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挑戦 北陸財界ものがたり

コマツ(4) 品質向上へ“大号令”

ことし5月に完成した最新鋭工場の建設機械組み立てライン=石川県小松市のコマツ粟津工場で

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 「コストを無視せよ」「JISを否定せよ」。米キャタピラー社の日本進出を控え一九六一(昭和三十六年)八月、小松製作所(現コマツ)社長の河合良成は社内に(A)(マルエー)対策本部を設置。全社に命令する。いくらコストがかかってもいい。JISもひとつの最大公約数の規格でしかない。完全にキャタピラー社に追いつき追い越す品質をつくり上げることが第一だった。

 (A)はトランプのオールマイティーのA(エース)。社内でどんな重大事より優先する意味だ。「小松製作所五十年の歩み」によると当時、会社は全国で直販システムを確立し、各工場の生産力も拡充。ブルドーザーのシェアは高かった。しかし、信頼性、耐久性でキャタピラー社の製品には及ばなかった。

 粟津工場(石川県小松市)OBの高崎外男(79)=同県能美市=は、オーバーホール(分解検査)したキャタピラー社のブルドーザーに驚いた。車体の下の地面に油漏れの跡がない。車体もきれい。分解しようとするとボルトの締め付けが強く、工具が壊れた。高崎は「日米の技術力のレベルが違っていた」と振り返る。

 キャタピラー社のブルドーザーが稼働五千時間までオーバーホールの必要がなかったが、小松は三千時間が限度といわれた。過酷な作業では故障も頻発する。単なる改良ではなく、まったくの新製品を開発することが求められた。

 まずキャタピラー社の製品を解体して徹底的に調べた。並行して小松のブルドーザーに対するユーザーの批判会を開き耐久性、整備性の問題点を聞くと百八十二項目もあった。クレームも解析。現場調査などで千六百五十七項目の課題が明らかになった。

 これらをもとに構造、材質、加工、熱処理などあらゆる分野にわたって対策を決めた。河合は自著「孤軍奮闘の三十年」に詳細に書き残した。鋼にも絶対に必要な小松独自の基準を設けて素材メーカーに発注。ボルトもより強く締め付ける強度とJISをはるかに超える品質を求めた。

 六二年六月、改良を積み重ねてできたブルドーザーを実際に動かし、改良した部品を確かめた。用意したのは三機種ごとに三十二台ずつ計九十六台。九十台をユーザーに渡し、実際の作業でデータを集めた。六台を使った社内テストには若手社員も駆り出された。ユーザーにはベテランだけでなく初心者もいる。使い方も乱暴な場合があると想定したからだ。

 さらにテストと改良を重ね六三年三月、量産への試作車が完成する。新たなブルドーザーを九月に販売するとクレームは五分の一に減った。小松製作所のブルドーザーは四年後、キャタピラー社の本拠地アメリカに逆上陸を果たす。

  (敬称略)

 

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