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若手芸術家「条件緩めて」 文化振興 県財団の助成事業

若手芸術家への活動支援事業を案内するチラシ

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 石川県の公益財団法人「いしかわ県民文化振興基金」が、若手芸術家への助成を新たに始めた。支援を受けるには県内の文化団体に所属し、団体から推薦があることなどが要件。県は「助成で文化団体の次世代を育てることが団体の活性化、県の文化振興につながる」と強調する。一方、団体に所属しない作家らは「要件を緩めて一般公募にしてほしい」と訴えている。(沢井秀和)

「団体に所属、推薦必要」高い壁?

 助成は、若手が美術個展や演奏会などを開く際の会場使用料、作品運搬料などが対象。助成率は最大で事業費の三分の二で、限度額は最大二十万円。支援には▽県内の文化団体に所属するおおむね四十歳未満の若手芸術家である▽所属する文化団体からの推薦がある−などの要件を満たす必要がある。

 十月下旬から募集を始めたところ、作家たちから要件に疑問の声が出ている。ガラス工芸作家高木基栄(もとひで)さん(33)=金沢市=は「団体の既得権益を守るための支援なのではないか」といぶかる。「助成金があると、甘やかしにしかならない。中途半端な助成だったらない方がいい」と言い切る。十年間創作を続ける現代アーティスト(35)=同市=は「芸術家は僕を含めフリーも多い。フリーも対象にするべきでは」と訴える。

 同様に若手らを対象にした支援事業では、文化庁が新進芸術家の海外研修制度を設けているが、対象要件は実績があり、語学力があることなど。芸術家が団体に所属し、団体の推薦を受けることは含まれていない。ニューヨークのメトロポリタン美術館などに作品が所蔵されている陶芸家の中村卓夫さん(72)=金沢市=は文化庁の制度に触れて「舞台芸術、楽団などを除けば、芸術は個の表現でしか成立しない。県は作家の現状を理解しているのだろうか」と指摘する。

 若手演奏家をサポートする音楽関係者(60)は「ピアノならまだしも、ほかの楽器の奏者は、団体に所属しようにもその楽器の団体そのものが少ない。特定の団体の演奏家しか支援を受けられないだろう」と見通す。

公募が公平な行政

 元広島市現代美術館副館長で金沢美術工芸大の小松崎拓男教授(現代美術)の話 今回の事業は、確かに団体に所属して芸術に打ち込んでいる若手への支援になる。半面、奥能登国際芸術祭などをみれば分かるように、団体に所属しないで芸術活動をする人は増えている。要件を緩めて広く公募して審査するのが、多様な芸術を支援する公平な文化行政ではないか。

県側「限られた財源 効果的に」

踏み込んだ支援と主張

 いしかわ県民文化振興基金の事務局がある県文化振興課の担当者は「団体であれば構成員が多い。限られた財源の中で、県民にとって効果がより大きい助成にしたい。対象を文化団体に絞ってきた。団体なら多くの県民がかかわり、団体の活性化につながる。今回の若手支援もその流れの中にある」と説明している。

 基金は二〇一五年に県が百二十億円を出して設立。運用益の八千万円を毎年、団体に助成している。文化団体から所属する若手支援を求める声が出たため、今回の事業を新設した。担当者は「芸術家個人そのものを支援する都道府県は少ない。今回は踏み込んだ」と話している。募集期間は来年一月二十二日まで。

 

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