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【お仕事ファイル】水引細工職人 贈る心を目に見える形に

水引(みずひき)で縁起物(えんぎもの)のくす玉をつくる津田六佑(つだろくすけ)さん=いずれも石川県金沢(いしかわけんかなざわ)市の「津田水引折型(おりかた)」で

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 お年玉やお祝(いわ)い金などが入った封筒(ふうとう)に、立派(りっぱ)なひも飾(かざ)りが付(つ)いているのを見たことがあるかもしれません。水引細工(みずひきざいく)と呼(よ)ばれる伝統工芸品(でんとうこうげいひん)で、奈良時代(ならじだい)から伝(つた)わる日本のラッピング(包装(ほうそう))方法(ほうほう)の一つです。中学生記者(きしゃ)が、今につながる水引細工の発祥(はっしょう)とされる石川県金沢(いしかわけんかなざわ)市の「加賀(かが)水引」の職人(しょくにん)を訪(たず)ねました。

伝統守りつつ、型破る挑戦

 百年の歴史(れきし)を誇(ほこ)る「津田水引折型(つだみずひきおりかた)」で、五代目(だいめ)の津田六佑(つだろくすけ)さん(36)が迎(むか)えてくれました。店内は落(お)ち着(つ)いた雰囲気(ふんいき)に包(つつ)まれ、緊張気味(きんちょうぎみ)の記者(きしゃ)も、すぐに穏(おだ)やかな表情(ひょうじょう)に変(か)わりました。

 「水引細工を使(つか)って贈(おく)り物(もの)のラッピングをする場所(ばしょ)です。贈り物を白い和紙(わし)で包む、水引細工で封(ふう)をする、包みに筆(ふで)で文字を書く。このサービスを全部(ぜんぶ)やるのは、日本でも珍(めずら)しいのですよ」と教えてくれました。

【上】水引細工(みずひきざいく)の制作(せいさく)につかう水引や道具(どうぐ)【下】店内で売られている水引細工

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 水引細工は和紙をよじって固(かた)めた「水引」を使った創作物(そうさくぶつ)です。「和紙に水のりを引いて棒状(ぼうじょう)にする工程(こうてい)が水引の名前の由来(ゆらい)です」と津田さん。力士(りきし)のまげを結(ゆ)う時にも使います。

 津田さんは主(おも)に水引細工作りを担当(たんとう)。長さ九十センチの水引を編(あ)んで、立体的(りったいてき)な花や生き物を作ります。色や素材(そざい)の違(ちが)う百種類以上(しゅるいいじょう)の水引を使いこなします。

 ラッピングを頼(たの)まれる贈り物は、宝石類(ほうせきるい)、お酒(さけ)、お金、着物(きもの)などさまざま。うち半分は、結婚(けっこん)が決(き)まった男性(だんせい)が女性に贈る「結納品(ゆいのうひん)」です。「やはり縁起物(えんぎもの)の鶴(つる)、鯛(たい)、松(まつ)や梅(うめ)などの細工を作ることが多いかな」。接着剤(せっちゃくざい)の乾燥(かんそう)も含(ふく)め、完成(かんせい)まで数日かかり、三カ月かけた大作もあるそうです。

 伝統文化(でんとうぶんか)を担(にな)う家に生まれた津田さんは、「いつかは家の仕事(しごと)をしないといけない」と思って育(そだ)ちました。大学卒業(そつぎょう)後はIT関連企業(アイティーかんれんきぎょう)に十年間勤務(きんむ)。三年前から四代目の父・宏(ひろし)さんの下で創作の腕(うで)を磨(みが)きます。ホームページの運営(うんえい)では前の仕事が大きく役立(やくだ)ち、将来(しょうらい)のために細工作り以外にも目を配(くば)ります。

縁起物(えんぎもの)の鶴亀(つるかめ)をかたどった壁掛(かべか)け。芸術性(げいじゅつせい)の高い水引作品(みずひきさくひん)も手掛(てが)けます

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 「水引は人間同士(どうし)のコミュニケーションです。贈り物をもらった人に心から喜(よろこ)んでもらえるように、例(たと)えば『寿(ことぶき)』(おめでとう)、『松の葉(は)』(ささやかな物ですが)など、包みにどんな言葉(ことば)を書けばよいかも的確(てきかく)にアドバイスできないといけません」

