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墓前キリコ 岐路の夏 金沢の大乗寺 つり下げ棒「置かない」

(上)棒がなく、墓に直接立て掛けられたキリコ=いずれも金沢市長坂町の大乗寺で(下)墓参者自作の棒につり下げられたキリコ(一部画像処理)

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宗旨が違う 人手不足

 金沢市や近辺では新盆の墓参りの際に墓前に供えられる木製品「キリコ」。曹洞宗の古刹(こさつ)で知られる大乗寺(同市長坂町)がキリコをつり下げる棒を各墓の前に設置するのを今年からやめた。寺はキリコを供えることが曹洞宗のしきたりになく、棒を作ってきた修行僧が少なくなったことを理由に挙げるが、墓参者から戸惑いの声も聞かれる。(草野大貴)

 キリコはあんどん状と板状のものがあり、江戸時代ごろから使われ始めたとされる。あんどん状のものは、中にろうそくを立て先祖の霊を迎える「迎え火」を守る役割があるという。正面に経が書かれ、裏に墓参者の名前を書く。スーパーでも売られている。

 キリコ用の棒は、鉄製や園芸用などの支柱を地面に突き刺し、上に支柱やひもを組み合わせ、キリコをつり下げられるようにしている。大乗寺では、昨年までは修行僧が約三千区画の墓前に設けていた。

 キリコは民俗的な風習の色合いが強く「南無阿弥陀仏(あみだぶつ)」「南無妙法蓮華経(みょうほうれんげきょう)」などのほかの宗派の経が書かれていることも多く、曹洞宗の墓として似つかわしくないとの指摘もあった。

 棒を作っていた修行僧が減り、設置の継続が難しくなった。放置されるキリコもあり、処分に手間がかかるほか、設置を業者に依頼した場合、約五百万円ほどかかることも中止の理由になった。寺は、六月から境内に張り紙を掲げ、設置の中止を周知していた。

 大乗寺の国井幹之事務局長(51)は「伝統文化は尊重するし、キリコをかけることも禁止していない。自分で棒は設置して、キリコの処分も自分でしてほしい」と話す。周辺には隣接する野田山墓地とともに多くの人が墓参りに訪れる。

 金沢市内ではキリコの棒は、墓参者が取り付ける墓地があるほか、寺が事前に取り付ける所もあり、対応は寺によって違う。

墓参者たち 戸惑いの声

 「毎年設置してあったのに、今年はない。お墓にじかに置くのも良い感じがしない」。墓参りのため東京都調布市から訪れた女性(53)は困った表情を浮かべた。

 例年なら墓前に棒が立ち並ぶはずが、今年はポツポツとあるのみ。訪れた人たちは、棒がないため、調布市の女性と同様、キリコを墓に立て掛けたり、地面に置いたりした。「今年はないね」「墓地に来るまで、何の知らせも無かった気がする」との声があった。

 急きょ自分で棒を設置する人も。金沢市内のパート従業員の女性(68)は「今年は自分の家からさおを持ってきた。毎年設置してもらっていたのだけど。キリコの始末をみんなしていないから、設置しなくなったのかな」と悲しんでいた。

 

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