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社長を語る

東酒造(石川県小松市) 東祐輔社長(41) おいしさを誠実に追求

「酒は手間をかけた分だけおいしくなる」と話す東社長=石川県小松市で

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 「酒がうちのセールスマン。誠実に、おいしい日本酒を造るだけ」。社長になって以来、この思いで品質向上を目指している。「酒は菌が造ってくれる。菌が最高の状態で働ける環境を整えるのが私たちの役目。手間を加えた分だけおいしくなる」と力を込める。

 低温、無菌状態で作業できる一〜三月が仕込みのシーズン。能登から杜氏(とうじ)を招き、四人が二十四時間体制で酒造りにあたる。蔵に並んだ約五トンのタンクはわが子のよう。「今日はあの子が寒そうだとか、いつも状態に気を配っている」

 大学の醸造学科を卒業して帰郷した当時、日本酒の国内消費量は減り続けていた。「おいしくなければ売れない」と、原料や造り方を見直し、十年かけて改善した。原料の米は小松産にこだわり、食べる米より粒が大きい酒造好適米を仕入れている。酒造りの道具や方法は大学時代の同級生と情報交換して研究した。同じ業種でも県外の仲間が多く「地域や規模、売り方の戦略が違って競合せず、頼りになる」とネットワークを生かす。

 インターネットで全国販売する酒蔵もあるが、地元向けが中心。販売量は県内八割、県外一割、海外一割が理想。現状は海外がまだ約3%。「日本酒のおいしさを知ってもらい、ファンを増やしたい」と意欲を燃やす。

 二〇一一年に小松商工会議所が香港で開いた商談会をきっかけに、現地の飲食店から高級酒の大吟醸を中心に毎月受注している。日中関係が冷え込むと一、二カ月注文が来ない時期もあった。「外交問題やブームの移り変わりなど、明日売れなくなるかもしれないという不安は常にある。だからこそ、おいしさと確かな品質を追い求めている」と言い切る。

 毎日の晩酌からお祝いまで、生活に密着した酒を造りたいと願う。「酒はコミュニケーションの脇役。うまい食と居心地の良い場所、気心の知れた仲間がそろって初めておいしく味わえる。楽しい空間づくりをお手伝いしたい」 (白井春菜)

 東酒造 1860(万延元)年創業。東栄松商店として親しまれ、2011年に合資会社から株式会社に変更し、現在の社名に。1949(昭和24)年に建て替えた酒蔵と住居部分が2009年、国の登録有形文化財に指定された。敷地内に茶室や座敷があり、茶会や酒宴も開く。年間醸造量は約50トン。12年9月期売上高は約5000万円。看板商品「神泉(しんせん)」の大吟醸は日本政府専用機の機内酒に採用されている。

 ひがし・ゆうすけ 1971年(昭和46)年小松市生まれ。東京農業大卒業後、家業を継ぐため帰郷。専務などをへて2011年10月から6代目社長。社業のかたわら、東日本大震災の被災地へ日本酒や毛布などの支援物資を届ける活動もしている。

 

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