 贈り物にわざわざ水引細工を飾(かざ)るのは、「私(わたし)はあなたを大切に思っている」という目に見えない気持(きも)ちを相手(あいて)に示(しめ)す目的があります。贈る側(がわ)ともらう側の絆(きずな)を深(ふか)める役目もあり、津田さん自身(じしん)も、「贈り物を渡(わた)した相手がものすごく喜んでくれた」と聞くと、思わずにんまりしてしまいます。

 今後も修業(しゅぎょう)は続(つづ)きますが、「先代が築(きず)いた伝統を守(まも)りながら、多くの人に親しんでもらえるよう、時代に合わせて型を破(やぶ)っていきたい」と意欲(いよく)を見せます。昔(むかし)はなかった水引製(せい)のネックレスやコースターなどの雑貨販売(ざっかはんばい)など新たな挑戦(ちょうせん)をしながら、伝統の重(おも)みも日々かみしめています。

<これまでの歩み>

 2004年 大学卒業(そつぎょう)後、IT関連企業(アイティーかんれんきぎょう)に就職(しゅうしょく)。ホームページの作成(さくせい)やネットショップの運営(うんえい)、デザイン、プログラミングなどの仕事(しごと)に関(かか)わる。

 14年 実家(じっか)の「津田水引折型(つだみずひきおりかた)」に入社。5代目(だいめ)として水引細工作りに励(はげ)む。

 津田さんから 加賀水引(かがみずひき)は贈(おく)り物(もの)を包(つつ)むという行為(こうい)を、芸術(げいじゅつ)の域(いき)にまで押(お)し上げた日本の文化(ぶんか)です。日本人の美意識(びいしき)や精神性(せいしんせい)を少しでも感(かん)じてもらえるとうれしいです。

津田(つだ)さん(右)を取材(しゅざい)する中学生記者(きしゃ)たち。ご祝儀袋(しゅうぎぶくろ)や、水引細工(みずひきざいく)の付(つ)いた包装例(ほうそうれい)の説明(せつめい)も受(う)けました

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取材に行って

 森下京音(もりしたことね)(福井県越前(ふくいけんえちぜん)市武生第(たけふだい)三中3年) 津田(つだ)さんは「加賀水引(かがみずひき)を後世(こうせい)に伝(つた)えるために基本(きほん)を身(み)に付(つ)ける必要(ひつよう)がある」と話していました。3年もやっているのにそう思うのが、私(わたし)と違(ちが)うなと感心(かんしん)しました。

 寺岡聖(てらおかひじり)(石川(いしかわ)県金沢錦丘(かなざわにしきがおか)中2年) 「もらう人に贈(おく)る人の思いを感じ取(と)ってもらう」という言葉(ことば)が心に強く響(ひび)きました。私も津田さんのように日本人の思いをつなぐ場で仕事(しごと)をしたいと思いました。

 伊藤大智(いとうたいち)(富山(とやま)市北部(ほくぶ)中1年) 水のりを引っ張(ぱ)って乾(かわ)かすことが水引の名前の由来(ゆらい)なのが意外(いがい)でした。津田さんの話から、水引細工の要望(ようぼう)に応(おう)じる大変(たいへん)さや、お客(きゃく)さんの喜(よろこ)びを知るやりがいを知りました。

 大矢詩季(おおやしき)(石川県小松(こまつ)市南部(なんぶ)中1年) 津田さんのお店では、物(もの)を包(つつ)むだけでなく、アクセサリーも売られていました。親しみやすく、新しい水引の楽しみ方もあるのだと感じました。

 中川太一(なかがわたいち)(石川県金沢市港(みなと)中1年) 水引細工は手先が器用(きよう)なら1年くらいで職人(しょくにん)になれると思い込(こ)んでいました。でも実際(じっさい)は水引の結(むす)び方や文字の種類(しゅるい)、書き方を覚(おぼ)える必要があり、楽ではないと分かりました。

 

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