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社長を語る

ラポージェ(氷見) 白石末子社長(67) ミシン、キルト 着物革命

「『和のキルト』を欧州や中東に輸出したい」と語る白石社長=富山県氷見市のラポージェ本社で

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 伝統と革新と−。ある着物業界の会報の新春号に、自身の特集が大きく掲載された。十三年前、独自に開発した専用ミシンによって着物の縫製を自動化し、「手縫いが当たり前」という風潮に一石を投じるなど、業界に新風を吹き込んできた半生をつづった。

 若者の着物離れが進み、最盛期の昭和六十年代に二兆円あった市場は三千億円台にまで縮小。人材不足が深刻化するなか「ようやく業界に認められる存在になった。ひと昔前は考えられなかったこと」と感慨深げに語る。

 和裁に携わったのは二十九歳の時。肺がんの手術で右肺の三分の二を切除し、右手にまひが残りリハビリのために始めた。職業訓練校に通い、七年後に「白石和裁店」を開業。仕事は順調で、従業員は十人余りに増えた。

 そして高校の新卒者三人を採用したのを機に、一人で全工程をこなしていた昔ながらの縫製の見直しに着手。熟練度に応じた分業制を先駆けて取り入れ、効率化を図った。

 やがて海外シフトの波が押し寄せる。縫製は賃金の安いベトナムへと流出。「空洞化を食い止めるにはミシンを使うしかない」。大手企業の技術者を引き抜いて研究を重ね、二〇〇〇年に一人用和裁ミシン「和裁工房・卑弥呼」を発売した。

 「和装ハイテク縫製」として話題を集め、和裁学校にも一部採用されたが、思うように普及は進まなかった。不況も追い打ちをかけ「一時は廃業も頭をよぎった」。

 窮地を救ったのは五年前に発売した、カーテンにひだを付けるプリーツ加工機。東京で開かれたミシン展示会で聞いた「コンパクトで安価なものを」という要望をヒントに開発し、約三百台を売るヒットになった。

 着物の端切れや帯を利用したオリジナルの「和のキルト」も脚光を浴びつつある。金らんどんすの豪華な柄など斬新さが高く評価され、演歌歌手・川中美幸さんの公演にも採用、今、名古屋市の御園座の舞台を彩る。欧州や中東への輸出も近く始める予定だ。

 好きな言葉は「鵬程(ほうてい)万里」。中国の故事に登場する想像上の巨大な鳥で、なかなか飛ぶことができないが、一度羽ばたくと万里を行くとされる。「一歩一歩、手探りながらも新たなことに挑戦し、道を切り開いてきた」。そんな自分の生き方に照らし合わせている。 (瀬戸勝之)

 しらいし・まつこ 森和裁職業訓練校卒。着物の仕立て作業を効率化する自動縫製システムを開発。「和のキルト」作家としても活躍し、2005年に世界キルトカーニバル名古屋キルトタペストリー部門奨励賞などを受賞した。富山県氷見市出身。67歳。

 ラポージェ 本社・富山県氷見市。1979(昭和54)年に「白石和裁店」として創業。85年に有限会社「白石きもの」設立、88年に「ラポージェ」に社名変更した。資本金5000万円。従業員23人。売上高約3億円。

 

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