トップ > 北陸中日新聞から > 北陸けいざい > 社長を語る > 記事

ここから本文

社長を語る

新日本テックス(石川県中能登町) 木村武司社長(70) 日本の繊維 世界に貢献

「環境、エネルギー分野で貢献していきたい」と語る木村社長=石川県中能登町の新日本テックスで

写真

 「どうや、こんな便利な生地、どこにもつくれんやろう」。野太くしゃがれた声で力を込める。アンモニア溶液を一滴入れた小瓶に二十センチ四方の黒い生地シートを入れて振ると、わずか三分で、鼻を突くような悪臭はすっかり消えた。

 和紙を原料とした天然素材を真空で焼成したオリジナルの炭化繊維。焼成温度を調整することにより、消臭、電磁波抑制といったさまざまな機能が生まれる。

 開発したのは九年前。大手紳士服や婦人服メーカーの目に留まり衣料分野では既に採用されているが、潜在需要がより大きいと見込んでいるのは電池としての用途だ。

 炭素とアルミニウムとマグネシウムの特殊合金、食塩水による化学反応で電気が起きる理論を応用しようというもので、製品名は「わし炭(ずみ)水電池」。昨年、東日本大震災の被災地にも非常用電源として五百個を贈った。

 海外企業から問い合わせはあるが焦りはない。「価値を正当に評価してくれる企業が現れるまで待てばいい。せっかくいい技術でも売り急ぐと、安売りされるだけや」と、どっしり構える。

 地元の中能登町は大正から昭和初期にかけて、高級麻織物「能登上布」の一大生産地だった。当時、鉄工所を経営していた祖父は能登上布を効率的に生産できる織機を考案して繊維産業に進出、産地の活況を支えた。

 こうした家系もあって新分野開拓の意欲は昔から高かった。昭和四十年代には業界に先駆けて非衣料分野に着目、自動車用カバーの研究開発に乗り出した。環境に優しい和紙糸を使った機能性繊維も十二年前に発売し、ヒット商品に育てた。

 繊維産業は、貿易自由化や円高の影響を真っ先に受けて空洞化に苦しんだ業界だからこそ、「生き残った企業の競争力は相当高い」との自負がある。「縦糸、横糸の組み合わせによるアイデアは無限。技術で一歩先を行く日本の繊維企業は環境、エネルギー分野で世界に貢献していけるはずだ」と強調した。

  (瀬戸勝之)

 新日本テックス 繊維メーカー・木村織物の商事部門として1971年に設立。新製品の企画開発も手掛け、和紙を原料とした「カミール」、炭化繊維「わし炭」、人工透析用フィルターなど特殊生地を中心に扱う。資本金5000万円。従業員5人。

 

この記事を印刷する

PR情報

地域のニュース
愛知
岐阜
三重
静岡
長野
福井
滋賀
石川
富山

Search | 検索