トップ > 北陸中日新聞から > マナビバ > ニュースDe討論 > 記事

ここから本文

ニュースDe討論

【読書De討論】石川県金沢市浅野川中3年 伊藤比呂美編「石垣りん詩集」を読んで

石垣(いしがき)りん詩集(ししゅう)を読(よ)んで話(はな)し合(あ)う生徒(せいと)たち((左)から種村(たねむら)さん、吉田(よしだ)さん、後藤(ごとう)さん、坂本(さかもと)さん)=石川県金沢市浅野川(いしかわけんかなざわしあさのがわ)中学校で

写真

 本を読(よ)んで感想(かんそう)を話(はな)し合(あ)う「読書De討論(どくしょデとうろん)」。今回は、石川県金沢市浅野川(いしかわけんかなざわしあさのがわ)中学校三年の生徒(せいと)たちに、戦後(せんご)から平成(へいせい)にかけて活躍(かつやく)した詩人(しじん)、石垣(いしがき)りんの詩集(ししゅう)を読んでもらいました。作品(さくひん)を読んで生徒たちはどう感(かん)じたでしょうか。

今回の論点(ろんてん)

・代表作(だいひょうさく)の一つ、「表札(ひょうさつ)」を読(よ)んだ感想(かんそう)は。

・詩集(ししゅう)の中でどの詩が好(す)きか。

・詩集を読んだ感想は。石垣りんをどう思うか。

出席者

坂本(さかもと) 康成(こうせい)さん

後藤(ごとう) 愛菜(あやな)さん

吉田(よしだ) 光(ひかる)さん

種村(たねむら) 優花(ゆか)さん

自分は自分 強い心大切

−石垣(いしがき)りんの代表作(だいひょうさく)の一つ、「表札(ひょうさつ)」を読んでどう感(かん)じたか。

 後藤(ごとう) 「他人(たにん)がかけてくれる表札はいつもろくなことがない」。その言葉(ことば)はとても意味深(いみぶか)い。相手(あいて)がつける表札には必(かなら)ず「様(さま)」や「殿(との)」がつく。それは、人を高(たか)く見たり、低(ひく)く見たり、地位(ちい)や立場(たちば)を意識(いしき)している言葉。

 坂本(さかもと) だから、作者(さくしゃ)は、他人がかけてくれる表札は気に入らないんだ。「自分の住(す)む所(ところ)には自分の手で表札をかけるに限(かぎ)る」と言っている。地位も立場も関係(かんけい)ない対等(たいとう)で、公正(こうせい)な生(い)き方(かた)をしたいと、作者は自分(じぶん)に言い聞(き)かせている。

 種村(たねむら) 他人がかけてくれる表札は、いいものじゃない。自分の表札は自分自身(じしん)でかける。自分は自分なんだ。自分の力で生きていくんだと、高(たか)らかに主張(しゅちょう)している詩だ。力強い。

 吉田(よしだ) 「精神(せいしん)の在(あ)り場所(ばしょ)もハタから表札をかけられてはならない」。作者(さくしゃ)はこれが一番言(いちばんい)いたかった。他人の言葉にむやみに従(したが)うのではない。自分でしっかり考えて、行動(こうどう)しろ。作者はそう言っている。

石垣(いしがき)りん詩集(ししゅう)・伊藤比呂美編(いとうひろみへん)(岩波文庫(いわなみぶんこ))

写真

戦争 忘れてはダメ

−石垣りんの詩集(ししゅう)を読んでほかにどの作品(さくひん)を好(す)きになったか。

 吉田 僕(ぼく)は「南極(なんきょく)」という詩(し)が気(き)に入(い)った。南極の越冬隊(えっとうたい)が、これまで人間(にんげん)を助(たす)けてきた犬(いぬ)を置(お)き去(ざ)りにした。南極だけでなく、身近(みぢか)な東京(とうきょう)でも、誰(だれ)からも助(たす)けられず社会(しゃかい)から置き去りになっている家族(かぞく)がいる。二つの出来事(できごと)を詩で重(かさ)ね合(あ)わせ、人間の身勝手(みがって)さを表現(ひょうげん)している。

 種村 私(わたし)は「落伍(らくご)」という詩がいい。戦争(せんそう)が終(お)わって十年もたつのに、作者の心の中ではまだ戦争が続(つづ)いている。戦争を体験(たいけん)したことがない私(わたし)でも、戦争はとても残酷(ざんこく)なんだと感じた。

