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社長を語る

リードケミカル(富山市) 森政雄社長(81) 信念貫き壁突破

新しい薬への情熱が衰えない森社長(左)。研究担当者には盛んに声を掛ける=富山市のリードケミカル本社で

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 「皮膚から薬の成分が入るはずがない」。信じない厚生省(現厚生労働省)の担当者に「おれが証明してみせる」と思いをぶつけたのは、三十年以上も前になる。皮膚科と眼科以外、薬といえば飲み薬と注射薬しか考えられていなかった時代。一九八八年、日本で初めてになる痛み止めの貼り薬「アドフィード」を世に出した。

 「間違いなく良いものだと信念があったから開発を貫けた」。注射を刺す痛みを除き、飲み薬で起こる胃腸の副作用もない経皮吸収薬への思いは今も熱い。三年前には第一三共(東京)の鎮痛薬ロキソニンの貼り薬も商品化した。売れすぎで生産の追い付かない状況が続いている。

 十四歳の時に敗戦。戦後の混乱の中、「ひとつの道を貫く人生を送るんだ」と誓うようになる。富山大薬学部の一期生として生薬を研究。商社や製薬会社を渡りながら、経営や生産管理の知識も深めていった。

 貼り薬を開発するため、リードケミカルを設立したのは三十九歳。今でいうベンチャー企業だった。はだしで田んぼに入る農家の人たちが農薬中毒になることに、ヒントを得た。「皮膚から薬の成分が入れば、新しい薬ができる」。貼り薬になる化合物を探った。鎮痛薬として普及していたサリチル酸メチルが適していた。自分の体に貼って効果を確かめたり、ひざを切って成分が入っているかを確かめたりして、実験データを積み重ねた。

 厚生省が壁になったのは、そんな時だった。実験で証拠を積み重ね、臨床試験までたどり着いた。並行して、薬学研究者たちのお墨付きをもらうため、日本で初めての「経皮吸収型製剤シンポジウム」の開催にも裏方の代表として携わり、発表も行った。こうしてやっと、アドフィードの認可にこぎ着けた。

 今でも、次々と薬のアイデアが出てくる。どんな化合物が皮膚を通るか、化学式を見るだけで判断できる。三十人ほどの研究チームに「五億、十億円どんどん使っていい。新しいものに挑戦しろ」とハッパを掛ける。「十年、二十年後をにらんだ投資が大事なんだ」。ずっと先まで視線を向けている。

  (大島康介)

 リードケミカル 生産拠点は富山市の本社工場、富山県上市町の久金工場で、昨年は新たに久金東工場が完成した。主力製品は貼り薬のアドフィード、ロキソニンテープ。売上高は2012年5月期に250億円の見込み。森社長は04年から富山県薬業連合会の会長を務めている。

 

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