を無理に引き留める企業が増えている。

 連合石川には2015年ごろから退職に関する相談が増えた。退職届の出し方などについてが大半だが「君の教育にかかった費用を返せ」「代わりの人を見つけてから辞めて」「求人費を出せ」といった理不尽な要求をされたなどの内容が2割程度。前年まではなかった相談だ。石川労働局では退職に関する相談は5年連続で増加。16年度は過去最高の782件で、解雇に関する相談より348件も多く、この2、3年で差が広がっている。労働局の担当者は「会社側が認めなくても、民法の決まりで退職を申し出てから2週間で退職できる」と話している。

 

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