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北経随想|アジア随想

開湯1300年の岐路 桂木実

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 北陸地方で最も古くからある粟津温泉が来年で開湯千三百年を迎えます。七一八(養老二)年に白山を開山した泰澄(たいちょう)大師が、白山大権現の夢でのお告げを受けて開湯しました。毎年夏には、温泉街を彩る「おっしょべ祭り」が開かれ、多くの人が一緒におっしょべ踊りを踊って、太鼓の音と民謡「おっしょべ節」が響き渡ります。

 今、粟津温泉は岐路に立っています。これまでも戦争などで一時的に利用客が減ったことはありましたが、国内では人口減少とそれに伴う経済の縮小が続いています。構造的に温泉に来る人が減るのは、千三百年の歴史の中でもなかったことです。ピーク時には十四軒あった温泉旅館も、現在旅館組合に加盟する旅館は六軒になりました。地域の子どもも減り、私が小学生の時には各学年に必ず旅館経営者の児童がいましたが、今はいません。

 開湯千三百年の節目は、この危機感を温泉街の人たちで共有し、町の活性化を考えるきっかけになると思います。旅館に泊まってもらい、温泉だけでなく料理やお酒を楽しんでもらう。そうして地域の経済を回す仕組みが必要です。千三百年の節目を一過性のものに終わらせない、次の百年を見据えたまちづくり。現在、行政の力を借りて温泉街中心部に整備中の千三百年に向けた記念公園もその一つです。

 粟津温泉には、地域の人に愛され、多くの常連さんに利用されてきた歴史があります。どこにでもある「チェーン店」のような温泉旅館になるのではなく、人と人とのつながり、お客さんと旅館社員の顔の見えるコミュニケーションを大切にしていく粟津温泉の良さを、これからも守っていきたいと思います。 (粟津温泉旅館協同組合代表理事)

 かつらぎ・みのる 1964(昭和39)年、石川県小松市粟津町生まれ。東京都内の大学を卒業後、食品メーカーに勤務。30歳で家業の粟津温泉旅館「のとや」に戻り、40歳で社長に就任。現在、開湯1300年祭の実行委員長を務める。52歳。

 

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