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挑戦 北陸財界ものがたり

コマツ(5) 本物の強さ追い求め

コマツ発祥の地・小松工場跡に整備された「こまつの杜」。右手前はコマツウェイ総合研修センタ=石川県小松市で

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 「君たちは染物屋か」。一九六二(昭和三十七)年、入社三年目の川崎外志朗(77)=石川県内灘町=は(A)(マルエー)対策に取り組む中、役員に言われた言葉が忘れられない。部品の熱処理を指示する図面で書かれているのは「材質」と「硬さ」だけ。それで本当に製品の強さになっているのか−。役員は色見本の通りに色を合わせる染め物の作業に例え、「硬さ」だけ指示している問題点を指摘した。

 先輩と歯車の熱処理を担当していた川崎は粟津のほか大阪、川崎の各工場で熱処理している方法、温度を徹底的に調べた。問題点を洗い出し、材料ごとに焼き入れ、焼き戻しする温度など熱処理の条件、方法を明確にした。さらに熱処理の条件、工程を十桁の数字で表した熱処理番号で図面に示す方法を確立。番号を見れば工程が決まるため、材料を弱くする温度で焼き戻すことはなくなった。

 六〇年に入社した粟津工場OBの奥田幸一(69)=石川県小松市=は品質の命である材料の硬さ向上を目指し、鋼に炭素を浸透させる炉に張り付く。鉄は炭素を入れると摩耗には強くなるがもろくなる。簡単に壊れないよう材料の内部だけを軟らかく、表面は硬くする技術開発に取り組んだ。

 先輩技術者と炉の前に寝袋を持ち込み、炭素を入れ終わるまで十二時間、長いときは二十四時間、特殊な材料は七十二時間徹夜で観察しデータを取り続けた。材料を替え、それぞれ温度などの条件を変えて炉に入れ、また観察する。その繰り返しだった。

 狙った材料ができても実際に耐久性テストに合格するまでは心配したという奥田。「ひとたび外敵から防御しようとするときには人間はすごい力を出す」と当時を振り返る。現在は熱処理の専門技術を買われ、小松市の小松短大や石川県立小松産業技術専門校で指導に当たっている。

 (A)対策の成果を高めるため小松製作所(現コマツ)は品質管理(QC=クオリティー・コントロール)の手法を導入した。工場などの作業現場ごとに全員参加のQCサークルを組織。品質や生産性の向上に向けたアイデアを出し合い、実行に移す活動だ。それは経営、設計、製造、営業などあらゆる活動を品質向上に結び付けるTQC(総合品質管理)だった。粟津工場には六三年七月にいち早くQCサークルが生まれ、ほかの工場に広がった。

 小松製作所は六四年十一月、品質管理の理論や実践に貢献した個人や法人に与えられるデミング賞を受賞した。産業機械メーカーでは初の栄誉。このDNAは部品から製品の信頼性向上を掲げた(B)(マルビー)活動、他社の追随を許さない「ダントツ」の製品づくりへと受け継がれていく。 (敬称略)

 

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