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ニュースDe討論

石川県珠洲市宝立小中学校7年 有島武郎「一房の葡萄」を読んで

「一房(ひとふさ)の葡萄(ぶどう)」について話(はな)し合う生徒(せいと)たち((左)から川元(かわもと)さん、春岡(はるおか)さん、門前(もんぜん)さん)=石川県珠洲(けんすず)市宝立(ほうりゅう)小中学校で

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許す気持ち通う心

 新聞記事(きじ)について中学生が議論(ぎろん)を繰(く)り広げる「ニュースDe討論(とうろん)」の特別編(とくべつへん)として、今回、本を読んで印象(いんしょう)や感想(かんそう)を話(はな)し合う「読書(どくしょ)De討論」をお届(とど)けします。石川県珠洲(けんすず)市宝立(ほうりゅう)小中学校七年(中一)の生徒(せいと)たちに有島武郎(ありしまたけお)の「一房(ひとふさ)の葡萄(ぶどう)」を読んでもらいました。生徒たちはどのように感(かん)じたのでしょうか。

今回の論点

・主人公(しゅじんこう)「僕(ぼく)」のした盗(ぬす)みの行為(こうい)をどう思(おも)うか。

・「僕」の行為を許(ゆる)す女の先生(せんせい)をどう思う。

・この作品を通じて、作者(さくしゃ)は何(なに)を言(い)いたかったのか。

出席者

 門前(もんぜん) 海那(みな)さん

 春岡(はるおか) 一定(いちじょう)さん

 川元(かわもと) 愛里(あいり)さん

 −みんなは、主人公(しゅじんこう)の「僕(ぼく)」がした盗(ぬす)みという行為(こうい)をどう感(かん)じたか。

 門前(もんぜん) 同級生(どうきゅうせい)が持(も)っていた上等(じょうとう)の絵(え)の具(ぐ)を「僕」が盗んだ行為はとても悪(わる)いことだ。悪いと分かっていながら、盗みをしたんだから。友達(ともだち)がいい物(もの)をもっていれば、欲(ほ)しいと思う気持は理解(りかい)できる。

 春岡(はるおか) 盗みはよくない。小説(しょうせつ)では、「僕」は心も体も弱い子と自分で言っている。心が弱いから欲望(よくぼう)に負(ま)けたんだ。最後(さいご)に、「僕」がすぐに後悔(こうかい)し、反省(はんせい)もしたし、盗まれた同級生とも元通(もとどお)り仲良(なかよ)くなったので、ホッとした。

 川元(かわもと) 絶対(ぜったい)やってはいけないことを「僕」はやってしまった。盗みがみんなに分(わ)かってから、泣(な)いてばかりじゃなくて、謝(あやま)るべきところはきちんと謝り、「すまない」という謝罪(しゃざい)の気持ちをはっきりと伝(つた)えた方がよかった。うらやましいという気持ちは誰(だれ)でもあるが、盗みまでするのはよくないよ。

謝る、叱るあってもいい

 −主人公を優(やさ)しく許(ゆる)す女の先生をどう思うか。

有島武郎著(ありしまたけおちょ)「一房(ひとふさ)の葡萄(ぶどう)」(岩波文庫(いわなみぶんこ))

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 春岡 西洋人教師(せいようじんきょうし)が多い学校と書かれている。特(とく)にこの女の先生については「大理石(だいりせき)のような白い手」などと具体的(ぐたいてき)に描写(びょうしゃ)されている。だから、想像(そうぞう)すると、とても優しくて美人(びじん)の西洋人の先生なんだろうな。先生はとても忙しいので、「僕」にかまってあげられなかったのだと思った。だけど、絵の具を盗まれ怒っていた「ジム」が、翌日には「僕」に駆(か)け寄(よ)り、手を握(にぎ)って仲直(なかなお)りした。先生が、「過(あやま)ちや失敗(しっぱい)は誰でもある」と「ジム」を諭(さと)して仲直(なかなお)りさせたのに違(ちが)いない。先生の優(やさ)しさを感じる。

 川元 私(わたし)の受(う)けた先生の印象(いんしょう)はちょっと違(ちが)う。先生のことを「男のように首の所(ところ)でぷつりと切った髪(かみ)の毛を右の手でなで上げながら」と表現(ひょうげん)しているから、男っぽくて行動的(こうどうてき)、頼(たよ)りがいがある先生なんだと思うよ。でも、この場合(ばあい)、叱(しか)るときはきちんと叱っておいた方がよかったかもしれない。

 門前 先生は、全体(ぜんたい)をよく見回してから行動する人。盗みをした主人公をとがめるんじゃなくて、その後のことも考える。盗みをした人も盗まれた人も、二人は仲良くなるように気遣(きづか)いしている。叱るだけが指導(しどう)じゃない。とてもいい先生だ。

過ちや失敗誰にでもある

 −作者(さくしゃ)はこの小説で何を言いたかったのか。

 川元 一房の葡萄には「早く元気になってほしい」という先生の願(ねが)いがこもっていると思う。悪いことをしても、その行為に正直(しょうじき)に向(む)き合い、深(ふか)く反省すれば、立ち直ることができる。それに、失敗や過ちは誰にでもあるし、それを許す寛大(かんだい)な心を持ってほしいとも、作者は言っているのだろう。

 春岡 人間の欲望(よくぼう)はいっぱいあり、たくさん実(み)がなる葡萄と同じ。人間の欲望を葡萄の実にたとえ、「葡萄(欲望)をくいちぎれ」、つまり「欲望に負けるな」と言っているんだよ。盗んだ人も盗まれた人も最後は互(たが)いに理解し合って、仲良くしろと言っているようだ。

 門前 私も葡萄は元気を象徴(しょうちょう)していると思う。泣いたり、めそめそしている「僕」を励(はげ)ますために先生がわたした。作者は「人間は、自分だけの欲望、気持ちばかりを考えないで、他人(たにん)のことももっと考えなさい」と言っているように思う。 (構成(こうせい)・浦上豊成(うらかみほうせい)) 

感想

 門前 本の内容(ないよう)がちょっと難(むずか)しかったけど、一生懸命(いっしょうけんめい)読んだ。優(やさ)しく思いやりのある先生が好(す)きだ。

 春岡(はるおか) よく読むライトノベルと違(ちが)ってテーマが重くて戸惑(とまど)った。同級生2人が仲直りしてよかった。

 川元 短編(たんぺん)小説だったが、考えさせられた。生(い)きていくうえで、とても大切(たいせつ)なものが書(か)かれている。

 一房(ふさ)の葡萄(ぶどう) 大正時代(たいしょうじだい)の小説家(しょうせつか)、有島武郎(ありしまたけお)(1878〜1923年)が著(あらわ)した創作童話(そうさくどうわ)の一つ。1922年に刊行(かんこう)された。主人公(しゅじんこう)の「僕(ぼく)」は絵を描(か)くことが好(す)きだった。あるとき、学校で、同級生(どうきゅうせい)が持(も)つ上等(じょうとう)な絵(え)の具(ぐ)がうらやましくて衝動的(しょうどうてき)に盗(ぬす)んでしまう。すぐに同級生(どうきゅうせい)たちに盗みが分(わ)かり、先生に言いつけられる。しかし、先生は優(やさ)しく許(ゆる)し、一房の葡萄をわたしてくれる。翌日(よくじつ)、同級生と仲直(なかなお)りする。童話というものの、人生(じんせい)の真実(しんじつ)が書き込(こ)まれており、有島ならではの作品(さくひん)という。 

 

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