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北経随想|アジア随想

砺波の瓦生産 谷口猛

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 私が幼いころの富山県砺波市福山地区は、登り窯を持つ瓦工場が六軒あり、農業と窯業の小さな集落だった。父谷口信高は、終戦帰還と同時に谷口製瓦の三代目として入職した。工場には瓦職人、鬼瓦を手掛ける「鬼師」、おけ屋、馬車引きなどが近隣から集まり、大変な活気があった。

 小さな村なので、瓦に関わる家庭は多く、瓦組合企画の観光バスで行く海水浴は、子どもたちにとって夏休みの一大イベントだった。村の神社仏閣の改修、催事・祭礼も、事業者は精力的に参加して協力した。企業とコミュニティーの共存を理念としていたのであろう。

 時代の変遷で、企業合併をして機械化を図ったが、百年続いた福山の瓦生産は一九八五年に終了した。信高には、福山瓦に対する強い思い入れがあり、機械化が進む七〇年ごろまで使用していた瓦製作道具百点あまりを保管し、砺波市への寄贈を希望していた。

 当社の学芸員が信高から聞き取りをして調査報告書づくりを始めたが、信高はその完成を見ることなく、二〇一三年に八十九歳で生涯を閉じた。報告書完成とともに砺波市教育委員会のご協力で、昨年十二月十二日から今年の二月二十九日まで、となみ散居村ミュージアムにおいて「近現代の瓦製作道具展−福山瓦の伝統−」を開催し、県内外の方々にご覧いただいた。

 瓦づくり、人と企業と業界づくり、コミュニティーづくり、歴史文化の記録づくり…。これらを福山の瓦工場は昭和の激動時代、熱心にちょっとスローに実行してきた。晩年、多くを語らなかった父だが、企業経営はこうあるべきだと、身をもって示してくれた。 (エイ・テック会長)

 たにぐち・たけし 1949年富山県砺波市生まれ。砺波工業高校卒業後、自動車会社勤務などを経て、90年に同県高岡市でエイ・テックを設立。航空写真撮影、文化財調査、測量などの事業を展開している。

 

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