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真面目さ 支える運行 ポートラム無人精算 終日化

無人の後扉で運賃を精算するポートラムの乗客=富山市のポートラム富山駅北電停で

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 乗客の良心を信じて運賃を無人精算する「信用降車」が、富山市北部の路面電車「ポートラム」で全線・終日に導入されている。開始から2カ月がたつが、不正は報告されていないという。鉄道や路面電車では珍しい試みは、富山のイメージを向上させる好材料になりそうだ。(山本真士)

乗り降りもスムーズに

 平日の昼下がり。富山駅に低床の次世代型路面電車(LRT)が到着した。乗務員は運転士一人だけ。無人の後扉が、運転席近くの前扉と同時に開く。乗客は前後に分かれ、ICカードを読み取り機にかざして降りていく。

 後扉から降りたパート女性(60)は「運賃を精算せず降りようなんて考えたことがない。出口が二つあるから乗り降りがスムーズになって助かる」と歓迎した。

 運行会社の富山ライトレールが乗降時間の短縮を目的に、この方式を導入したのは二〇〇六年。当初は混雑する朝の通勤・通学時間帯に限り、昼や夜は有人の前扉でしか降りられなかった。その結果、トラブルはなく、ダイヤが正確になる利点も大きかったため、今年十月に終日へ広げた。

 同社の担当者は「富山の県民、市民の真面目さを信用しました」と振り返る。精算せず降りる客を止めるすべはない。降車の様子を写すカメラは、扉の開閉の安全確認に使っているだけという。「改札がない無人駅は各地に存在しますが、全線・終日実施はうちだけだと思います」と胸を張る。

 信用降車と似た精算方式では、駅の改札を省く「信用乗車」がある。日本ではなじみが薄いが、欧州では一般的。乗客は切符に駅や時刻を事前に打刻して列車に乗り込む。不正を防ぐため、抜き打ちの車内検札が行われ、違反者は高額な罰金を科される場合が多い。

 しかし、ポートラムは現金かICカードによる後払い方式。乗客は事前に切符を買わないため、車内での検札はほとんど意味がなく、行っていない。違反者への罰金は、運賃との合計で最高六百円。鉄道の法令の規制に合わせた形だが、欧州と比べて極めて低額だ。

 路面電車で国内最大の路線網を誇る広島電鉄(広島市)は一二年に信用乗車の社会実験を行ったが、本格導入はしていない。社会実験の結果は非公表という。担当者は未実施の理由として「安全対策、不正乗車対策、旅客周知などで課題がある」と指摘する。

 養老鉄道(岐阜県大垣市)は無人駅でホーム側全ての扉を開放し、信用降車に近い方式を採る。列車が全長六十メートルと長く、「後ろ乗り前降り」という運用が難しいためだ。ただ、車内検札を行い、無人駅に不定期で係員を派遣して改札するなど不正対策は厳重だ。

 担当者は「発駅か着駅での有人駅利用がほとんど。乗車時か降車時で乗車券を確認している。この取り扱いを信用乗車と呼んだことはない」と距離を置く。

顔の見える関係 不正を抑止

 富山大経済学部の松井隆幸教授(日本産業論)の話 富山県民は真面目で律義。無人精算が成立しやすい。転入者が少なく、他の利用者や事業者との間で顔が見える関係が築かれ、不正の抑止力になっていると考えられる。こうした試みのメリットは時間や人手の節約。富山の良い面をアピールする材料にもなる。

 ポートラム 富山駅北−岩瀬浜(富山市)間の7.6キロを結ぶ路面電車の愛称。旧JR富山港線時代は利用が落ち込んだが、北陸新幹線建設に合わせ、コンパクトなまちづくりを目指して路面電車化された。富山市や富山県などが出資する第三セクター、富山ライトレールが運行する。

 

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