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社長を語る

金谷酒造店(石川県白山市) 金谷芳久社長(63) 地元酒米で勢い醸す

「しぼむ業界だからこそ工夫が必要」と語る金谷社長=石川県白山市で

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 石川県だけで作付けされているオリジナル酒米「石川門」のブランド化に取り組んできた酒造業界の立役者。四年目を迎えたことし四月初旬、自社銘柄「高砂」をはじめ、昨秋の収穫米で仕込んだ県内十八社の生酒が、金沢市の百貨店に並んだ。社長自ら売り場に立って呼び掛けた。

 「石川の米農家と酒蔵が意見をぶつけ合って開発したのが石川門。石川の人にぜひ味わってほしい」

 石川門との出合いは十数年前にさかのぼる。県酒造組合連合会と県農業総合研究センターが、新種「石川酒52号」として共同で開発を進めてきた。いよいよ商品化が見えてきた五年ほど前、ピンチが訪れる。実際に石川門を使って酒を造ろうと手を挙げた業者が、中小の酒蔵ばかりわずか六社だった。

 実は、県が開発した新種の酒米が、十年ほど前にも頓挫したことがあった。味が悪いからと、どの会社も採用しなかった。同じことの繰り返しかと不安がよぎった。「二度と県産酒米を生み出すチャンスがなくなるかもしれない」。とにかく六社で「石川門の会」を立ち上げ、小さくても一歩を踏み出した。

 「窒素の使用量をもっと減らせませんか? 日本酒で使う米にはいらないものなんだ」

 農家と食事をしながらの会合で思いをぶつけたことがある。米の収穫量を上げるため、農家は肥料になる窒素を田んぼにまきたがる。でも、窒素成分の多い酒米で造った酒は香りが悪く、味が汚くなる。

 実情を正直に告げて「たくさん取れなければ、その分は高く買うようにするから」と説得した。石川門の一番の特長は、米をつくる人と使う人のコミュニケーションだと思う。「以前は農協が売っている酒米を買うだけだったけど、石川門は違う」と胸を張る。

 蔵のある石川県白山市に多い米作農家とは年三回ほどの意見交換を続け、ときどき田んぼにも足を運ぶ。石川門を扱う酒蔵も次第に増えてきた。「吟醸酒や純米酒がすっきり仕上がる」と、固定ファンも付いた。

 大学では工学部で管理工学を専門に学んだ。「業界がいかにしぼんでいるか、外から見ても分かる」。家業を継ぎたくないから、一度は化学メーカーに就職した。「縮まる業界で花開くのも面白いかもしれない」と考え直し、故郷に戻った。

 二〇〇三年には酒蔵を再生したフレンチ料亭「高砂茶寮」をオープン。北陸の地酒業界に新風を吹き込んだ。そして〇九年三月、石川門の酒がデビューする。「何とかぽしゃらせないよう、やせ我慢でも続けたから今がある」。地元の酒米をもっと伸ばしていく。 (大島康介)

 金谷酒造店 江戸時代に菜種油の製造からスタートし、酒造の創業は1869(明治2)年。日本酒は「高砂」「兼六」「金乃沢」などを製造販売している。ブランド化に取り組む「白山菊酒」の立ち上げにも参加。年商は7000万円。

 

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