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北陸文化

音の模様 千変万化 100KEYBOARDS ASUNAさん 北陸で初演奏

けん盤にアイスキャンデーの棒のような木を挟んで音を重ねていくASUNAさん

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富山県美術館

 金沢市を拠点に活動する音楽家、アーティストのASUNA(アスナ)さんの音楽パフォーマンス「100KEYBOARDS」が国内外で注目を集めている。小型のキーボードを同心円状に並べ一定の持続音を鳴らすことで、複雑かつ繊細な「音の織物」が立ち上がる。欧州、オーストラリアツアー、その後のカナダ・バンクーバーでの国際パフォーミングアーツ・フェスティバルへの出演を終えた直後の三日、富山市の富山県美術館で北陸では初めてという演奏を聴いた。 (松岡等)

 ASUNAさんは一九八〇年、石川県白山市生まれ。高校卒業後、東京造形大へ進み、十代のころから電子楽器を使ったアンビエント、ドローン、音響派といった音楽シーンで活躍。海外でも高い評価を受けてきた。自身を含む国内外のインディーズレーベルから多数のCDをリリース。特に海外で人気が高く、ライブなどで訪れたのは二十カ国以上に及ぶ。二〇〇八年から地元に戻って活動している。

100台のキーボードを鳴らし、複雑な音の共鳴を生み出すASUNAさんのパフォーマンス=いずれも富山市の富山県美術館で

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 会場の美術館ホワイエにある吹き抜けの空間。床に同心円状に並べた百台以上のキーボードは、どれも幼児のおもちゃ用だったり、安価な製品だったりしてどこかユーモラス。ASUNAさんはその一台一台に木のアイスキャンデーの棒を同じ音程、和音で鳴るように差し込んでいく。音量が増すと、ある時から元の音と違ううなりが聞こえ始め、それが複雑に響き合って波のように繰り返し、増幅しながら高まっていく。

 ピークに達すると音のループやビートは複雑さを増し、聞く場所や空間の位置によっても変化。時に人の声のように聞こえたり、別の楽器の音のように聞こえたり。その後、今度は棒を取り外していくごとに、音のうねりが繊細に減退していくのが分かる。集中していると一時間半もあっという間だった。

音楽と美術「境を意識せず」

 ASUNAさんが二〇一三年から始めた100KEYBOARDSは、もともと演奏でよく使っていた、玩具として作られた楽器を同時に鳴らした時の音のうなりから生まれたパフォーマンス。キーボードは安価であるからこそ、音程の調整に微妙なずれがあったり、電池駆動のために音の持続が不安定だったりして、同じ音程や和音が複雑に共鳴する。

 同心円状に配置するのは、音波をぶつけ合うためで、それによって、同じ周波の音波でも方向が異なって重なり合うと生まれる「干渉音(モアレ)」が際立つ。モアレの原義は「織物の模様」。パフォーマンスは、空間で編まれる「音の織物」を感じる体験とも言える。

 昨年、横浜市でASUNAさんの演奏を聴いたフリーのキュレーター石川吉典さんが今回のイベントを企画した。「現代美術では、例えば鉄などの素材を本来と別のやり方で見せるということがある。ASUNAさんのパフォーマンスも音を素材にした現代美術という位置付けができるのではないか」と話す。

 前衛的な音楽シーンで活躍するASUNAさんだが、「もともと美術大にいたこともあり、音楽と美術の境を意識してこなかった。海外ではよく『社会の中でどういう役割があるのか』と聞かれる。人と違った視点、見方で音を提示することと答えたりしている」という。

     ◇

 100KEYBOARDSは今年一月のバンクーバーでのフェスティバルでも評判を呼び、現地では音楽雑誌の表紙を飾った。美術系のイベント、ギャラリーから誘いが相次いでいて、五月のシンガポールでの五公演など二〇二〇年まで海外でのスケジュールが埋まりつつあるという。

 十五年前にスペインのインディーズレーベルから発売され「幻の名盤」といわれていた初期のCD「Organ Leaf」が昨年、国内レーベルから再発売されるなど、あらためて電子音楽の分野での評価も高まっているASUNAさん。共演した海外の実験音楽、電子音楽のミュージシャンを国内での演奏をサポートするほか、今年はドイツに滞在しての作曲を依頼されるなど、活動の幅はますます広がっている。

 

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