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社長を語る

アクトリー(石川県白山市) 水越裕治社長(65) 公害なくす消えぬ情熱

「ゼロからのチャレンジ」を若手に呼び掛ける水越社長。工場内には産廃焼却炉の巨大な部材がずらりと並ぶ=石川県白山市のアクトリー本社で

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 大学卒業時の一九七〇年代は高度成長期。華やかな好景気に沸き立つ一方、公害が社会問題化していた。「いずれ環境の仕事で稼げる時代がくる」。確信はないが、漠然とした思いがあった。

 学生運動に傾倒し、反骨精神は旺盛だった。「下請けではなく完成品メーカーを目指したい。何でも好きな研究をさせてやる」。こうした役員の誘い文句で大手企業の内定を蹴り、設立間もない零細企業に飛び込んだ。

 一年目に出したのはドラム缶に煙突を付けただけのような簡単な焼却装置で、価格は十万円ほど。「かまどみたいなもんです」。トラックに積んで客先を回り、なじみのない製品をこう説明した。

 当時はあちこちに製材工場があり、夕方になるとおがくずを燃やす煙が立ち上った。残り火の不始末が原因の火災も多く、その対策として引き合いは増えていった。

 地場産業のニーズをくみ、製品は進化を遂げた。おがくずを吸引して、焼却炉に投入するまでを自動化した二号機を輪島塗の業者に提案。合繊の織物会社には高温に耐える水冷式や、すすを減らす送風ノズルを開発し、業界を先駆けた技術で差別化につなげた。

 国の環境規制はどんどん厳しくなり、やがてナノレベルで化学物質を取り除くことが法律で義務化された。新たな対策を講じるたびに製品の付加価値は高まり、今や建屋を含め、一基当たり十億〜三十億円するまでになった。

 大手に対抗するためターゲットを産業廃棄物処理の専門業者に絞り込み、小さな町工場は、いつの間にか業界のトップランナーとして全国に名が知られるようになった。

 「ゼロからチャレンジしてみろ」。若い技術者にはこうハッパを掛ける。確かにこれまでは時代の追い風があったが、製造業の海外シフトが加速し、業界は曲がり角を迎えている。

 来春、焼却炉の熱を回収して発電する実験を始める。バイオテクノロジーにも積極的に投資するが、どれが次代の柱に育つか、まだ答えは分からない。

 昔から熱心な考古学ファンで、休日には専門書を読んだり遺跡巡りを楽しむ。「古代史は未知のロマンにあふれている。だからこそ面白いんです」 (瀬戸勝之)

 アクトリー 産業廃棄物焼却炉の国内トップメーカーで1971(昭和46)年4月設立。2013年3月期の売上高予想は約90億円。社員数は約90人。石川県白山市の本社のほか東京支店、栃木県壬生町にR&Dセンターがある。東日本大震災の被災地にもがれき処理の焼却炉を納入した。

 みずこし・ひろはる 金沢工業大経営工学科卒業後、1971(昭和46)年に村田機工(現アクトリー)入社。常務、専務を経て93年から現職。金沢大非常勤講師、中国・大連科学工業大客員教授。北海道室蘭市出身。

 

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