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挑戦 北陸財界ものがたり

YKK(5) 地上450メートル 眺望支える 

多くの人でにぎわう天望回廊

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 「無事に完成してよかった」。二〇一二年五月二十二日、東京スカイツリー(東京都墨田区)の開業を伝えるテレビニュースを見つめながら、YKK AP滑川事業所(富山県滑川市)ビル製造部の石村透(54)は喜びをかみしめた。

 雨交じりのあいにくの天気でツリー上部は厚い雲に覆われていた。しかし、時折雲の切れ目からのぞく天望回廊が画面に映し出されると、石村は思わず身を乗り出していた。

 六百三十四メートル。自立式電波塔としては世界一の高さを誇る東京スカイツリー。高さ四百五十メートルにある最大の観光スポット「天望回廊」を覆うカーテンウオールが滑川事業所製だ。

 東京タワー(高さ三百三十三メートル)を見下ろす場所で求められたのは一般の高層ビルの二倍の強度。風は五百年に一度の強風を想定。観測史上最大級の台風だった室戸台風で記録した風速六〇メートルの二倍近い一〇〇メートルに耐える強度が必要だった。

 強い風雨にさらされても雨漏りしてはいけない。しかも眺望を妨げないようガラス面はできるだけ大きく、アルミの枠は可能な限り細くしなければならなかった。

斜めに1周して空中散策を楽しめる天望回廊。外装のカーテンウオールがYKKAP滑川事業所製だ=いずれも東京都墨田区で

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 チューブを半分に切って巻き付ける複雑なデザインだけにアルミの枠とガラスで構成する二百八十枚のカーテンウオールのうち、二百枚は一枚ずつ形も大きさも異なる。一枚のわずかな誤差も全体では大きくなる。取り付け金具やガラスとアルミ枠をつなぐゴム部品も含め、〇・一ミリ単位の高い精度が必要だった。

 実際の大きさのカーテンウオールを作り、風や水にさらして実験を重ね品質、強度を確かめた。水平部分から斜めになる場所は特にテストを繰り返した。「妥協することなく間違いのない物を作り上げ、顧客の信用を得る」。石村の基本にあったのは徹底的に品質にこだわる吉田忠雄の思想だった。

 YKK APは豊富な実績が認められて東京スカイツリーのカーテンウオールを受注した。これまでに名古屋市の「モード学園スパイラルタワーズ」をはじめシンガポールにある「ガーデンズ・バイ・ザ・ベイ」の巨大屋内植物園フラワー・ドームや高層集合住宅ビル群「リフレクションズ・アット・ケッペル・ベイ」など国内外の高層ビルでカーテンウオールの製作・施工を担当している。

 石村は完成後の東京スカイツリーにはまだ行っていない。「取り付けたところは現場に行かないと分からないので気になる」。早く見たい、とはにかんだ。 (敬称略)

 カーテンウオール 雨や風から建物を守るため、柱や梁(はり)などの骨組みの周囲をアルミやガラスなどのパネルでカーテンのように覆う壁のこと。通常の壁より軽いことから高層ビルなどで多く使われている。

 

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