 坂本 「弔詞(ちょうし)」が好(す)きだ。「戦争の記憶(きおく)が遠(とお)ざかるとき、戦争がまた私たちに近(ちか)づく」という言葉がいい。戦争を知らない今の僕たちに「戦争を忘(わす)れるな」と作者がメッセージを送(おく)ってくれている。

 後藤 私は「白いものが」に感動(かんどう)した。「白いもの」とは、洗濯物(せんたくもの)であり、せっけんのこと。現代(げんだい)はもの余(あま)りの時代(じだい)だが、戦時中(せんじちゅう)はせっけんさえ手に入らなかった。「白いもの」は平和(へいわ)を象徴(しょうちょう)。もっと平和を大切にと訴(うった)えている。

戦後の人々 見えるよう

−石垣りん詩集を読んでどう思ったか。

 坂本 僕たちは戦争を経験(けいけん)していないし、終戦直後(しゅうせんちょくご)の混乱期(こんらんき)も知らない。なのに、この詩集を読んでいると、胸(むね)の痛(いた)くなるような風景(ふうけい)が目の前に広がる。表現力(ひょうげんりょく)がすばらしい。

 種村 詩を読むと、作者の苦(くる)しい胸のうちや悩(なや)みが伝わってくるし、いいものはいい、悪(わる)いものは悪いとはっきり言う。作者は筋(すじ)の通(とお)った女性(じょせい)だ。

 吉田 詩集は戦争や戦後の混乱した市民生活(しみんせいかつ)が描(えが)かれている。今の人たちは戦争をすっかり忘れているが、作者は「戦争を忘れるのはよくないことだ」と強く訴えている。

 後藤 詩集には戦時中や戦後の時代のときのテーマが多く、平成(へいせい)の今と状況(じょうきょう)が違(ちが)う。だけど、絶望(ぜつぼう)したり、作者が嫌(いや)だと感じたり、これはおかしいなと思ったことが実直(じっちょく)に表現されている。どんなことにも折(お)れない作者の強い精神(せいしん)を感じた。とても心に響(ひび)いた。 (構成(こうせい)・浦上豊成(うらかみほうせい))

表札

自分(じぶん)の住(す)むところには

自分で表札を出(だ)すにかぎる。

自分の寝泊(ねとま)りする場所(ばしょ)に

他人(たにん)がかけてくれる表札は

いつもろくなことはない。

病院(びょういん)へ入院(にゅういん)したら

病室(びょうしつ)の名札(なふだ)には石垣(いしがき)りん様(さま)と

様が付(つ)いた。

旅館(りょかん)に泊(とま)っても

部屋(へや)の外(そと)に名前(なまえ)は出ないが

やがて焼場(やきば)の鑵(かま)にはいると

とじた扉(とびら)の上(うえ)に

石垣りん殿(どの)と札(ふだ)が下(さ)がるだろう

そのとき私(わたし)がこばめるか?

様も

殿も

付いてはいけない、

自分の住む所には

自分の手で表札をかけるに限(かぎ)る。

精神(せいしん)の在(あ)り場所(ばしょ)も

ハタから表札をかけられてはならない

石垣(いしがき)りん

それでよい。

 石垣(いしがき)りん詩集(ししゅう)(伊藤比呂美編(いとうひろみへん)) 石垣りん(1920−2004年)は東京生(とうきょうう)まれ。銀行(ぎんこう)に勤(つと)める傍(かたわ)ら、10代(だい)のころから詩作(しさく)に励(はげ)み、1959年、39歳(さい)のとき、第(だい)1詩集「私(わたし)の前にある鍋(なべ)とお釜(かま)と燃(も)える火と」を出版(しゅっぱん)した。家と職場(しょくば)、生活(せいかつ)と仕事(しごと)の描写(びょうしゃ)。根源的(こんげんてき)なものを凝視(ぎょうし)する力強(ちからづよ)い詩(し)を書(か)き続(つづ)け、戦後(せんご)の女性詩(じょせいし)をリードしてきた。生徒(せいと)たちが読んだ詩集は、現代詩人(げんだいしじん)の伊藤比呂美さんが未発表(みはっぴょう)詩や未収録作品(しゅうろくさくひん)を含(ふく)む120編を選(えら)び、収録した。

 

この記事を印刷する

PR情報

地域のニュース
愛知
岐阜
三重
静岡
長野
福井
滋賀
石川
富山

Search | 検索