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社長を語る

みつばちの詩工房(金沢市) 矢野浩社長(45) 誠実、高品質で苦境克服

「養蜂は会社の原点」と語る矢野社長=金沢市内で

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 せみ時雨が降り注ぐ金沢市湯涌地区の山あい。濃い緑の木々に囲まれた小さな公園ほどの土地に、二百個の木箱が整然と並ぶ。百万匹のミツバチを飼育する巣箱だ。「養蜂は会社の原点。効率が悪く、中国からの輸入蜂蜜が増えたが絶対にやめない」。額の汗をぬぐいながら白い歯を見せた。

 金沢市のサラリーマンの家庭に生まれた。小中高校と柔道を続け、高校卒業後は「体力には自信があったし、人の役に立つ仕事がしたい」と同市消防本部に就職した。縁あって先代の長女と結婚。消防士を十年間務めたが、結婚の翌年に「蜂蜜でお客さまの健康と美容に貢献できる。人の役に立つという意味では共通した仕事」と転職を決意した。

 老舗の蜂蜜製品製造販売会社の三代目社長に就いて九年目。二〇〇八年に発覚した中国製ギョーザ中毒事件は忘れることができない。中国製の冷凍ギョーザを食べた千葉県などの家族が中毒になり、商品から農薬のメタミドホスが検出された。

 環境の変化などで国内での採蜜が難しくなる中、先代が二十年以上前から中国・陝西省、山東省、河南省の産地をいち早く開拓。現地での技術指導や衛生管理を徹底し「中国産蜂蜜は国産に劣らない品質に育った」と、売り始めて間もないころに降ってわいた衝撃的な出来事だった。

 中国製食品へのバッシングは当然のように蜂蜜にも向けられた。「蜂蜜の産地は大気汚染や農薬とは無縁の地。現地に毎年足を運んでしっかりと検査もしており安全。堂々と販売しよう」。〇八年の売上高は三〜四割落ち込んだが、社員一同が歯を食いしばり「品質の良さと安全性を訴えた」結果、翌年には売上高は回復していた。

 一〇年に中国の養蜂が前年比八割減と激減した際は、長年培った信頼関係から予定通りの販売量を確保できた。「正しいことを真面目にやっていれば、会社は生き残ることができる」。この思いを一層強くした。

 蜂蜜とローヤルゼリーの製造販売が主力だが、「蜂蜜を身近に感じてもらいたい」とユズの果汁を混ぜたジュース「柚子(ゆず)みつ」、蜂蜜を使ったケーキやどら焼きなどの商品化も積極的に展開。「心のこもったサービスと新商品開発でリピーターを増やしたい」。次は地元の野菜や果物と蜂蜜によるジャムの商品化を見据える。 (基村祐一)

 みつばちの詩(うた)工房 1930(昭和5)年に養蜂業として創業した。81年に有限会社「山岸養蜂場」を設立、96年に株式会社「ヤマギシ養蜂場」に改組、2000年に現社名に変更した。資本金2000万円。従業員はパートを含め48人。蜂蜜、ローヤルゼリー、蜂蜜の加工食品などの製造販売を手掛ける。石川県内に直営3店がある。

 やの・ひろし 1966(昭和41)年、金沢市生まれ。石川県立工業高校を卒業後、同市消防本部に就職。95年3月に退職し、同年4月にみつばちの詩工房に入社した。営業課長、常務などを務め2004年から現職。

 

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